格好つけて仕事を受けてしまいます
脚本家、大石静さん
つい、格好つけてしまいます。本当はキツイけど、後輩の疲れた姿を見ると、「私がやるよ」と言ってしまいます。そしてどんどん仕事がたまり、疲れもたまります。自分に素直になって、自然体で仕事をするにはどうしたらよいでしょうか。(佐賀県・20代・女性)
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後輩に頼りにされ、たくさんの仕事を担ってしまうのは大変ですね。ご苦労さまです。
でも一方で、みんなに頼りにされ、自分の能力に対する自負もあり、心身共に疲れはするが、やりがいもある、という感覚もあるんじゃないですか? イヤでイヤで仕方ないだけではないでしょう?
仕事とは、どんな仕事であっても、楽しいことだけではありません。努力もしなければ成長しないし、多少の無理をしなければ、手応えも得られません。それが仕事というものだと、私は思います。
「格好をつける」というニュアンスには否定的な響きもありますが、人は格好をつけ背伸びすることによって、能力が伸びるものでもあると思うのです。無理のないところでやっていては、人はそれ以上にはなれません。
さらには、自分のことを第一に考えたいのに、格好をつけて人に譲ってみたり、人のために尽くしたりすることは、その人の徳を上げます。格好をつけるということは、悪いことばかりではないのです。
疲れるかもしれませんが、そうしてあなたが積んだ徳は、いつかきっと返って来ますよ。
最近「自然体」という言葉がやたらと流行っていますが、「自然体」とは、そもそもどんな「体」のことなんでしょうか?
努力もせずに楽に生きる。立ち向かいもせず長いものに巻かれて生きる。「自然体」とは、そのことを聞こえの良い表現にしただけじゃないかと、私は思うのですよね。多少の無理をしなければ、あるいは不自然なところに身を置かなければ、本当の自分も見えて来ませんから。
「自分に素直になって、自然体で仕事をするには」とありますが、あなたは本当にそういう自分をイメージできますか?
少し働き、十分休み、競争も精進することもない仕事なんて、ステキだと思えますか?
あなたも本当はそのことに気づいているのに、しゃかりきにやることを美徳としない最近の風潮に流されて、時々迷いが生じるのだと感じます。
まだ20代じゃないですか。ちょっとくらい疲れても、後輩に頼られながら、精いっぱいやっている方がステキだと、私は思います。頑張ってほしいです。
[NIKKEIプラス1 2017年12月9日付]
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