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次世代リーダーの転職学

コンサル活用より勘と度胸? 伸びる会社に3つの視点 リクルートワークス研究所副所長 中尾隆一郎

2017/12/15

1人でアート、サイエンス、クラフトを保有している場合は問題になりませんが、3つを複数の人が分担することも少なくありません。そのようなケースであれば、例えば3人が議論しながら、アウフヘーベンをすることになります。その際にどのようなフォーメーションにするのがよいのでしょうか。

■アートが先頭に立ち、サイエンスとクラフトが支援

3人フラット(並列なポジション)もあり得るのですが、私の経験では、アートが先頭に立ち、サイエンスとクラフトが支援するという体制がよいと思います。理由は3つあります。

アート、サイエンス、クラフトとポジショニング(図=中尾隆一郎)

1つは、アートとサイエンス、クラフトが議論すると、アートが負けることが多いからです。サイエンスは論理やデータを裏付けにして自分の主張を説明することができます。クラフトは、実際の経験から論理を組み立てられます。それぞれ盤石な根拠があります。しかし、アートは、極端に表現すると「私がこう思っているから」「なんとなくそう感じる」というように、根拠が脆弱であることが少なくありません。ですから、アートにリーダーシップを持たせることで、残りの2つに対してバランスをとった力関係にしやすくなるのです。

2つめ。アートは、従業員や顧客の心を動かします。「感動」や「共感」が、関係者の強いエネルギーとなって、ビジネスに素晴らしい結果をもたらす可能性が高まります。「買いたいもの」が少ない現代では、論理や機能で人は感動しません。人は物語に感動します。どのような思いでこのサービス、商品を作っているのか? それを、熱量をもって伝えることができるのがアートなのです。

3つめ。これが重要なのですが、アートの一部ともいえる「美意識」です。コンサルタントの山口周氏が著書「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか? 経営における『アート』と『サイエンス』」(光文社新書、2017年)で、経営における「美意識」という表現を使っています。言葉を換えれば、倫理観やモラルといってもよいかもしれません。過去の傾向から、この美意識を維持できる企業こそが、成長し続けられる企業になると考えています。

法律を守るといったコンプライアンスの順守は当然ですが、変化の大きな現代では、法律がその変化に追い付いていないこともあります。美意識というのは「法に抵触しなければ、何をやってもよいのか?」という話の際に姿を見せます。

例えば、グローバルにビジネスをしている企業には、取引先で不法労働や児童労働、強制労働などの問題があった際にも、その企業に対して改善や予防を支援することが求められます。それも従来であれば、直接の取引先だけをチェックすればよかったのですが、今では、サプライチェーンの末端である4次請け、5次請けの工場まで、すべてチェックすることを求められます。法律に抵触して問題がなかったとしても、社会への説明責任としてそれを求められるのです。でも、これはアートで考えると、当たり前に「やるべきこと」です。

みなさんが今働いている職場や転職候補の企業では、アート、サイエンス、クラフトの3つの観点でマネジメントが行われていますか? また、このどれか1つに偏るのではなく、これらをアウフヘーベン(高い次元で同時に実現)していますか? ぜひチェックしてみてください。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は12月22日の予定です。この連載は3人が交代で執筆します。

中尾隆一郎
リクルートワークス研究所副所長・主幹研究員。リクルートで営業部門、企画部門などの責任者を歴任、リクルートテクノロジーズ社長などを経て現職。著書に「転職できる営業マンには理由がある」(東洋経済新報社)、「リクルート流仕事ができる人の原理原則」(全日出版)など。

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