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身近な人が過労でうつに どうサポートすればいい? 知っておきたい過労死の実態と防止策(下)

日経Gooday

2017/12/11

兆候に気づいたら、本人の話をまず聞いてあげる。そして、うつ病と診断されたら「温かな放置」の気持ちが大切だ(c)Antonio Guillem-123rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

 前回「仕事が原因のうつ病が増加傾向 自殺の9割以上は男性」では、うつなどの精神障害により自死(自殺)するケースが増えていることや、具体的にどんな出来事が背景にあることが多いかについて紹介した。では、もし自分自身や身近な人が同じような状態になったとき、私たちはどう行動すればいいのか。過労死の実態や要因などについて調査研究を進めている労働安全衛生総合研究所 過労死等調査研究センター 統括研究員の吉川徹さんに伺った。

■「死ぬくらいなら、仕事を辞める」ができない理由

――精神障害事案のうち、約2割が自ら命を絶つ選択をしています。自殺の報道を耳にすると、「死ぬくらいなら、仕事を辞めればよかったのに……」「誰かに相談すればよかったのに……」と思う人も多いと思いますが、なぜ、それができないのでしょう。

 いわゆるうつ状態が考え方の視野を狭め、正常な判断をできなくさせているからです。うつ病から回復した人たちは、「どうしてあのときは死にたいと考えていたのか分からない」と話すことがありますが、それほど精神的に追い詰められて、逃げることもできなくなってしまうんですね。そうした状態では、心配する周囲の声も耳に入らなくなり、ますます負のスパイラルに陥っていく。そこで適切なサポートが得られないと、自殺を考える人も出てきます。

――「適切なサポート」とは、具体的にはどんなことでしょう。また、どんな兆候が見られたときに、サポートが必要になるのでしょうか。

 うつ状態の兆候には、思考力や集中力の低下により仕事のケアレスミスが増える、重要な決断ができなくなる、気分の浮き沈みが激しい、慢性的な疲労や気力の減退がある、食欲の増減や睡眠に関する問題を抱えているなどがあります。

 そうした兆候に気づいたときには、本人の話をまず聞いてあげることが大切です。不眠が続いている、体調が悪い、いつもの仕事ができていない、表情や行動が以前と明らかに違うなどの場合は、「あなたのことが心配だから」「最近、こんなふうに変わったよ」と声をかけ、心療内科や精神科などの医療機関への受診を勧めます。

 もし、大切な人がうつ病と診断されたら、「温かな放置」の気持ちが大切です。つまり、あれこれと声をかけるよりも、そばにいる時間を増やして見守るのです。不安などを打ち明けてきたときは聞いてあげることが大切ですが、元気づけようと「頑張って」などと声をかけたり、無理に外へ連れ出そうとしたりすると、さらに追い詰めてしまうことがあります。うつで療養している人には、よかれと思って口にした本音も思っている以上に響くものなので、回復までは本音は控えたほうがよいでしょう。

 もし医療機関につながっていないときに、「死んでしまいたい」「どこかに消えてしまいたい」といった言葉を口にするようになったときは危険です。よく、「『死にたい』という人に限って死にはしない」などとうそぶく人がいますが、それは大きな間違いです。「死にたい」と口にするのは「助けてほしい」というメッセージですから、全力でサポートすべきです。その際には、真剣に本人の話を受け止め、本人の困っていることを具体的に聞き、自殺の危険が去るまで、本人を一人にしないことなどが重要です。

■うつ状態に陥る前のセルフケア、職場づくりが重要

――自分でうつ状態の心配があるかどうかを判断する方法はありますか。従業員が50人以上の事業所では「ストレスチェック制度」が導入されていますが、このストレスチェックも有効でしょうか。

 ストレスチェックを受けて自分自身の心の健康状態に気づき、セルフケアにつなげることが重要です。ストレスチェックは仕事についての負担、心身の自覚症状、周囲のサポートの3つの観点による57の質問に答えると、ストレスのレベルが分かります。そこで高ストレスが示された場合は、自身や職場ぐるみで対処していくことが大切です。

 ストレスチェックは1年に1回以上の実施が義務付けられていますが、そのときの仕事の状況によっても結果は変わります。また、従業員が50人未満の事業所では実施されていないこともあるでしょう。その場合は、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」(http://kokoro.mhlw.go.jp)[注1]に設置されている「5分でできる職場のストレスセルフチェック」(http://kokoro.mhlw.go.jp/check/)で同様のストレスチェックが可能です。定期的に実施してみて、自分のストレスの傾向を把握しておくといいでしょう。

――ストレスが高まっている状態のときは、対処が必要だと分かっていても、休むに休めない状況であることが多いと思います。そうした中でも、何かできることはありますか。

[注1]平成29年度(2017年度)の厚生労働省委託事業として、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が開設。

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