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絶景に浸る 雪見の温泉宿10選

NIKKEIプラス1

2017/12/10 NIKKEIプラス1

一面の雪景色を眺めながら、ぽっかぽかの露天風呂につかる。
冷気で頭はさえ、温かい湯で心と体は芯からリラックス。
味わい深い、雪見の温泉宿に出かけてみませんか。

■白銀が包む静寂の世界

 険しい山の雪道をかき分けて、ようやくたどり着く冬の温泉宿。震える寒さに耐えてまで訪れたくなるのはなぜだろう。

 労力と時間とお金をかけてわざわざ出かけていくぜいたく感か。大自然とつながる一体感か。それとも白銀に包まれた静寂の世界で、さながら墨絵を鑑賞しつつ湯にひたれる開放感か――。

 モノトーンの風景は、余計な色が目に入らなくなる分、リラックスできるという。外気は冷たく、湯は温かい「頭寒足熱」は健康にも良さそうだ。人の少ないオフシーズンだからこそ味わえる魅力はたくさんある。

 「雪景色がすばらしい温泉宿」を専門家に選んでもらったところ、山深く、交通の便が必ずしもよくない「秘湯」が上位を占めた。1位の「鶴の湯温泉」は5人が1位に選んだ。多いときには1日90センチ積もるという雪深さや雪に映える乳白色の湯だけが理由ではないだろう。「湯治場の雰囲気を壊さず、古さにこだわり、設備にも余計なお金をかけない。その分、週末も正月もない手ごろな通年料金で誰でも気軽に楽しめる宿」(佐藤和志会長)を長く続けている点も人気の背景にありそうだ。

 専門家が1位に選んだものの、ベスト10から漏れた宿が2つあった。大沢温泉・山水閣(岩手県花巻市)と丸駒温泉旅館(北海道千歳市)だ。これらを含め下位は僅差でひしめき合った。専門家それぞれにお目当ての雪見温泉があり、選ぶのに苦労した跡がうかがえた。

1位 乳頭温泉「鶴の湯温泉」 700ポイント
日本の秘湯ここにあり(秋田県仙北市)

 秋田駒ケ岳の麓、乳頭温泉郷の中で最古の温泉宿。元禄14年(1701年)から湯宿としての記録が残る。「これぞ日本の秘湯の代表。かやぶき屋根と雪見露天、山の芋鍋が雪国ならではののどかさで、気持ちを解きほぐしてくれる」(野添ちかこさん)。「電線などを埋設し、宿の周囲3キロメートル以内に電柱がない」(佐藤和志会長)ので、露天風呂から自然のままのブナ林が眺められるのも魅力だ。

 泉質の異なる4つの源泉があり、それぞれ効能も異なる。「1泊ではもったいない。長逗留(とうりゅう)して身体の変化を感じたい」(山田祐子さん)。「雪の本陣は時代を超えた風情。混浴が有名だが、裏手にある女性露天も落ち着いて入れてオススメ」(西村りえさん)

(1)アクセス 秋田新幹線田沢湖駅からバスで約40分、アルパこまくさ下車、送迎バスで15分(2)問い合わせ先 0187・46・2139(3)宿泊料金 8790円~

2位 万座温泉「日進舘」 490ポイント
ダイナミックな自然景観(群馬県嬬恋村)

 上信越高原を望む、標高1800メートルの山の上の宿。雄大な景色と、総天然木造りの9つの湯が楽しめる。「国立公園内だからこそのダイナミックな自然景観が魅力」(野添さん)。中でも展望露天風呂の「極楽湯」では、夕焼け、星空、日の出と、どの時間も楽しめる。「極楽湯の熱い湯につかりながら眺める純白の雪景色が爽快」(中尾隆之さん)

 泉質は硫黄濃度が日本一とされる酸性硫黄泉で、「1泊から長期間滞在の湯治まで、心身ともに温泉パワーで元気になれる」(北村武史さん)。「星空の下で雪見風呂を堪能できる。爽快な空気の中で濃厚な硫黄泉を楽しみたい」(山田さん)

(1)JR万座・鹿沢口駅からバスで約40分(2)0279・97・3131(3)8250円~

3位 白骨温泉「泡の湯」 450ポイント
水墨画の世界広がる(長野県松本市)

 信州松本から上高地に向かう途中の山あいにあり、乳白色の巨大な混浴露天風呂が有名だ。「白い雪と白いお湯、深い夜空。まるで水墨画のよう」(雨宮健一さん)。「雪の里へと入っていくアプローチに旅情を感じる。白い湯の色が雪景色に似合い過ぎるほど似合う」(西村さん)

 「白骨」の呼び名は中里介山の小説「大菩薩峠」から広まった。「小説に思いをはせながら白濁した露天につかると、真っ白な景色と一体感が楽しめる」(高橋俊宏さん)。「炭酸ガスを含む硫黄泉は珍しく、温浴効果は抜群」(北村さん)

(1)JR松本駅からバスで約120分。(2)0263・93・2101(3)1万5120円~

4位 十勝岳温泉「湯元 凌雲閣」 430ポイント
コントラスト美しく(北海道上富良野町)

 標高1280メートルと高地にある温泉宿。源泉が2本あり、酸性の湯と鉄分を多く含む湯が楽しめる。「ぬるめのお湯に長湯しながら、眼前に広がる雄大な十勝岳連峰や樹氷鑑賞を」(北村さん)。十勝岳では十勝晴れといわれる晴れの日が多く、「快晴の青、十勝岳の白銀、赤茶色の温泉のコントラストが美しい。キタキツネが露天風呂をのぞきに来ることも」(杉本圭さん)。雪景色は初夏まで楽しめる。

