女性の政治進出にも「クオータ制」を もう待ったなし
ダイバーシティ進化論(村上由美子)
ビジネス界の女性幹部に、役職の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の是非を聞いてみると、意外に反対派が多い。私も心情的に抵抗感がある。米投資銀行で昇進した時、女性だからげたを履かせてもらったと言われぬよう、同僚の男性以上に働こうと思った。適材適所でなければ、活躍している女性リーダー達に失礼だという考え方には同意する部分が多い。
しかし、そんな悠長なことを言っている余裕が日本にはないと思い始めた。先日発表された2017年の世界経済フォーラムによる男女平等ランキング(ジェンダー・ギャップ指数)で、日本は144カ国中、過去最低の114位となった。特に足を引っ張った政治分野は123位。衆議院選挙後の女性議員比率、内閣女性大臣比率はともに10%で世界最低レベルだ。産業界の手本となり、女性活躍を先導すべき政界がこのありさまでは話にならない。
上塗り対策では現状打破は望めない。政界の女性進出に関しては、一定程度のクオータ制の導入以外に即効性のある対策は見あたらない。例えば、候補者の男女比率に一定の割合を暫定的にでも設けることで、女性候補者の裾野を広げるという策は議論に値する。もちろん各政党が自主的に取り組み、自然に男女比率が改善するのが理想だが、それを待っていたら日本の女性活躍は何年経っても実現されないかもしれない。
日本にとってもう一つ気になる調査結果がある。スイスのビジネススクールIMDが発表した世界人材ランキングで、外国籍の高技能人材にとって日本はアジアで最も魅力のない国とされた。言葉の壁や閉鎖的なビジネス環境が理由に挙げられる。
高技能外国人材の永住権申請条件を緩和した日本政府だが、優秀な外国人に最も重要なのは性別、国籍、価値観などが足かせにならず活躍できる環境。政界、ビジネス界ともにトップはほぼ全員日本人男性。そんなモノカルチャーの日本は優秀な外国人の目には魅力的に映らないのであろう。
人材獲得のグローバルレースから取り残された日本。人口減少も待ったなしだ。時間はない。まずは政府が結果を伴う政策を迅速に導入し、女性活躍推進がプロパガンダだけでないことを証明すべきだ。国会議員のクオータ制の効果について未知の部分は多いとはいえ、その是非については真剣に議論すべきだろう。
経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。
[日本経済新聞朝刊2017年12月4日付]
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