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トップ声優になるには 「会話力」を磨け(吉田尚記) ニッポン放送・吉田尚記アナウンサー 講演

日経エンタテインメント!

2017/12/12

 近年、アニメやゲームのファンは10代20代の若い世代に裾野が広がっている。その人気を後押ししているのが、キャラクターの声を演じる「声優」の存在だ。声優が雑誌のグラビアを飾り、テレビに出演する様子を見るのも珍しくなくなった。アニメ業界に精通するニッポン放送の吉田尚記アナウンサーは、トップレベルの声優に共通するのは「会話」のスキルが高いことだという。声優やクリエイターの卵が集う代々木アニメーション学院の東京校で11月6日に開催した講演の要旨をまとめた。

11月6日、代々木アニメーション学院東京校で「声優になるためには」をテーマに講演する吉田尚記氏。ニッポン放送アナウンサー。サブカル知識を武器にアニメやゲームなどのイベントに司会として登場している。

◇  ◇  ◇

 声優は、エンタメの世界でも飛び抜けて特殊な職業だと思います。だからこそ、目指そうとすると、すごく難しい。私は5年間、日経エンタテインメント!の連載で毎月、業界のトップを走る声優さんにインタビューをしてきました。その経験を通して、確信を持って言えることがあります。それはトップ声優には、明らかな共通点があるということ。つまりは、それがプロとして活動する条件であり、業界や現場で求められる資質なのでしょう。それを、いくつか話そうと思います。

 まず大前提として、声優は社会に不可欠な仕事ではありません。医師や建築士は国家の存続に絶対必要ですが、声優が存在しない国は相当数あるでしょう。極論すれば、アニメの音響制作という「業界」は、地球上で東京にしか存在しないと言ってもいいのです。

 そんな小さな世界では、自分の中で動機が完結していない人間に居場所はありません。私が見た限りでは、トップクラスの声優であるほど意識が自己に向いていて、逆に外の世界に対しては非常に寛容です。だから、どんな動機から目指したにせよ、声優という職業は「自分がやりたくて、やっている」ということを、忘れてはいけないと思います。

 次に、声優を職業として続けていこうとすれば、ある程度、売れ続けなければいけません。では、どんな人が売れる、つまり食っていくことができるのか。共通しているのは、しゃべりが面白い人です。もっと分かりやすく見分け方を言えば、ラジオでのトークが面白いのです。

 私のインタビュー経験では、会話が楽しくないというトップ声優は1人もいませんでした。トップレベルの声優は、世間話からして面白くできます。というのも、声優の仕事は「会話劇」です。そのプロである人たち自身の会話が、面白くないワケがありません。

 どうすれば会話を面白くできるのか。私はアナウンサーにして、ラジオパーソナリティーです。ラジオは面白い話をするのが仕事ですから、そのすべをずっと考えてきました。その結論は、「違和感に対して敏感であれ」です。

■優れた演技は普段の会話から生まれる

 会話における違和感の正体は、例えば自分の知らない情報だったり、受け答えのクセだったり、話す時のトーンだったり、様々です。それを「なんかヘンだったな」で終わらせず、受け止めて分解・吸収・改良する。それによって会話は洗練されていき、いつしか日常の会話が会話劇に変わります。優れた声優とは、そのスキルが高い人たちです。

『日経エンタテインメント! アニメSpecial 声優バイブル2018』吉田氏による声優インタビュー連載の完全版を掲載(日経BP社/1300円・税別)

 声優の仕事には、演技の台本があります。しかし、すべての台本が演者やキャラクターの気持ちと完全に寄り添っているわけではないでしょう。そういったときに生きるのが、普段の会話で磨き上げた感性なのだと思います。声優の優れた演技は、普段の会話の中から生まれるのです。

 そのレベルに到達するための方法は、いろいろあるでしょう。私が勧めたいのは、他人が経験したことのない環境で感性を磨くことです。優れた声優の皆さんは、本当にいろいろな経験をされています。だから、できる限り面白い体験をして、自身の会話劇を洗練させていくこと。これがトップ声優の資質を身につける、ひとつの有効な方法ではないでしょうか。

(ライター・写真 杉浦諒)

代々木アニメーション学院は、声優を中心とした様々なクリエイターを育成。1978年設立で、声優の水樹奈々や中村悠一をはじめ数多くのクリエイターを輩出している。

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