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ブレンドこそ、スコッチの粋 グレーンウイスキー誕生

世界5大ウイスキーの一角・ジャパニーズ(10)

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NIKKEI STYLE

スコッチウイスキーは、ワインの影響受け、従来のアイリッシュウイスキーとは別次元の香味世界を実現した。何よりスコッチの味わいが認められ、受け入れられるようになるきっかけは、ワイン商たちが身につけてきた技術が生み出したブレンデッドウイスキーの誕生であった。

エディンバラのワイン商、アンドリュー・アッシャーが1860年に売り出したと言われている、このブレンデッドウイスキーこそ、スコッチウイスキー最大の革新と言っていい。

評価が高まる国産ウイスキーへと至るウイスキーの歴史と魅力をひもとく本連載、今回はブレンデッドウイスキーの発展に必須であったグレーンウイスキーの誕生を紹介する。

グレーンウイスキーができたのは、蒸溜釜での単式蒸溜の限界を超えるための工夫からだった。蒸溜する度に液を入れたり、残液を抜いたりしなければならない不便さをどう克服するか? それにこたえたのが細かい穴の開いた棚を縦型の塔内に積み上げる構造だった。

下から蒸気を、上から発酵もろみを流す。棚ごとに、下から上がってきた蒸気が棚の上のもろみからアルコール分を抽出し、アルコール分が多い蒸気となってその上の棚へと塔内を上昇する。その蒸気を塔のてっぺんから抜き出して冷やしてやれば、不純物が減った濃いアルコールが取得でき、塔の底にはアルコール分が抽出された残液がたまる。この蒸気を冷やした濃いアルコールが、グレーンウイスキーになる。

上から発酵もろみを入れ、底から残液を、そして上から蒸気を抜く。これを連続的にやる。それが連続式蒸溜機の原理である。

1826年にこれを発明したのは、ロバート・スタイン。スコッチウイスキーの名門、スタイン家の一員であった。1830年に開発されたイーニアス・カフェの連続式蒸溜機の方が良く知られているが、最初にそのメカニズムを考え付いたのは、数々の技術革新を行ってきたロバート・スタインである。スコットランドで重工業の産業革命が始まる時期と一致するところが興味深い。

スタイン家は、16世紀の宗教改革をきっかけに閉鎖された修道院から蒸溜技術を受け継ぎ、1720年代に最初の商業蒸溜所をケネットパンズに建設する。1733年には早くも、スコットランド最大規模の蒸溜所にまで成長した。

スタイン家は、当時全盛を誇っていたアイルランドのウイスキー市場にも目を向け、1780年にボウ・ストリート蒸溜所、そしてマローボーン・レーン蒸溜所の2カ所の巨大蒸溜所を買収し、一挙に大手の一角を占める。

ボウ・ストリートは今も博物館としてダブリンに残っている、ウイスキーファン必見の場所である。

スコットランドでもスタイン家は、蒸溜所に最新工業技術を取り入れ、生産量とコストを大幅に改善するかと思えば、その売り先をイングランドにまで広げるなど活発な企業活動を続ける。その結果、一族はケネットパンズ以外にキルバギー、キンケープル、ハットンバーンの計4蒸溜所を保有し、業界での地位を盤石にした。

このスタイン家と相並ぶ存在となっていったのが、日本でもかつて親しまれたブレンデッドウイスキー「ヘイグ」を生み出したヘイグ家である。

1751年に、スタイン家とヘイグ家の間に婚姻が成立する。その後、スタイン家とヘイグ家は世代ごとに何組もの婚姻を繰り返し、1802年にはジョン・ヘイグが誕生する。このジョンが今日のスコッチウイスキー隆盛の基礎をつくったと言ってもよい人物だ。

ヘイグ家は、スコットランド最古のウイスキーの名家と呼ばれている。1655年に、安息日に蒸溜作業をしたとして、先祖が教会の集会で糾弾されたという記録が残っており、この記録が「最古の名家」の由縁になっている。その先祖は、オランダで蒸溜技術を学んだと言い伝えられている。

ジョンは連続式蒸溜機の威力と課題を正確に予測していた。生産能力が高いが故に、グレーンウイスキーが超過剰となる事態である。実際1830年代以降、スタイン家、ヘイグ家の後を追うように、続々と連続式蒸溜所が開設され、大変な事態となった。