(1)JR上富良野駅からバスで約40分(2)0167・39・4111(3)9180円~

5位 奥鬼怒温泉「加仁湯」 380ポイント
硫黄泉、浴槽もたくさん(栃木県日光市)

 一般車両が入れない山深い温泉。四季折々の大自然を楽しめるが、おすすめは冬。「雪の季節はさらに秘湯気分が盛り上がる」(高橋さん)。泉質の異なる5本の源泉があり、「白濁した硫黄泉で浴槽もたくさんあってよい」(郡司勇さん)。加温も加水もしないため、日によって湯の量や色が変わる。「青白い湯色が雪とあいまってきれい」(西村さん)。

(1)東武鬼怒川温泉駅からバスで95分、バス停「女夫渕」から送迎バスで約25分(2)0288・96・0311(3)1万3110円~

6位 ランプの宿 高峰温泉 270ポイント
標高2000メートルの高原(長野県小諸市)

 標高2000メートルの高原にある温泉宿。「雪を満喫するのに、露天風呂からの眺めと、スノーシューをはいての山歩き、静と動の両方からアプローチできるのがいい」(野添さん)。宿泊者にはスノーシューやストックなどを無料で貸し出している。毎夜、星の鑑賞会を開いており、「雪景色にこぼれ落ちそうなほどの星の数に感動」(雨宮さん)。冬場は近くのスキー場の駐車場から雪上車で送迎してくれる。

(1)北陸新幹線佐久平駅からバスで約70分(2)0267・25・2000(3)1万6350円~

7位 大沢山温泉「里山十帖」 260ポイント
とろとろの美肌の湯(新潟県南魚沼市)

 築150年の古民家を移築・改修した宿の露天風呂からは、2000メートル級の山並みや魚沼盆地が眼前に広がり、「真っ白な景色とともに清れつな空気感が楽しめる」(高橋さん)。おすすめは朝風呂。「夜間に積もった雪が朝日に照らされ、朝もやがかかる光景は幻想的」(山田さん)。「とろとろの美肌の湯は女性ごのみ」(野添さん)。

(1)JR大沢駅からタクシーで約5分(2)025・783・6777(3)2万8944円~

8位 銀山温泉「瀧見舘」 240ポイント
隠れ家のような趣(山形県尾花沢市)

 大正ロマンの風情漂う温泉街を抜けた、山の中腹にある。「すっぽり雪に覆われた雪景色のなか、白銀の滝を眺められる」(中尾さん)。隠れ家のような趣で「雪をかぶった木々が美しい。温泉街の雪景色も楽しめる」(津田令子さん)。「風呂につかりながら、漆黒の山々の中に月のほのかな明かりが感じられる」(雨宮さん)。

(1)山形新幹線大石田駅からバスで約30分(2)0237・28・3399(3)1万8510円~

9位 赤倉温泉「赤倉観光ホテル」 230ポイント
スキー履いたままゲレンデに(新潟県妙高市)

 1937年創業の、草分け的なリゾートホテル。「食事や宿は最高ランク。時には眼下に雲海を眺められ、満足度の高い温泉」(河内良太さん)。妙高山の中腹、標高約1000メートルにあり、「露天風呂付き大浴場からの眺望はさえぎるもののない絶景」(津田さん)。「宿からスキーを履いたままゲレンデに出られる」(杉本さん)。

(1)しなの鉄道妙高高原駅から送迎バスで約10分(2)0255・87・2501(3)2万6070円~

10位 新穂高温泉「槍見(やりみ)舘」 200ポイント
北アルプスを眺めながら(岐阜県高山市)

 奥飛騨温泉郷の最奥にある。「北アルプスを眺める温泉はまさに絶景。開放的な気分になれる」(河内さん)。白銀の槍ケ岳を正面に望む露天風呂など8つの湯がある。「川辺の露天風呂は素朴で情緒豊か。雪の季節は特に非日常的な空間を満喫したい」(北村さん)。「古民家と、土蔵造りの離れも味わい深い」(中尾さん)。

(1)JR高山駅からバスで約90分(2)0578・89・2808(3)1万8510円~

◇  ◇  ◇

 ランキングの見方 数字は選者の評価を集計し、点数化。温泉名と旅館・ホテルの名前(所在地)。(1)アクセス(2)問い合わせ先電話番号(3)2人利用時の1人分の平日宿泊料金(1泊2食付き、税込み)。写真は1位瀬口蔵弘撮影、ほかは各施設の提供。

 調査の方法 専門家の協力で、湯船からの雪景色がすばらしい温泉を全国から32選びリスト化。絶景の雪景色を見ながらゆったりつかれる温泉、という観点で11人の選者に1~10位を選んでもらい集計した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。

 ▽雨宮健一(KNT-CTホールディングス国内旅行部)▽河内良太(クラブツーリズム国内コミュニティ旅行センター)▽北村武史(日本旅行総研研究員)▽郡司勇(温泉チャンピオン、温泉研究家)▽杉本圭(温泉写真家)▽高橋俊宏(「Discover Japan」統括編集長)▽津田令子(トラベルキャスター)▽中尾隆之(旅行作家)▽西村りえ(温泉ライター)▽野添ちかこ(温泉と宿のライター)▽山田祐子(井門観光研究所代表)

[NIKKEIプラス1 2017年12月9日付]

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