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白河桃子 すごい働き方革命

過労自死を招く企業の構造 産業医が見た職場のリアル 産業医・大室正志さんインタビュー(上)

2017/12/14

白河 私もそう思います。働き方改革の取材をしていたときに、午後7時退社のルールを決めている会社の経営者に「マインドも重要だけど、日本人は横並び意識が強いから、まずは形を決めてあげることが大事だ」と言われたことがありました。

 ある程度、「何時までに仕事を終わらせるように」と決めることは、日本のビジネスパーソンにとっては「周りを巻き込む上で重要」なんですね。

大室 よく、「形を決めても、意識が変わらなければ意味がない」という議論をされる方がいらっしゃいますが、僕は逆に、形が決まるからこそ意識が変わると思っています。

 「村八分」という言葉があります。かつて日本人は、村社会の中で毎日同じ人と顔を合わせなければならなかった。その中で出過ぎたまねをすることは、村の秩序を乱す行為だったわけです。だから、空気を読んで忖度(そんたく)する。これは、本来の日本人の感性というより、村社会に最適化した感性だと言えます。

大室さんは産業医としてメンタルヘルス対策、インフルエンザ対策、生活習慣病対策など企業における健康リスク低減にも従事。現在日系大手企業、外資系企業、ベンチャー企業、独立行政法人など約30社の産業医を担当

■疲れてくると、論理思考ができなくなる

白河 電通の事件の話に戻りますが、同社の山本敏博社長が「人の時間というものが有限である、希少なものであるという認識が非常に希薄であったと思う」と発言されていたのが印象的でした。長時間労働が当たり前のようなマッチョカルチャーを象徴する内容です。

 私は、やはり制度は弱者に合わせるべきだと思います。会社のベーシックな制度の在り方も今、変化を問われているのでしょうか。

大室 政府の働き方改革では、2カ月連続で80時間を超える残業は禁止という規制を設けることになりました。なぜ80時間かというと、そのラインを超えると睡眠時間が5時間くらいに短縮され、過労死の割合が増えるという統計があるからです。

 基本的には、人は睡眠不足になると、一定の割合でうつ状態に陥ります。長く続けば、うつ病になります。うつ病患者は、通常よりも何倍も自殺率が高いのです。

白河 「100時間残業なんて普通だ」とか「電通の事件の原因は、実はパワハラなんだ」などとさまざまな議論がありますが、もともとは長時間労働という、うつになりやすい環境があるところに、何らかのトリガーがあったということなんですね。

大室 そうです。人間の脳は、主に3つの部分に分かれています。表面が大脳新皮質といって、ロジカルに考える機能を持っています。その次にあるのが、大脳辺縁系。感情をつかさどっています。最後は脳幹という部位で、呼吸や内臓の制御など、生きるために必要な動きをコントロールしています。

 疲れてくると、表面からどんどんシャットダウンしていくんです。大脳新皮質がシャットダウンすると、次に出てくるのは感情ですよね。

白河 論理思考がどんどん弱くなってくるわけですね。

大室 その通りです。こうして疲労が続いていくと、普段温厚な人がちょっとしたことでキレたりします。これは危険信号だと思ってください。ごくまれにですが、衝動的な行動を取ってしまう人もいます。

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