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coba、作曲の極意 傑作は風呂場に降りてくる

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

アイスランドの歌姫ビョーク、ロックバンド「U2」のボノら世界のトップスターとコラボし、代表作『SARA』やテレビ番組『おしゃれカンケイ』のテーマソング、CMソングなどでも数々のヒットを飛ばしてきたアコーディオン奏者cobaさん(58)が2017年10月、アコーディオン生産地として知られるイタリア中部のカステルフィダルド市から名誉市民賞を受賞した。イタリア、フランスの著名な奏者に続く史上3人目の快挙だという。デビュー26周年を迎えたcobaさんにアコーディオンとの出合いやイタリア留学、師匠との交流、作曲や演奏の極意などについて語ってもらった。

 ◇ ◇ ◇

地味な楽器を変えたい、具体的な夢が原動力に

――「アコーディオンの聖地」として知られるカステルフィダルドはcobaさんにとって「第二の故郷」だそうですね。

「18歳でイタリア留学した際、『甘い生活』『太陽がいっぱい』『ゴッドファーザー』などの映画音楽を手がけたニノ・ロータの弟子のアダモ・ヴォルピ先生の指導を最初に受けた懐かしい場所です。アコーディオンの大手メーカーがあるし、知人も多く、何度もコンサートを開いてきたので深い縁を感じます。これまで由緒ある名誉市民賞を受けたのは『アコーディオンの詩人』と呼ばれたイタリアのマルコ・シニョーリ、フランスの巨匠リシャール・ガリアノのたった2人。大変に名誉なことで、家族の一員として認めてもらったような気がします。決して歩みを緩めることなく、さらに新たなアコーディオンを世界に広げてほしいと激励されたと受け止め、努力を重ねてゆきたいと考えています」

――アコーディオンと出合ったきっかけはいつ、なんだったんですか。

「父はアコーディオンが唯一の趣味で、僕が小学校のときに小さなアコーディオンを誕生プレゼントとして買ってきてくれました。それが最初のきっかけです。当時は老人向けの地味な伴奏楽器というマイナーなイメージだったので、それほどうれしいわけでもなく、半年ほどケースに入れたまま放置していました。ところが、ある日、何気なく触って音を出してみたら、思わず息をのみました。音の振動が体にビンビンと伝わってくるんです。指先のみが楽器に触れるピアノと違い、体との接着面積が圧倒的に大きい。大切な人を抱きしめるような感覚で体にピッタリと密着させ、呼吸をするようにジャバラを動かしながら音を出す。そんな生き物のようなアコーディオンの魅力にすっかり取りつかれてしまいました」

――なぜプロ奏者になろうと決意したのですか。

「『地味なアコーディオンの運命を変え、格好いいロックスターのようにしたい』と思ったからです。中学から高校になるとピンク・フロイド、イエス、エマーソン・レイク・アンド・パーマーなどのプログレッシブ・ロックに夢中になりましたが、アコーディオンでそれをやりたいと考えていた。ボーカルの部分をアコーディオンで歌うという発想です。自分が弾くアコーディオンの音色に観客が総立ちになり、拳を突き上げ、口笛を吹き鳴らしながら狂喜乱舞している……。そんな新しい音楽を創造したかった。その目標にどうやったらたどり着けるのかは見当もつかないけれど、『自分はこうなりたい』という夢の映像だけはやたらに具体的だった。それが音楽人生の大きな原動力になりました」

「海外に行け」と一喝、演奏は「成功体験の積み重ね」

――高校を休学して18歳でイタリアに留学しましたね。

「転機は高校2年の夏休み。ミュージカル『若きハイデルベルヒ』で端役としてアコーディオンを伴奏する機会があり、その打ち上げ会で音楽監督だった山本直純先生から『将来は何をやりたいの?』と聞かれたんです。実は僕はまだ深く考えていなかったので『将来はアコーディオン奏者として食べてゆきたいですが、とりあえずは有名音大にでも入学して音楽を勉強しようかなと思っています……』なんて曖昧に答えてしまった。すぐに『バカモーン!』と雷を落とされました。『学歴や世間体なんて気にするな。アコーディオンを学びたいなら日本にいてもダメだ。すぐに海外に行け』というわけです。その一喝で目が覚めました。心配する両親をなんとか説得し、アコーディオンの本場イタリアに留学することに決めました」

