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クラフトビールでフランス料理 米国流のマリアージュ

最初は甘味でソースの特徴を強め、次にフルーティーな香りで貝の生臭さを隠し、最後は酸味を甘いデザートに合わせて甘酸っぱさをつくり出そう――。

酒と料理の合わせ方の話だが、ワインではない。ビールである。それも各国の大手ビールメーカーの主力商品となっているような比較的薄くて軽いものではなく、現在、世界的に大きなうねりを起こしている「クラフトビール」である。

中でも世界的に注目されているのが米国のクラフトビール産業だ。米国のビールといえば「黄色で味わいが薄い」と思い浮かべる人がいるかもしれない。しかし米国のビール市場こそ、クラフトビールの成長が著しく、存在感を年々高めているのだ。

それに貢献しているのが、ビールの業界団体であるブルワーズアソシエーション(BA)だ。米国のクラフトブルワーと彼らがつくるビール、そして醸造家たちのコミュニティーの振興と保護を目的に活動している。その中には世界最大級の規模を誇るビール審査会であるワールドビアカップの運営もあり、私は2016年から審査員としてボランテイアで参加している。

さらにBAは、米国のクラフトビールの輸出の支援もしている。その一環として11月、日本で米国のクラフトビールの魅力を広めるための食事会「アメリカンクラフトビールと料理の夕べ」が開かれ、筆者も会場となった都内のフランス料理店に足を運び、定評があって日本にも輸出され始めている米国のクラフトビールを味わってきた。

コース料理は全5品で、各料理に一つないし二つの銘柄のビールを合わせ、起こる変化の違いが楽しめるものだった。

「ホタテのフリット 根セロリ、洋ナシ、ディル、早生ミカン」に合わせるビールは「コルシュ」

まず最初は、前菜の「ホタテのフリット 根セロリ、洋ナシ、ディル、早生(わせ)ミカン」。これに合わせたのが「コルシュ(スリーウィーバーズブルーイングカンパニー)」だ(カッコ内は醸造所名)。

このビールには洋ナシなどを思わせるフルーツの香りが穏やかにあり、甘味より苦味がやや強い。すっと消えるボディーはシャンパンを思わせる。この料理を合わせると、ホップの香りに似たディルがホップの香りを強め、根セロリのほろ苦さはホップの苦味も強める。

洋ナシもミカンもビールのフルーティーな香りを強める。そしてホタテを一緒にかむと、ビールの苦味で貝の濃厚なうま味がさらに強まり、フルーティーな香りは魚介の生臭さを隠す。

「タマネギのスープ ベーコン、ビーツ、ホウレンソウ」には、「ロングルートペール」(左)と「エボリューションIPA」(右)を合わせる

次はスープだ。「タマネギのスープ ベーコン、ビーツ、ホウレンソウ」に「ロングルートペール(ホップワークスアーバンブルワリー)」と「エボリューションIPA(エボリューションクラフトブルーイングカンパニー)」を合わせた。

どちらのビールもホップの香りとはっきりした苦味を特徴としている。「ロングルートペール」はグレープフルーツなどかんきつ類の香り、「エボリューションIPA」は松やにを思わせる。

スープはクリーム仕立てで甘くまろやか。そこにこれら二つのビールを順番に合わせると、いずれの場合もビールの苦味がスープの甘味と和らげ合い、さらに苦味はうま味を引き出してきた。

果汁で味付けされたビーツはかむとその味わいが鼻に抜け、両方のビールのフルーティーな香りを強める。そして特に「エボリューションIPA」は苦味に渋味が伴っていて、これがベーコンのうま味を強め、さらにホウレンソウと合わせるとほろ苦さとなり、まるで山菜を味わっているかのようだった。

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