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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。11月に訪れたときはナイキ創業者の自伝『SHOE DOG』が絶好調だったが、今回もその売れ行きは衰えていない。そこに毎年この時期に出そろう来年の経済予測本が加わってきたのが、店頭の売れ筋の様相だ。そんな中、売れ行きトップに躍り出たのは、自己啓発の成功法則について科学的検証を試みた米人気ブロガーによる書下ろしの一冊だった。

証拠に基づく成功法則

その本はエリック・バーカー『残酷すぎる成功法則』(橘玲監訳、竹中てる美訳、飛鳥新社)。監訳者の解説によれば、バーカー氏は「Barking up the wrong tree(間違った木に向かって吠える)」というブログを毎週更新している人気ブロガー。読者は30万人を数え、ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルもその内容をたびたび紹介しているという。

同氏のブログの特徴は、自身の主張のすべてについて、どのようなエビデンス(証拠)に基づいているかをリンクをはって示していること。「このちょっとした工夫(コロンブスのタマゴ)によって、うさんくさいものの代表だった自己啓発に"科学"を持ち込んだのだ」と監訳者は記す。世にあふれる自己啓発書には「いい人は勝てない」とさとすものもあれば、「最後はいい人が勝つ」と説く本もある。あきらめたら勝てないのか、それとも頑固さがあだになるのか。著者は各章でこうした成功にまつわる神話をエビデンスに基づいて検証していく。

高校首席の行く末は?

まず第1章は「成功するにはエリートコースを目指すべき?」をテーマに筆を進める。最初に持ってくるデータが1980、90年代にイリノイ州の高校を首席で卒業した81人の追跡調査。おおむね大学に進んで90%が専門的キャリアを歩み、総じて恵まれた暮らしをしていたが、それぞれの職能分野を第一線で率いている者はいなかった。そこで著者は問う。「ひとかどの成功者になるのはいったい誰なのか」。そして、英国の危機を救ったチャーチル、天才ピアニストのグレン・グールドなどの例をひきつつ、日ごろは欠点ととらえられていた資質が環境によっては強みに転化することを明らかにし、それがひとかどの成功者の条件という説を紹介する。そのために必要なことは? 自分の資質を見つめ、それを生かせる環境を選べというのがこの項の著者の結論めいたものだ。

こんな調子でいい人は成功できないのか、「やり抜く力」は必要なのか、「できる」と自信を持つのには効果があるか、といった自己啓発書が説く成功法則を検証。その法則がどの程度信頼に足るか、応用するときにどこにポイントをおくかなどを考察していく。研究者による調査や実験の数字にだけでなく、歴史上の人物のエピソードや成功者へのインタビューなどを傍証として突き合わせ、読む者を飽きさせない。「10月の終わりに入荷した最初の5冊がすぐに売れ、再入荷してからも勢いが落ちないで売れている」と店長の三浦健さんは話す。

戦略コンサルの予測本も上位に

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)残酷すぎる成功法則エリック・バーカー著(飛鳥新社)
(2)名作コピーの教え鈴木康之著(日本経済新聞出版社)
(3)SHOE DOGフィル・ナイト著(東洋経済新報社)
(4)入社1年目の教科書岩瀬大輔著(ダイヤモンド社)
(5)BCGが読む 経営の論点2018 ボストンコンサルティンググループ編(日本経済新聞出版社)

(リブロ汐留シオサイト店、2017年11月26日~12月2日)

トップはここで紹介した本。2位は広告コピーを勉強するための本。15年刊行の本だが、研修用にまとめ買いが入ってランクインした。3位に『SHOE DOG』。4位は新入社員向けのスキルと心構えの本で、刊行は11年。これも「何人かがまとめて数冊買っていった」といい、社内研修需要と見られる。5位は来年の経済予測本。戦略コンサルティングファームの執筆陣が、経営に大きな影響を与える論点に絞って、これから何が起きるか、そこにどう備えるかを書いている。

(水柿武志)

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