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ヒットの原点

「破れない和紙」でカバンや帽子 メーカー三女が奮闘 大直の和紙ブランド「SIWA」(上)

2017/12/7

大直の営業開発プロデューサー、一瀬愛さん

 和紙の産地で紙製品を作り続けてきた大直(おおなお、山梨県市川三郷町、一瀬美教社長)。著名デザイナーの深沢直人氏を起用して、「破れない和紙」をベースにカバンや帽子などをつくり、SIWAというブランドで国内外で販売、ヒットしている。地域の産品を磨き、世界のブランドへ。営業開発プロデューサー、一瀬愛さんの視点からSIWA事業の始まりを振り返ってもらった。

■SIWA事業の始まり

 今から10年以上前のことになる。両親が経営する大直で営業を担当していた一瀬愛さん(現SIWA事業部の責任者で営業開発プロデューサー)は、あることに悩んでいた。

 「当時は『めでたや』という、四季折々の行事や祭事をテーマに日本的な暮らしを提案する和紙製品を営業していました。今も大手百貨店などで扱っていただいていますが、ある年のお正月商戦では2カ月間で2000万円も売れるほどでした」

 半面、売り場が求めているものとは、ずれてきているのも感じていたという。まだ20代だった愛さん自身が欲しいかといわれると悩んでしまう部分もあった。

 「何とかしなくては」と、商品企画を担当していた専務で母親の富久美さんに提案してみたところ、「そんなに意見をするのなら、自分でやってみなさい」と言われた。そこでめでたやの商品を少しモダンにしたラインを立ち上げてはみたものの、売り上げはさえず、方向性としてもやや中途半端な気がしていた。

 そんなある日、父親である一瀬美教社長から「デザイナーの深沢直人さんに新規事業を依頼してみようかと思っている」という話を聞く。米デザインコンサルティング会社「IDEO」の出身で、独立後はパナソニックや無印良品などの製品を手がけていた深沢氏のことは、本で読むなどして知っていた(パナソニックのトイレ「アラウーノ」や無印良品のキッチン家電は深沢氏によるデザイン)。「深沢さんなら紙でどんな世界観を表現してくれるのだろう?」と期待した愛さんは、すぐに賛成。これが後のSIWA事業の始まりとなる。

■濡れても破れない紙

 東京都中央区の「東急プラザ銀座」6階にある店舗でSIWAの商品を見せてもらった。ペンケースやコインケースなどの小物から、トートバッグや出張にも使えるオーバーナイトバッグまで種類は豊富だ。価格は2000円以下と割に手ごろの品もあれば、高いものだと2万5000円ぐらいと、ちょっとした革製品並みの商品もある。素材が紙と聞くと、破れはしないかと心配になるが、見た目以上に丈夫だ。10キログラムの耐荷重テストもクリアしている。

 SIWAは漢字で書くと「紙和」になる。正式なブランド名は「SIWA|紙和」。大直が開発した「ナオロン」という、水に濡れても破れない障子紙を素材に使用している。最初に使用したのが木材パルプとポリオレフィン繊維を原料とした「ソフトナオロン」で、再生ペットボトルを使って強度を増した「RPFナオロン」を後から追加した。機械で漉(す)いてはいるものの、伝統的な和紙の製法を踏襲して製造されているため、広い意味では「和紙」に分類される。使い込むほどしわが増え、その部分が白く毛羽立ってくるので、使う人の個性に応じた経年変化を楽しむことができるのも魅力の一つだ。

 「東京・吉祥寺にある店の店長さんが妊娠したことから、代わりにアルバイトとして入ったのが始まりでした。ただ、両親が経営している会社なので、どうしても『ああしたらいい』『こうしたらいい』と意見したくなってしまう。気がついたら、自分でも意外なほどのめり込んでいました」と愛さんは言う。

 実は一瀬家には3人の娘がいて、愛さんは三女。長女の亜希子さんは現在、大直の総務・経理を担当している。二女の美香子さんはオンラインショップやデザインを担当しているが、現在は育児休業中だという。

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