お気に入りの動画配信は? Netflix 対 Amazon動画配信サービス最前線(上)

動画配信サービスにはどんな違いがあるのか、4社を訪ねた。今回取り上げるのはNetflixとAmazonプライム・ビデオだ
動画配信サービスにはどんな違いがあるのか、4社を訪ねた。今回取り上げるのはNetflixとAmazonプライム・ビデオだ

時間がある年末年始は、映画やドラマなどをじっくり楽しみたい。そこで気になるのが、日本でも存在感を増している動画配信サービスだろう。ただサービスの種類も多く、どのサービスを選ぶかで迷っている人も多いのではないか。「そんなときはサービスの成り立ちやビジネスモデルを知ることが重要」とアドバイスするのは「キネマ旬報」元編集長の関口裕子さん。そこでNetflix、Amazonプライム・ビデオ、AbemaTV、GYAO!を訪ね、それぞれが描くビジネスモデルを聞いていく。まず取り上げるのは、日本以外でもサービスを展開するNetflixとAmazonプライム・ビデオだ。

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サービスの成り立ちや思想を比較する

「お気に入りの『動画配信サービス』って何?」

そう尋ねられて答えることはできるだろうか。黎明(れいめい)期はとうに過ぎ、一般層への普及段階にシフトしてきているにもかかわらず、各サービスごとのイメージは画一的だ。しかし実際は、動画配信サービスも各サービスごとに独自性が出てきている。それぞれの歴史やサービス思想を知ることで、ユーザーは自らのライフスタイルにあわせた選択ができるようになるはずだ。

そこで今回、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、AbemaTV、GYAO!に取材した。価格や機能面の比較では推し量れない、もう一つの指針としてここに紹介したい。

高画質&高音質にこだわるNetflix

オンラインのDVDレンタル、販売サービスとして1997年に米国で設立されたNetflix。格安な定額料金でDVDを無制限にネットでレンタルできるサービスで急成長を遂げ、2007年に米国で動画配信サービスをスタートした。サービス提供国を徐々に増やし、15年9月から日本でもサービスを開始。会員数は17年6月時点で世界1億400万人を突破している。

Netflix広報担当の中島啓子さん

Netflixは、ソフトウエア起業家であったリード・ヘイスティングスとマーク・ランドルフが共同で創業したこともあり、テクノロジー企業としての側面を強く持つ。広報担当の中島啓子さんによると、「いわゆる動画配信サービスというよりは、テックカンパニーとしての知名度がアメリカでは既にありました。今でも全社員の半数以上が技術畑の人間なので、プロダクトの使いやすさへの投資は続けています」と説明する。

テックカンパニーであることを最も印象づけるのが、テレビリモコンに搭載された物理的なボタンではないだろうか。現在発売されているソニー、シャープ、東芝、パナソニックなど大手メーカーのテレビリモコンには、「NETFLIX」と記されたボタンがある。他社の動画配信サービスではみられない試みだ。

日本の大手メーカーのテレビリモコンには「NETFLIX」ボタンが搭載されている(写真はソニーのテレビリモコン「RMT-TX101J」)

「100%ではありませんが、日本でのサービス開始前からボタンを付けていただきました。日本のメーカーだからというわけではなく、グローバルで信頼関係が得られ、一緒に開発できる相手であったからです。また、Netflixではできる限り4KやHDRで配信しているのですが、世の中ではまだまだそういった高画質コンテンツの数が不足しているのが現状です。そこで、Netflixが4KやHDRに対応したコンテンツを今後も配信を続けていくという期待もかけていただき、メーカー各社にボタンを付けていただくことができました」(中島さん)

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Netflixが会員だけに作品リストを見せる理由