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子育て女性、成長求め転職 「職場の配慮」が逆効果

2017/12/5 日本経済新聞 朝刊

■前の会社の優遇に肩身狭く カジーの里田恵梨子さん

 仕事と子育てを両立しやすい会社に移りキャリアを伸ばす人もいる。家事代行のカジー(東京・千代田)に入社した里田恵梨子さん(35)は5年間勤めた屋外広告の企画制作会社を辞め、16年11月から広報担当として働く。

里田さんは家事代行を気軽に使ってもらえるきっかけをつくりたいと話す

 前の広告会社では育休復職後に広報部門の設立を任され、営業と兼務した。子どもを保育園に送り届けた後では朝の会議に間に合わず「子育て中の女性は自分一人で、なぜ優遇するのかという空気。肩身が狭かった」。帰宅後は家事に追われ「1日中保育園で待たせたのに娘を構ってあげられない。誰のために働くのか」という思いが膨らんだ。転職へ強く背中を押したのは長女(5)の「ママ、仕事を辞めて」との言葉だ。

 転職先で重視したのは家族との時間をしっかり取れ、キャリアを伸ばせること。家事代行は共働き世帯が家族とゆっくり過ごす時間を増やせるサービスであり「使命を感じる」。入社後の実績が評価されて年収も上がった。朝9時ごろ出社し夕方には長女が待つ保育園へ向かう。長女は早い帰宅に喜び、働く母を認めるようになった。

 有効求人倍率がバブル期を超え、女性活躍推進法の下で女性は転職を実現しやすい。未経験者の求人も急増している。ただ「自分のキャリアを曲げてまで転職する必要はない。流されないで」と坂爪教授は警鐘を鳴らす。

 環境の変化に期待する転職は後悔や失敗に終わりやすい。キャリアを伸ばすのに必要なのは何かを見極めることが大切だ。「抱えている不安や不満は今の職場で解決できるかもしれない。まずは上司に思いを伝えてほしい」と坂爪教授は説く。

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■企業は個人別に調整を ~取材を終えて~

 中途入社の自身を振り返ってみると、会社を変わるのは事務手続きだけでも結構な労力だった。子ども2人がいる今、目先のことで手いっぱいになりがち。「こんな忙しい時期にどうして転職?」。素朴な疑問だった。

 働く母200人を紹介するサイト「パワーママプロジェクト」の運営メンバーで、未経験のIT企業に39歳で飛び込んだ3児の母、佐藤裕美さんは話す。「働くママは悲観的に語られがちだが実像はちがう。好きな仕事と愛する子どもの両方を活力にできる人」。「時短勤務制度など子育て女性対象の働く環境の整備は大体済んでいる」とリクルートキャリア女性リーダー採用・活躍支援チームの中野裕子さんはいう。

 女性は今の職場に意欲や思いを伝えよう。企業は紋切り型の施策から、一人ひとりにあった働き方の調整を試みてはどうか。子育て女性ならではの活力が職場でもっと生きるはずだ。

(杉山麻衣子)

[日本経済新聞朝刊2017年12月4日付]

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