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アマゾンの強さ ブランド戦略なきブランド力 前刀禎明の「モノ売る誤解 買う勘違い」

日経トレンディネット

2017/12/24

その点アマゾンは、サービスを目的に製品を開発しているわけですから、決して技術自慢に陥らない。技術の高さよりも、その製品で自社のサービスがどのように使えるかをアピールします。だからこそ、あっと驚く製品が生まれたりします。

実験中のレジ不要の食料品店「Amazon Go」もそうです。買い物客は商品を手持ちのバッグなどに入れて店を出るだけで決済ができる。まだ技術的に課題はあるようですが、無人レジを開発する考え方よりも、顧客の求めにまっすぐ応える発想になっていると思います。

■可もなく不可もなく、全部やる

3つ目が「超」が付く生活密着です。アマゾンは、先に挙げたようなハイテク事業も手掛ける一方、生活にとても近い分野の事業も持っています。食品や日用品、衣料品。自社ブランドの製品系列には電池やケーブルもあります。

普段の生活では、品質が圧倒的に優れているかはさほど問題ではなく、可もなく不可もないレベルの製品でいいから、アマゾンという信頼感のあるECサイトから便利に買いたいというシーンが、いくらでもあると思うんです。これだけそろっていれば、さまざまな小売業者のECサイトを個別に利用するより、「アマゾンでいいか」という気になりますよね。いまや、アマゾンなしでは生活できないという人もいるのでは。

そして、この「アマゾンでいいか」の範囲をどんどん広げてきました。「アマゾンファッション」も、立ち上げの頃(2007年)は「アパレルを扱うなんて本気?」という反応が大勢を占めましたが、いまや急成長中のカテゴリーで、出店ブランドも拡充しています。Kindleも当初(2007年)は「通販会社が作るハードなんて」と否定的に見られていたけど、2012年には高性能な「Kindle Paperwhite」が出て、形もだんだん洗練されてきました。

電子書籍リーダー「Kindle」は10月に発売された最上位機種「Oasis」でIPX8等級の防水機能を装備。お風呂などでも読めるようになった

米国での報道によると、アマゾンは自社ブランドのスポーツウエア生産を始めると言われています。自社ブランドも「ちょうどいい」んですよね。安っぽくはなく、高すぎることもなく。アマゾンブランドのスポーツウエアを着ることに、恥ずかしさや抵抗感を覚える人は少ないんじゃないでしょうか。特別かっこよくはないかもしれないけど、ダサくはない。十分、着られる。うまい立ち位置を見つけたと思います。

17年8月末には食品小売のホールフーズ(米Whole Foods Market)を買収しましたが、あれもいい会社を買ったものだと思います。ヘルシー、高級といったイメージで若い世代にも人気のスーパーです。買収先の選び方も含め、少しずつ上手にイメージを押し上げてきています。

■アマゾンが培ってきた創造的知性

取り扱い製品の手広さには、品ぞろえの良さで売り上げを伸ばすといった直接的な効果以外にも利点があると僕は思っています。私は皆さんに「創造的知性」を身に着けてもらいたいと思っています。創造的知性を養うプロセスは、観察、質問(仮説を立てたり自問自答したりする)、実験、意見交換、関連づける、この5つです。アマゾンは企業として、この「関連づける」力が伸びてきた気がします。

これは経験則ですが、関連づける力を高めるには、あまり頭の中を整理しすぎないほうがいいんです。気になったことを、頭の中のどこかにきっちり収めてしまうと、何かあったときに取り出して関連づけることがしにくいんですよね。ひらめかない。だから、ひとたび課題を持ったら、頭の中でうっすらとでもいいので考え続けることが大切です。情報や課題を死蔵させないで、アクティブな状態にしておく。そうすれば新しい情報や課題が入ってきたときに、ぱっと結びついたりします。

アマゾンは、ありとあらゆるものをECの対象とし、物流はじめ、さまざまなサービスに取り組んできました。そうやって「なんでも」やってきたことで、何かと何かを関連づけて新しいものを生み出す土壌を、無意識にでも築いてきたんじゃないかと思います。

■ブランド戦略なき会社のブランド力

冒頭で、アマゾンはマーケティング、ブランディングに成功していると書きましたが、実は狭義の「ブランド戦略」を持たない会社だと思います。ここでいうブランド戦略は、自分たちの会社や製品系列が外からどのように見られたいかを決めて、それに近づけるための施策を考えるようなことです。

実質本位といいますか。商品送付用の段ボール一つ取ってもそうですよね。段ボールに黒文字のロゴ。シンプルさを追求したデザインというよりは、コストとの兼ね合いでああなった感があります。コスト効率のため、箱の種類が絞られているから、(段ボール内に空きが生じて)空気も一緒に運んでくるのは難点ですが(笑)。

アマゾンが企業理念としているのは、よく知られる通り、「地球上で最も豊富な品ぞろえ」と「地球上で最も顧客を大切にする」の2つです。自前であそこまでの物流網を構えているのも、顧客中心主義の表れです。最近はイメージ重視のテレビCMもやっていますが、元来、あの会社はイメージのために何かする体質ではないのだと思います。それよりも、ユーザー自身が同社のサービスを利用した体験が、結果的にアマゾンのイメージやブランドを形作っているのです。

ウォルト・ディズニー・ジャパンに勤めていたときに聞いた話ですが、「Disney」というロゴを見ると、まだ字が読めない小さな子どもでも機嫌がよくなったりするそうです。文字をパターンとして認識して、自分の中の楽しかった体験と条件反射的に結びつけているんでしょう。あのレベルには及びませんが、ユーザーの体験がブランドにつながっているという意味では、アマゾンに関しても近いことが起こり始めているように最近は感じます。

(構成 赤坂麻実)

[日経トレンディネット 2017年11月6日付の記事を再構成]

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