かかとガサガサ、爪が白濁 放置に注意、慢性水虫かも
水虫は白癬(はくせん)菌による感染症。指の間がただれたり、足裏に小さな水ぶくれができたりする水虫はかゆみが強いが、かかとが分厚くガサガサになる「角質増殖型(かかと水虫)」や爪が白濁したり変形したりする「爪白癬(爪水虫)」にはかゆみの症状がない。
そもそもかゆみや水ぶくれが起こるのは、皮膚に入った白癬菌を排除しようという生体反応。ところが、何年も水虫を治さないままでいると、体が菌と共存し、排除しようとしなくなる。かかと水虫と爪水虫は、このタイプ。「指や足裏で増殖した白癬菌が、かかとの角質や爪に移りすんでしまう」と仲皮フ科クリニックの仲弥(なか・わたる)院長は話す。いわば年季の入った慢性化した水虫だ。かゆみがないからと放置していると、白癬菌をばらまいて他の人にうつしてしまうから、この際、しっかりと治しておこう。
そこで重要なのが、正しい診断だ。かかとのガサガサや爪の白濁・変形は、他にも似た病気があり、「皮膚科医ですら見た目だけでは鑑別が難しい」(仲院長)。別の病気なのに自己判断で市販の水虫薬を塗り、症状を悪化させる人も多いという。
皮膚科を受診し、必ず顕微鏡検査を。診察室で患部を少し採取して白癬菌の有無を確認する。10分ほどで結果がわかる。「皮膚科専門医のいる医療機関を選ぶといい。各地の専門医は日本皮膚科学会のウェブサイトで検索できる」と仲院長。
治療は、抗真菌薬を用いる。かかとは角質が厚く、薬を塗っても浸透しにくいので、のみ薬が有効。テルビナフィン(商品名ラミシールほか)とイトラコナゾール(商品名イトリゾールほか)の2種類があり、約2カ月間服用する。肝機能障害などの副作用が表れることがあるので、定期的な血液検査が必要だ。
爪水虫でもこれらののみ薬を3~6カ月間服用するのが基本だが、数年前に爪水虫専用の塗り薬が登場。「軽症の場合は塗り薬を処方する」(仲院長)。爪が生え変わるまで約1年間、根気強く塗り続ける。
セルフケアも重要だ。同じ靴を続けて履かない、スリッパやマットを共用しない、家に帰ったら足を洗うといった点を心がけて。不特定多数の人がはだしで歩く場所には必ず白癬菌がいるが、皮膚に付着しても24時間以内に洗えば感染はしない。「軽石でかかとをゴシゴシこすったり、先の細い靴を履いて爪が変形したりすると、菌が侵入しやすくなるので要注意」と仲院長。
また意外な落とし穴がペディキュアだ。爪が密封状態になり、菌が増殖しやすい環境になる。ペディキュアを落としたら、感染して爪が真っ白になっていたという例もあるという。感染を防ぐには、体力を落とさないよう疲れをためないことも重要だ。
仲皮フ科クリニック(埼玉県川越市)院長。1977年、慶應義塾大学医学部卒業。同大医学部皮膚科専任講師を経て、1996年から現職。埼玉医科大学皮膚科兼任講師も務める。専門は真菌症。95年度日本医真菌学会奨励賞受賞。
(ライター 佐田節子)
[日経ヘルス2018年1月号の記事を再構成]
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