ヒット番付、坂道とアベマが横綱 「反主流派」に勢い

日経エンタテインメント!

1年間のエンタテインメント界を振り返り、日経エンタテインメント!が毎年発表している「ヒット番付」。2017年は、国民的アイドルに成長した乃木坂46、ロックフェスへの出演などでファン層を拡大した欅坂46の「坂道シリーズ」と、『72時間ホンネテレビ』などが話題を呼んだ「AbemaTV(アベマティーヴィー)」が東西の横綱に選ばれた。既存概念を壊す「反主流派」のヒットが目をひいた1年だった。

日経エンタテインメント!が選んだ「2017年のヒット番付」

日経エンタテインメント!が選んだ2017年のヒット番付は上記の通り(詳細は2018年1月号特集として掲載)。視聴率や興行収入といった「セールス」、どれだけ新しい取り組みをしたかを示す「新規性」、メディアへの露出などの「社会影響度」などに基づき、テレビ、映画、音楽、本、ゲームなどオールジャンルのソフトと人を対象に、ヒットの度合いを評価したものだ。

映画『君の名は。』や『シン・ゴジラ』、社会現象となった『ポケモンGO』などメガヒットが相次いだ16年と比べると、17年のエンタテインメント業界は必ずしも大ヒットや新しさを感じるヒット作に恵まれなかった。

映画ではディズニーの『美女と野獣』が興行収入100億円を超えたものの、他の年間興収上位のヒット作は『怪盗グルーのミニオン大脱走』や『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』などシリーズ物が中心。邦画はアニメの『名探偵コナン』や『ドラえもん』シリーズはヒットしたものの、実写作品は年間ランキングのトップ10からもれた。

ドラマでは年間視聴率ランキングの上位を『ひよっこ』などNHKの朝の連続テレビ小説と、『ドクターX』『相棒』『コード・ブルー』といったやはりシリーズ作品が占める結果となっている。朝ドラとシリーズ作が強いのは17年に限った傾向ではないが、16年の『逃げるは恥だが役に立つ』に匹敵する、最終回に20%を超えるようなフレッシュな話題作も生まれなかった。

音楽ではAKB48、乃木坂46、嵐など人気アイドルグループがCDセールスランキングの上位を占める状況に動きはなかった。

既存概念を壊す「反主流派」ヒットが台頭

ディズニーや朝ドラといった優良ブランド作品や、安定したシリーズ作、実績ある人気者など、「保守本流」が相変わらずの強さを示したといえる17年。しかし少し見方を変えると、新しい形のヒットも生まれ始めている。それは既成概念を壊す発想から生まれた、「反主流派」ヒットとも呼べる存在だ。

その象徴的な例が、インターネットテレビのAbemaTVといえるだろう。既存のテレビでは成立しないような新しいコンテンツを求めて、『亀田興毅に勝ったら1000万円』や元SMAP3人出演の『72時間ホンネテレビ』などを仕掛けて、世間の耳目を集めた。新興メディアのやんちゃぶりは小気味よく映る。

「保守本流」のテレビ界でも、意外なところから逆張りヒットが生まれた。それがテレビ朝日の「帯ドラマ劇場」だ。シニア向けの昼ドラマという新発想は、倉本聰原作の『やすらぎの郷』で形となり、『トットちゃん!』に引き継がれている。

出版界でいえば、『うんこ漢字ドリル』が典型的な反主流派ヒット。例文すべてに「うんこ」の文字が躍るドリルが、6学年分合計で277万部を発行するなど空前の出来事だ。子どもは下ネタが好きと分かっていても、小学館や学習研究社のような既存の大手出版社では決して企画が通らない商品だ。既成概念にとらわれない新興出版社の文響社だからこそ生まれたヒット作といえる。

一見、奇をてらったような反主流派ヒット作だが、一過性で淘汰される場合もあるものの、次の時代の主流派となるケースもある。例えばAbemaTVのようなインターネットテレビが、次代の主流メディアとなる可能性は決して低くはないだろう。

音楽・アイドル業界でいえば、アイドル王道のAKB48の「ライバル」として設定された清楚系の乃木坂46が急成長を遂げ、さらに妹分の欅坂46は既存のアイドルとは一線を画した歌詞や音楽性でロックフェスに出演しファン層を広げている。欅坂46の17年のヒット曲『不協和音』は、「既成概念を壊せ!」と歌い、同じ意見だけではおかしい、自分の正義を貫こうと宣言する。

立憲民主党の枝野幸男代表が総選挙を前にして、「ひとりカラオケに行きたいよ、『不協和音』を歌うんだ」と周囲にもらしたとの報道は興味深かった。仲間たちから「排除」され、自らの主張を訴えるため新党を設立して、巨大な与党と戦う自らの立場を『不協和音』の歌詞に投影したのだろう。政治とエンタテインメントが交錯した2017年的な出来事として記憶に留めてもいいだろう。

2017年の「ヒット番付」選考基準
テレビ番組、音楽、映画、本、ゲームソフトなど、オールジャンルのエンタテインメントソフトを対象に、セールス(視聴率、パッケージ売り上げ、イベント動員など)、新規性(エンタ界にとって、自身にとってどれだけ新しい取り組みをしたか)、社会影響度(メディアへの露出、ファンやユーザーへの影響はどれくらいあったか)などに基づき、ヒットの度合いを評価した。
なお、各種セールスなどのデータについてテレビ視聴率はビデオリサーチ(関東地区)、音楽CD・DVD&Blu-ray・書籍はオリコン、ゲームはファミ通調べのものを基に編集部で作成。映画の興収は編集部調べ。

[日経エンタテインメント! 2018年1月号の記事を再構成]

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