コーヒーチェーン「冬の陣」 特別な1杯や本に合わせ
わが国のコーヒーチェーン2強は全国に約1300店のスターバックスと約1100店のドトールコーヒーショップだ。日本生産性本部サービス産業生産性協議会(東京・渋谷)が毎年6月に発表する顧客満足度調査では、3年連続ドトールが首位だが、スタバは発表圏外に後退。人気ゆえの混雑が満足度を下げたと考えられている。スタバの巻き返し策をはじめ、冬の陣に臨む各社の動きをのぞいた。
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新業態の開発に積極的
スタバが巻き返し策のひとつとして、東京・中目黒に建設を進めるのが、18年12月オープン予定のロースター併設店である。巨大ロースターで焙煎(ばいせん)された豆は天井に張り巡らされた管を通り1杯のコーヒーへ。コーヒーの世界をショーのように見せるこの「スターバックスリザーブ ロースタリー」は、世界5店舗目だ。
さらに同社は、パーソナライズ化された体験の提供にも力を入れる。17年に東京の六本木と銀座にオープンした「スターバックス リザーブ バー」では、社内審査を通過した証しであるブラックエプロンのトップバリスタが、コーヒー豆や焙煎方法を提案。客の好みのコーヒーを1杯ごとに抽出する。
ドトールが手がけたのは東京・池袋の「本と珈琲 梟書茶房(ふくろしょさぼう)」だ。書棚に並ぶ約2000冊の本は、タイトルを伏せ紹介文だけで販売。その本を図書館のような空間の店内で、コーヒーと一緒に楽しむ新しいブックカフェだ。選書を担当したのは、セレクト書店「かもめブックス」(東京・新宿)の柳下恭平氏。柳下氏が選んだ本と、内容に合わせてブレンドしたコーヒーのセットメニューもある。
駐車場を備えてロードサイドを中心に展開予定の「ドトール珈琲農園」も10月からスタート。大きなソファを配置し、高品質のコーヒーとフードで、既存業態よりも高い客単価を狙う。ドトールの担当者は「以前は、日本中同じ味と価格であることがチェーンの強みだったが、今後は軸はありつつも、店舗によってアレンジしたサービスを提供していきたい」と話す。
紅茶ニーズも掘り起こす
一方タリーズは、03年のロイヤルミルクティー発売以来、紅茶好きからも支持を集めている。10月にはさらなるニーズを掘り起こすべく、横浜市に「タリーズコーヒー &TEA」をオープン。通常メニューに加え、限定ティーメニュー12種とそれに合わせたサンドイッチなどを提案している。2強をはじめ各社の試みに注目が集まる。
(発売中の日経トレンディ1月号より再構成 文・御船晶子)
[日本経済新聞夕刊2017年12月9日付]
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