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家主同居は○、空き家は× 民泊規制で京都市が新機軸 緊急時の「駆け付け」を義務付け、硬軟両様で観光振興めざす

2017/12/8 日本経済新聞 朝刊

京町家についても歴史的遺産を生かす観点から民泊の制限を設けない(京都市上京区)

 一般の住宅に旅行者を泊める民泊について、京都市は条例案の骨子をまとめた。居住者がいない空き家は住居専用地域において1~2月に営業を限定するなど厳しく規制する。一方、家主が居住するタイプと歴史的な遺産である京町家には特別な制限を設けない。条例作りで先行する東京都区部の多くは「空き家」と「家主同居」を一律に規制しようとしており、京都市の硬軟両様の取り組みは一石を投じそうだ。

京都市では外国人観光客が急増している(市内の錦市場)

 「地域住民と観光客の安心安全を両立させるには(法律の)ぎりぎり限界に挑戦する条例が必要だ」。民泊規制を検討するため11月に開かれた有識者会議で、門川大作京都市長はこう強調した。2018年2月の市議会に条例案を提出する方針だ。

 まず住居専用地域では、家主同居タイプと京町家は国が定めた住宅宿泊事業法(民泊法)にのっとって年180日まで営業できるようにする。これらを独自規制の枠外に置いたのは、家主の目が行き届き、騒音やゴミ出しなどのルールが守られやすいと考えたため。家主は地域の自治会などに所属しており、周辺住民は自治会を通じて苦情を直接伝えることができる。「京町家を相続したものの、民泊で収入を得なければ維持費を捻出するのが難しい」という住民の声にも応えた。

 一方で空き家タイプの民泊は厳しく制限する。住居専用地域では観光の閑散期である1~2月の60日間に営業を限定する。住宅地以外でも緊急時の「駆け付け」を義務付ける。10分程度で宿泊施設に駆け付けられるよう、施設から半径800メートル以内に事業者か管理者が駐在するよう求める。これまで海外に拠点を置き、緊急時に連絡が取れない事業者も多かったが、国内に管理する代理人を置く必要が生じる。京都市内では観光地と住宅地が隣接しており、有識者委員会では「住宅地以外でも制限を設けなければ条例の意味がなくなる」という声が多くあがったという。

 ほかにも、住民の生活環境を守るため、分譲マンション内で民泊を営業する場合は管理組合が禁止していないことを示す書類の提出を求めるほか、宿泊者の有無や人数を住民に周知させる。違反した場合は最大5万円の過料を科す。

 今回の条例案に対して、地元の不動産業界からは不安の声があがっている。京都市内で不動産業を営むフラット・エージェンシーは「規制を強めると民泊事業をやりたがっている新規参入者の意欲をそいでしまう可能性がある」と指摘。市内で不動産業を営む都ハウジングの岡本秀巳社長は「全国的にも大変厳しい条例」と語る。

 18年6月の民泊法施行により全国的に民泊が解禁となり、無許可で営業していた民泊が法に基づいて営業できるようになる。だが実態の不透明な民泊が野放しになりかねないとの懸念から、自治体には不安の声が大きい。民泊法は地域の実情に合わせて区域を定め、営業期間を制限する条例を定めてよいとしている。

 先行して条例作りが進んでいるのが東京都区部だ。世田谷区は住居専用地域において月曜から金曜の宿泊(月曜正午から土曜正午までの利用)を禁じる方針。新宿区や中野区は住居専用地域で月曜から木曜の宿泊を禁止することを目指している。いずれも家主同居タイプと空き家タイプを一律に規制する内容だ。民泊の現場からは「利用の実態を無視しており、民泊をするなと言っているのと同じ」という声があがっている。

 石井啓一国土交通相は12月1日の記者会見で、自治体による過度な規制に懸念を示した。日本を代表する国際観光都市である京都市の試みは、ほかの自治体からも注目を集めそうだ。

(山本紗世)

[日本経済新聞朝刊2017年12月2日付を再構成]

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