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2020フォーラム

「日常体験」望む外国人 民泊人気、シニアも担い手に 第2回日経2020フォーラム、エアビー日本法人社長らパネル討論

2017/12/7 日本経済新聞 朝刊

日経2020フォーラムのパネル討論に登壇したパネリストら(11月9日、東京・大手町)

 日本経済新聞社が11月9日に開いた「第2回日経2020フォーラム」では、インバウンド(訪日外国人)をテーマにしたパネル討論も行った。基調講演で登壇した東京海上日動火災保険の北沢利文社長に、米エアビーアンドビーの田辺泰之日本法人社長、東北風土マラソン&フェスティバルの竹川隆司代表理事、元競泳選手の伊藤華英氏が加わり意見交換した。司会はキャスターの小谷真生子氏が務めた。

エアビーアンドビー日本法人社長の田辺泰之氏(11月9日、東京都大手町)

 小谷 宿泊施設不足が課題の中、エアビーアンドビーが日本に進出して3年になりますね。

 田辺 自分の部屋を旅行者に開放する「民泊」サービスを提供しています。国内の登録物件は約5万8千件で、2016年は約250万人が利用しました。アクティブシニアの登録が伸びています。

 小谷 東北風土マラソン&フェスティバルは、東日本大震災からの復興のために14年に立ち上げられたそうですね。

 竹川 今では7千人規模になりました。走りながら食事を楽しめることが特徴です。フランスのシャトーの間を走り、給水場でワインが出てくるメドックマラソンをモデルにしています。初回の外国人参加者は2人でしたが、中国語でのエントリーを始めたらアジアからの参加が増えました。

元競泳選手の伊藤華英氏(11月9日、東京都大手町)

 小谷 五輪に2大会続けて出場した伊藤さんは20年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の広報を担当されています。

 伊藤 19年からの「ゴールデンスポーツイヤーズ」は経済効果やスポーツ産業の発展を生みます。世界のスポーツファンは「日本が何をしてくれるのだろう」と注目しています。

 小谷 政府は20年に4000万人の訪日客を目指しています。ニーズは変わっていますか。

 田辺 体験や日常生活を垣間見る「コト消費」が人気です。日本は観光資源が多く、上手に「おもてなし」を提供できる人もいるので、とても相性のいい旅のスタイルだと思います。

 北沢 日本は高齢化で地域が廃れると悲観的に思っている人は多いですが、素晴らしい文化があります。外国人に向けて、どんどん発信していく必要があります。

東北風土マラソン&フェスティバル代表理事の竹川隆司氏(11月9日、東京都大手町)

 竹川 こんな事例もあります。東北の農家に外国人が来ることになり、ベッドを借りました。でもその外国人はすぐに「布団はどこ?」と聞いたんです。日常を体験したいのだと実感しました。

 北沢 文化交流で摩擦は必ず起きます。でもそれを嫌ったら誰も来ません。お互いに助け合うことが大切で、私たちはそのためのサービスを開発していきます。

 田辺 民泊の根底にあるのもお互いを尊敬し合うことです。ホストは一応マニュアルを作りますが、「ノー、ノー」ばかりでは面白くない。地元に溶け込んだ形で生活を楽しめるといいですね。

 伊藤 今はハード面で成長した1964年の東京五輪と状況が違います。運動だけでなく、見て楽しむこともスポーツだということが広まっていけばいいです。

司会を務めるキャスターの小谷真生子氏(11月9日、東京・大手町)

 竹川 我々のマラソンに来た外国人に「これおいしいね」と言われ、地元の農家が東京や海外に進出する動きも出始めています。

 伊藤 モノや情報があふれる時代になぜ日本が東京五輪・パラリンピックなどの大きなスポーツイベントを開くのか。世界から試されていると思います。

 北沢 我々も海外の人たちの考え方を理解することで、もっと相互に成長できるはずです。幅広い考え方を身につけることが大イベントのレガシーにもつながるのではないでしょうか。

◇  ◇  ◇

■目指せ心の「開国」、オリパラ契機に

 20年五輪・パラリンピックに向けて、日本の社会にはたくさんの変化が起きている。だれもが最も実感しているのが急激なインバウンドの増加だろう。

 東京大会が決まった13年に初めて1000万人の大台を超えたのが、17年には2800万人を超える見通しだ。政府は20年に4000万人の目標を掲げる。3年後に控えるビッグイベントの存在だけがインバウンド増の理由ではないが、日本を「開国」に向かわせるきっかけになっているのは間違いない。

 今では東京や大阪など大都市や有名観光地だけでなく、地方でも当たり前のように外国人客の姿を見かけるようになった。異文化との日常的な接触は思わぬリスクも生む。居酒屋の「お通し」がもめ事の原因になることも珍しくないそうだ。

 東京海上日動は顧客にトラブルに対応するための通訳やコンサルタントサービスなども提供するという。北沢社長は「文化の交流による摩擦を嫌がってはだれも来ない。そうならないようにみんなで助け合うことができる仕組みが大切です」と訴える。

 大事なことは日本を訪れた人々にリピーターになってもらうこと。パネル討論の登壇者からは「飾らずありのままのわれわれの姿をみせればい。われわれが気付いていない日本の魅力はたくさんある」という発言が相次いだ。

 島国で内向きになりがちとされるナイーブな日本人。だが、人も情報も軽々と海を越える時代だ。いや応なく変化を求められているこの国に、五輪とパラリンピックがやって来る。

(編集委員 北川和徳)

[日本経済新聞朝刊2017年12月7日付を再構成]

 11月9日の「第2回日経2020フォーラム」では東京五輪・パラリンピック組織委員会の御手洗冨士夫名誉会長(ラグビーワールドカップ組織委員会会長)、東京海上日動火災保険の北沢利文社長、小池百合子・東京都知事による講演会もありました。記事はこちら(「五輪が導くインバウンド新時代 日本、躍動する好機に」)をお読みください。またフォーラム全体の模様は、日経が運営する映像コンテンツサイト「日経チャンネル」(http://channel.nikkei.co.jp/businessn/171109tokyo2020/)でご覧いただけます。

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