愛光が創立されたのは1953年。戦後生まれで、名門進学校の中ではそれほど古い学校ではない。イタリアのローマに本部を置くカトリック系の聖ドミニコ修道会が母体だ。外国籍の神父が多く在籍して「生きた英語が学べる」と評判になった。「創立当初は同じカトリック系の栄光学園(神奈川県鎌倉市)を手本にしました」(中村校長)。現在も理事長はスペイン人、外国籍の神父も5人ほどいる。

松山市の中心街にも近い松山東高校

松山といえば、俳人の正岡子規が学び、その親友の夏目漱石が教師として教えた旧制松山中学(現在の愛媛県立松山東高校)が有名だ。1878年創立の名門校。司馬遼太郎の「坂の上の雲」に登場する秋山真之(海軍中将)も同中学で子規の親友だった。同中学からは多くの俳人や文学者が輩出、戦後は高校になり、ノーベル文学賞を受賞した大江健三郎氏らも卒業した。現在の松山東高は県立では進学実績トップの高校だ。

子規、漱石生誕150年 俳句甲子園競う

愛光は地元のライバル校といえる存在だが、松山東高の石崎学校長は「愛光は私立の進学校ですからね。うちは愛媛では一番古く、伝統校とはいえますが。今年は子規、漱石生誕150年なので地元で盛り上がっています。愛光とは、『俳句甲子園』などでは競い合う仲ですね」という。1998年に誕生した高校生の俳句の全国大会だ。中村校長は「愛光も優勝経験がありますが、松山東には当時の俳句のメンバーだったうちの生徒が今、国語の教師でいます。切磋琢磨(せっさたくま)しながらやっていますが、最近は開成高校に優勝を持っていかれていますね」と話す。

愛光の卒業生には、皇太子妃雅子さまの主治医として知られる大野裕氏など圧倒的に医師が多い。政策研究大学院大学元学長の白石隆氏などの著名な学者が少なくないが、経済人の代表格は三井物産社長の安永竜夫氏だろう。役員序列で32人抜きで社長になったことで話題になったが、指名した現在会長の飯島彰己氏は、くしくも愛光のモデルになった栄光学園の出身。飯島氏は「栄光では欧米出身の神父さんに学び、海外に関心を持つようになった」という。

愛光中学・高校の中村道郎校長

中村校長は「安永さんは明るくて豪放磊落(らいらく)。同窓会をやると彼の周りにみんな集まる」という。もともと愛光は国際派リーダーの養成にも力を入れている。ドミニコ修道会の世界中の学校のネットワークも活用。台湾やスペイン、イタリアなどで海外研修をしたり、交換留学をしたりしている。

地方都市にある愛光は地の利という面では明らかに不利。大都市圏より早く少子化の影響も受け、男女共学としたのもそれが一因だ。一方で「寮生活で勉強も鍛えられたが、仲間とケンカしたり、遊んだりしながら、人間関係も学んだ」(愛光OB)というように大都市圏の進学校では得られない貴重な経験を積むことができる。文学の街から有能な人材が世界へ飛び出していきそうだ。

(代慶達也)

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