新設が集中したのは、両家の蒸溜所を囲むようにエディンバラからフォース湾、フォース川の北側までの古来より北海貿易でオランダを始め、北海沿岸との交易があった地域であった。

ジョンは、蒸溜所間での生産量と価格の調整に走り回り、市況を安定させることに成功する。これにより、業界のスポークスマンとして政府に対しても強い発言力を持つに至った。

その彼が1865年に組織したのがスコッチディスティラーズ・アソシエーションである。モルトとグレーンの混和が法律で正式に認められた1860年から間もなくのことであった。

同社は1877年には、グレーンウイスキー全生産量の75%を押さえたスコッチウイスキー最強の会社DCL(ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド)へと発展する。

こうしたグレーンウイスキーの供給量調整・安定供給こそ、味わい豊かに育ってきたハイランド、スペイサイド、アイラなどの様々なモルトの力を発揮できるブレンデッドウイスキーの発展に大きく寄与したと考えている。個性豊かで様々な味わいを持つがモルトを組み合わせ、モルトに比べピュアで飲み易いグレーンウイスキーで溶いてやることで、飲み易さと香味の豊かさ・複雑さの両方を満たすことができるのである。

グレーンウイスキーは、誕生当初は安さと飲みやすさで、その後は樽熟成による味わいの付加や二日酔いになりにくさなどをセールスポイントに拡販に努めた。しかし常に過当競争に苦しんでいた。その厳しい状況下、ジョンの業界調整が功を奏して、投げ売りや香味料混和による粗悪化などから救われたのだ。

その後、DCLはウィリアム・ロスという優れた経営者を得て、モルトウイスキーについても傘下の蒸溜所を増やして行く。そして、ついにはジョニー・ウォーカーのジョン・ウォーカー、ホワイトラベルのデュワー、ブラック&ホワイトのブキャナン、ホワイトホースのマッキーをはじめ、VAT69のサンダーソンなど数々の有名ブレンド製造会社を傘下に収め、英国一の企業規模を誇るに至る。

DCLは1900年代初頭のウイスキー不況を工業用アルコールと酵母事業という多角化で乗り越えた後、世界のスコッチウイスキー市場シェア90%という業界の圧倒的盟主として業界の安定、発展に尽くした。1985年ギネスに買収され、そのギネスはグランド・メトロポリタンと合併して現ディアジオとなった。

このディアジオが所有するキャメロンブリッジ連続蒸溜所は現在、ヨーロッパで最大規模を誇っている。1830年にこの蒸溜所を建設したのはジョン・ヘイグであり、そこに設置したのは伯父であるロバート・スタインが発明した連続式蒸溜機であったことを思うと、感慨深いものがある。

余談になるが、EU離脱についての国民投票で敗れた前首相デーヴィッド・キャメロンはキルビー蒸溜所を所有していたスタイン家の直系の子孫である。

ブレンデッドウイスキーがいかに優れているか、それを理解するには、ウイスキー関連各社が開催しているブレンドセミナーに行ってみることをおすすめしたい。行くチャンスがないという方には、自宅でも体験ができる。

私が考えたのは、ブレンデッドのティーチャーズ・ハイランド・クリームとシングルモルトのアードモアの比較試飲である。ティーチャーズはアードモアの混和比率が高いことで知られている。ブレンダーの匠の技で他に様々なモルトを混ぜているため、この二つのウイスキーの差がグレーンウイスキーのもたらす品質インパクトであると100%言い切れないものの、グレーン混和による変化の一端はつかんでいただけるのではないかと思う。

ティーチャーズは、1830年に食品商として起業したウィリアム・ティーチャーが1836年にドラムショップ(ショットバー)を開店し、その後グラスゴーで最大のドラムショップチェーンへと成長する原動力となったブレンデッドウイスキーである。

製品として発売されたのは1863年。心地よいスモーキーの爽やかさと麦のうま味が特徴で、1970年代には英国ベスト3に入るウイスキーとなった。

(サントリースピリッツ社専任シニアスペシャリスト=ウイスキー 三鍋昌春)

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