土屋太鳳 「ふふふ、私いまでもガラケー使ってます」

「お気に入りの革バッグを使い始めたのは、荷物が多いから。出かけるときに必要なものを、1個にまとめておきたいと思ったんです」
「お気に入りの革バッグを使い始めたのは、荷物が多いから。出かけるときに必要なものを、1個にまとめておきたいと思ったんです」

2017年は3本もの主演映画が公開され、快進撃を見せた土屋太鳳さん。12月16日にはその最後として『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の公開が始まる。土屋さんが多忙な日々を乗り越える活力源は? 朝ドラヒロインも経験済みの「国民的新進女優」が、走り続けるために必要なものを語る。

「奇跡の実話」撮影の支えになった「お守り」

『8年越しの花嫁 奇跡の実話』は、岡山の中原尚志さん、麻衣さんカップルの実話を映画化した作品。YouTube動画をきっかけに話題になったストーリーだ。土屋さんは、結婚式の直前に深刻な病で意識不明となり、長い闘病の末に尚志さんと式を挙げる、麻衣さんを演じた。

闘病する麻衣を佐藤健さん演じる尚志が支える (C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

「歴史上の人物をモデルにして映画やドラマを作ることはよくありますけど、今回は、私と同じ時代を歩んでいる、まだ30代の方がモデル。私が演じることで、麻衣さんやご家族に何らかの影響が出ると思うので、演じることの責任感は大きかったです。

演じることが決まって、健先輩と一緒に、岡山の麻衣さんと尚志さんに会いに行きました。私は17歳のときに映画でご一緒させていただいてから、ずっと佐藤健さん(尚志さん役)のことを『健先輩』と呼ばせていただいてるんです(笑)。

そこでみなさんと一緒に見た闘病生活のビデオは、本当に壮絶でした。無意識の中で命をつかもうとする様子が映っていて……。その時の心を想像すると、本当に言葉にならない。以前から『生きていることは素晴らしい』と思っていましたが、『生きていることが奇跡なんだ』とすごく感じました」

映画で印象的なのは、その闘病シーン。病魔に侵され半狂乱になったり、顔が大きく腫れ上がったりと、女性としては避けたくなるようなシーンにも臆せず挑んでいる。

「最初に麻衣さんにお会いした時、お子さんと一緒に遊んだり、『一緒に料理作ろう』と言われてハンバーグを作ったりしたんです。そういった時間が、役作りをする上で大きかったなと思います」

「闘病シーンは、本物の病院で撮影させていただきました。4時間かけて特殊メイクをして、2日間寝たきり。実際に管を口や鼻に入れていたので、途中、息がしづらくなって、苦しくて。貧血になりそうになると、病院のお医者さんが脈を測って対応してくださいました。だから自分の努力というより、みなさんの支えがあって、乗り越えられたという気持ちです。

もうひとつ支えになったのが、麻衣さんとの写真です。最初にお会いしたときに撮った写真を、次にお会いしたとき、手作りの花のフレームに入れてプレゼントしてくださったんです。『初めて作ったから出来はどうかなと思ったんだけど、どうしても渡したくて』って。そういう気遣いと笑顔がすてきな、器の大きい方。そんな麻衣さんの物語を、私の体を通して、たくさんの人たちに伝えたい。その一心で演じていて、いただいた写真が撮影期間のお守りでした」

ボタンをカチカチ押すのが気持ちいい

『8年越しの花嫁 奇跡の実話』は、05年から約8年間の軌跡を描いた物語。その間に、世の携帯電話はスマートフォン(スマホ)に移行していくが、麻衣さんのケータイは時を止めたまま。ガラケーだからこその、すてきなシーンもある。

土屋太鳳さん演じる麻衣がガラケーを抱きしめるシーン (C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

「ガラケーが懐かしかったですか? ふふふ、私、今でもガラケーを使ってるんです(笑)。一応、最近スマホも買ったんですけど、普段の友達との電話やメールは、まだガラケー。私、あのボタンを押すのが好きなんですよ。ガラケーのボタンをカチカチ押すのが気持ちいい。

あと、ちょっとワクワクしますよね? メールを受信するまでにちょっと時間がかかるので、『誰からだろう?』って期待するのも楽しいです」

ロケ先でまな板を使ってサラダを作ります

2017年は『PとJK』『兄に愛されすぎて困ってます』『トリガール!』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』と4作もの出演映画が公開。駆け抜けた1年を、支えたモノは何だったのか。

「私のお気に入りは、小さな革のバッグです。それはお財布にもなって、リップクリームやファンデーションも入る。小さいのにいっぱい入るから、それだけでうれしい(笑)。それに革製なので、お手入れして大事に使えば、長持ちするところも好きです。

