精神障害の労災認定でも、以下の3つの要件を満たすことが必要です[注2]。
(1)認定基準の対象となる精神障害を発病していること
(2)認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6カ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
(3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
(1)の認定基準の対象となる精神障害は、ICD-10(国際疾病分類第10回修正版)第5章の「精神および行動の障害」分類に基づいて判断されます。(2)の業務による強い心理的負荷は、「業務による心理的負荷評価表」に基づき、極度の心理的負荷や長時間労働が認められる「特別な出来事」のほか、「具体的な出来事」の強度によって検討されます。公正かつ客観的に評価するため、本人だけでなく、職場の上司や同僚などへのヒアリングも行われます。
具体的な出来事は、「仕事の失敗、過重な責任の発生等」「対人関係」など6つの類型に分かれた36項目がありますが、男性では「恒常的な長時間労働」、女性では「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」が最も多く、女性では「セクシャルハラスメントを受けた」が多いのも特徴です。ほかに「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」や「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」というケースも男女に共通して多く見られます。
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仕事が原因のうつなどの精神障害や自殺が増えていること、その背景には恒常的な長時間労働や事故・災害への遭遇、セクハラ、いじめなどがあることは分かった。では、もし自分が、あるいは自分の身近な人が同じような状況にあるとき、私たちはどう行動すればいいのだろうか。それについては最終回で紹介する。
※前回の記事は「過労による突然死 40~50代男性がリスク大」
[注2]厚生労働省「精神障害の労災認定」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120215-01.pdf

(ライター 田村知子)