マスコット選びは任せて! 小学生の1票が五輪に熱気歴代の人気明暗、ロンドン大会では「かわいくない」と酷評も

2020年東京五輪・パラリンピックのマスコット最終候補3作品と写真に納まる児童(12月7日午前、東京都渋谷区)
2020年東京五輪・パラリンピックのマスコット最終候補3作品と写真に納まる児童(12月7日午前、東京都渋谷区)

東京五輪・パラリンピックの「顔」となるマスコットの候補が公表された。厳しい基準をクリアした3案から、小学生が投票で選ぶ方法は五輪史上初。「大会への関心を高めて」「アピールに工夫を」。専門家からも期待と注文の声があがった。子供たちの関心も高まっている。

公式マスコットを選定する小学生投票の告知ポスター=共同

3作品はいずれも五輪とパラリンピック向け1体ずつのセットで、大会エンブレムにも使われる市松模様や桜をデザインした「ア案」、福を呼ぶ招き猫やキツネ、神社のこま犬をモデルにした「イ案」、勾玉(まがたま)を組み合わせたキツネとタヌキが水引を背負う「ウ案」。

3案が公表された12月7日、小学生が通うデザイン教室「りねあ」(東京・文京)で「有権者」に意見を聞いた。

小学3年の女児(9)は市松模様や桜をデザインしたア案を推す。「白と紺色、白とピンクの2色だけを使うシンプルさがいい」。この案は人気が高いようで、小学4年の女児(10)も1票。ただ「手に何か小道具を持たせた方がいいのでは」とのアドバイスも。

小学4年の男児(9)は招き猫やキツネとこま犬をモデルにしたイ案派。「和風でいい。しっぽのグラデーションでめらめらと燃えているのが表現されている」。勾玉(まがたま)を組み合わせたキツネとタヌキのウ案を挙げた小学1年の男児(6)は「手足が短くて愛嬌(あいきょう)がある」と高評価だった。

3案は公募で集まった約2千件から選ばれた。選考の過程では、組織委や国際オリンピック委員会(IOC)の厳しいハードルをクリアしてきた。例えば「大会エンブレムは衣服や持ち物でなく、体の正面に入れなければならない」「東京や日本らしさを感じることができる」などだ。漫画雑誌の編集者やおもちゃメーカー担当者らの意見も聞いた。

絞り込んだ3案を全国2万校の小学校の投票で選ぶ人気投票方式は、組織委のアイデアだ。IOCは当初、大規模な計画に「本当にやれるのか」と慎重だったという。

「(投票は)関心をひき付けるきっかけになる。IOCも実験的な手法として認めたのではないか」。五輪の運営に詳しい早稲田大の原田宗彦教授は評価する。白紙撤回された旧エンブレムの選考過程が「不透明」と批判されたこともあった。

2018年2月末に採用する案が公表され、名前を決めたうえで7~8月に正式にデビュー。すぐに関連グッズなどが商品化され、忙しい毎日を送ることになる。20年の本番までに最大限活躍してもらうにはどうすればいいのか。

1998年長野冬季大会のマスコット「スノーレッツ」のぬいぐるみ
2012年ロンドン五輪マスコットの「ウェンロック」(右)とパラリンピック・マスコットの「マンデビル」のぬいぐるみ

「五輪に関心がない人を引きつけるのがマスコットの役割」と話すのは「ひこにゃん」などゆるキャラブームの仕掛け人でもあるPR会社社長の殿村美樹さん。

そのためにはまず、子供に興味を持ってもらうことが大切と考える。「子供がグッズなどを購入し、そこから親世代へと、世代を超えて大会が盛り上がるはず」

デザイナーのハヤカワ五味さんも「ポケモンやキティちゃんといった海外でも知られる有名キャラクターとのコラボレーションなど、アピールを工夫する必要がある」とアドバイスする。

国際オリンピック委員会(IOC)によると、五輪の公式マスコットが初めて登場したのは1972年ミュンヘン大会。ダックスフントをモチーフにしたキャラクターが評判となった。

グッズの販売などで積極的に活用されたのは80年のモスクワ冬季大会の「ミーシャ」。著名な絵本作家が子グマをモチーフにデザインし、日本でも「こぐまのミーシャ」の題名でアニメ化された。

98年長野冬季大会のマスコット「スノーレッツ」は4羽のフクロウ。名前は一般公募で募り、それぞれに「スッキー、ノッキー、レッキー、ツッキー」という名前がつけられた。

不人気だったのは12年ロンドン五輪で採用された「ウェンロック」。頭部はロンドンを代表するタクシーのランプをイメージし、輪郭はメイン競技場をモチーフとしたが、英メディアからは「かわいらしくない」と酷評された。当時の報道によると、グッズは売れ残り、マスコットの販売メーカーが業績を下方修正した。

東京五輪・パラリンピックのマスコット選考
2017年12月11日から18年2月22日までの間、全国の小学校などの学級単位で行われる投票結果をインターネットで受け付け、最多得票のデザインを採用。2月28日に発表する。全国約2万校28万学級の児童らが投票する。国内のインターナショナルスクールや海外の日本人学校、一部のフリースクールなども含まれる。視覚障害の児童が在籍する特別支援学校の小学部には、触って比べられるような立体模型を送る。

[日本経済新聞朝刊2017年12月8日付を再構成]