3年くらい前に赤いのを買ったんですけど、いっぱいいっぱい使い込んだので、最近、色違いの青を買いました。ちょっとした打ち上げが入ったときに、サッと持って出かけています」

多忙な日々を乗りきるため、健康管理には人一倍気を遣っている。よくスタジオやロケ先に持っていくというのが、アウトドア用のクッキングセットだ。

「畳んだまな板の中に、包丁やお箸が入るんです。それを現場に持っていって、休憩時間に野菜やフルーツを切って、サラダを作ります。家でカットして行かないのは、野菜は切って時間が経つと、酸化して変色してしまうから。

野菜を食べるのは、血の巡りを良くするためです。現場は待ち時間が長くて、その間、体を動かせない。血行が停滞してしまうことが多いので、サラダを食べることで、血を巡らせます。

野菜は、セロリが多いです。あとはトマトや、パプリカ。それにレモンを加えて、お酢を入れてサラダにします。セロリは苦いので、嫌いな人も多いですよね。でも、体にはとてもいい。もし苦手だったら、ゴマを入れたりして。ちょっと甘みを入れることで、食べやすくなると思います。

水分はよく取るようにしています。それから、ご飯です。よくかんで、しっかり食べる。忙しいと、どうしてもガーッと食べがちですけど、ご飯を一粒ずつ『おいしいなあ、幸せだなあ』と感じながら食べるようにしています。

そして大事なのは、お肉! パワーになります。それにおいしい!(笑)。 私は本当にお肉が大好きで、焼肉屋さんでみなさんがお腹いっぱいになったぐらいが、私の四分目くらい。『まだまだいけます!』という感じです(笑)」

走れているのであれば、今、走り続けること

2017年の活躍が認められ、11月にはTAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。その授賞式で、「映画の扉をたたいて12年。温かい涙が心から出る言葉もあれば、冷たい涙が心をえぐる言葉もあって、いつの間にかデコボコな心になっていました」と涙ながらに語って注目された。「デコボコな心」になりながらも、走り続けるのはなぜか。

「止まることは、とても簡単だと思います。そして、止まらないといけないときは、絶対に来る。だから、まだ走れているのであれば、今、走り続けることが大事だと思うんです。『8年越しの花嫁 奇跡の実話』でも、尚志さんは休むことなく愛情を注ぎ続けて、麻衣さんは8年かけて花嫁になることができた。走り続けて、いろんな人に出会い、いろんな気持ちを知ることが、とても大切な気がするんです。

走り続けることで、孤独を感じることもあると思います。私は最近、『こうしたいです』と自分で決めることが多くなってきたので、たまに不安になって、『誰か、私のことを見てくれているのかな?』と感じます。でも提案する機会が増えているのは、ありがたいこと。それに、孤独を大切にして生きていきたいな、とも思うんです。孤独って、寂しいじゃないですか? でも孤独を感じるから、人と一緒にいたいと思うし、おいしいものを一緒に食べたときに、よりおいしいと感じられるので」

自身の結婚は?「結婚はご縁だと思うので……(笑)。でも機会があれば、早めに判断はしたいなと思います。そこには女優として必要な感情もあると思うので。結婚式をするなら、和装とウエディングドレス、両方着たいです(笑)」
土屋太鳳
1995年生まれ、東京都出身。2005年に「ミス・フェニックス」オーディションで審査員特別賞を受賞し芸能界入り。08年に黒沢清監督の『トウキョウソナタ』で映画デビュー。11年のドラマ『鈴木先生』や、14年の朝ドラ『花子とアン』で注目され、15年の朝ドラ『まれ』のヒロイン役でブレーク。同年公開の主演映画『orange-オレンジ-』は興収32億円超えの大ヒットとなる。18年は1月から初舞台『PLUTOプルートゥ』に出演、映画『となりの怪物くん』『累―かさね―』の公開が控えている。

『8年越しの花嫁 奇跡の実話』

(C)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会

結婚式を間近に控えた麻衣を、年間発症率が300万人に1人という「抗NMDA受容体脳炎」が襲う。意識回復の見込みは薄いと言われならも、毎日病院に通う尚志。1年以上の長い眠りから覚めたとき、2人に、さらなる試練が待っていた……。監督・瀬々敬久 脚本・岡田恵和 原作・中原尚志・麻衣(『8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら』主婦の友社刊) 出演・佐藤健、土屋太鳳、杉本哲太、薬師丸ひろ子、北村一輝、浜野謙太、中村ゆり 12月16日(土)全国ロードショー

(文 泊貴洋、写真 藤本和史)