 ――本場で印象に残っていることは何ですか。

「ベネチア近郊にある欧州屈指の名門ルチアーノ・ファンチェルリ音楽院でボスケルロ学長から指導を受けた経験です。そこで『偉大な演奏家になるには、良い演奏をしたという成功体験をいかに積み重ねるかが重要』と教わり、目からうろこが落ちました。1回しかない本番でベストの演奏をするには、成功体験を何度も繰り返すしかない。失敗体験をいくら繰り返してもダメなんです。単純明快で説得力がありました。だから、ひたすら練習するしかなかった。おかげでグングンと腕が上達し、音楽院を首席で卒業。ウィーンで開かれた世界アコーディオンコンクールでは優勝することもできました」

『SARA』が降りてきた瞬間、リラックス・無意識…

――日本に帰国後の1992年、『SARA』などを収録したアルバム『シチリアの月の下で』が日本レコード大賞特別賞を受賞します。

「作曲とは不思議なもので、練りに練って七転八倒しながら作り上げるものもあれば、何気ない瞬間にハッとひらめくものもある。最初のヒット曲『SARA』は、自宅の風呂場の脱衣場で鏡を見ているときに突然、天から降りてきました。『シュー、ヒュッ』とトンネルを抜けた瞬間のような感覚です。まず降りてきたのがAメロ。『これは尋常ではないぞ』と直感したので、すぐに紙を取り出して五線を描き、急いでそこにメロディーを書き付けました。なぜか傑作と思う曲の7~8割はシャワーを浴びているときに降りてくるようです。おそらく心身がリラックスしているからでしょう」

――突然、風呂場で曲がひらめいたらその処理に困りますね。

「そうなんです。『やった。傑作ができたぞ!』なんてつい油断すると、大切なメロディーを忘れてしまう。それが原因で傑作をかなり逃してきました。そんな失敗談をラジオ番組で話していたら、リスナーの方が風呂場に置けるホワイトボードを送ってくれたんです。これなら傑作を忘れないうちにメモできるだろうと……。ところが、風呂場にそのホワイトボードを置いた途端、ピッタリと曲が降りてこなくなってしまった。妙なものですね。いくらホワイトボードを眺めていても、まったく傑作が降りてくる気がしない。やはり無意識でないとダメなようです。だから、なるべく気にしないようにしています。たとえ忘れても形を変えてまた現れるだろうと考え、自然体でいるように努めています」

人は多様だから面白い、新しいオペラに挑戦

――座右の銘はありますか。

「『人は人を呼ぶ』ということ。正確に言うと『人は多少のノイズを伴い、人を呼ぶ』ということ。必ずしも呼ばなくてもいい人まで勝手に集まってきますからね。だからこそ人生は面白い。人間は多様です。他人と違うから魅力があるし、価値もある。それが文化なんです。最近、異なる他者を許容しないムードが強くなってきているのは危うい兆候だと思います。文化だけでなく、政治も経済も、すべて人間の生きざまにほかならない。移民問題も、宗教・民族問題も、多くの戦争の原因は人間の多様性を許容する精神を持つことである程度は緩和できるのではないでしょうか」

「自分が何者なのか。そして、自分はどこからどこに行こうとしているのか……。それを探し続けるのも自分の使命だと考えています。もし自分の正体が完全に見えてしまったら、それはアーティストとして音楽活動をやめるとき。僕がいつもボーダー柄のシャツを着てるのは、国境や既成概念の枠を越えて旅を続ける気持ちを込めているから。そうした精神的な遺伝子を様々な形で次世代に引き継ぎ、楽器にも音楽にも、いつまでも新たな風を吹き込むことができたらとても幸せです」

――今後の音楽活動の目標は。

「2つあります。1つはこれまで体験したことのない空間・様式で新しいオペラを作りたい。僕が尊敬する武満徹さんが晩年、オペラに意欲を見せつつも結局、完成させることができなかったことを考えると、その思いがますます強くなってきます。オペラはやはり避けては通れない気がする。音楽性はもちろん違いますが、5年以内には自分なりに挑戦してみたい。もう1つは99年からプロデュースしている音楽や芝居、舞踏を組み合わせた実験イベント『テクノキャバレー』をパリでも公演すること。世の中には様々な感情や欲望があり、常に人間模様はドロドロしたものです。そんな世界を風刺的にうまく表現できたら面白いなと思っています」

 coba(本名=小林靖宏)
 アコーディオン奏者・作曲家。1959年長野市(松代町)生まれ。18歳でイタリアに留学し、ルチアーノ・ファンチェルリ音楽院アコーディオン科を首席卒業。80年世界アコーディオンコンクール優勝。92年『SARA』を収録したアルバム『シチリアの月の下で』で日本レコード大賞特別賞。人気歌手ビョークの世界ツアーなどに参加。映画、CM、テレビの音楽も多数手がける。

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