「香港 贊記茶餐廳」の「海老卵炒めライス」 こうした「ぶっかけ飯」は茶餐廳でポピュラーなメニュー

「チェーン店もあって、メニュー数は小さな店でも100や150はあると思います。というのも、例えば麺類は麺の種類を選べたりするんです。それに店に材料があれば、メニューにない組み合わせでもOKなんですよ」。こう教えてくれたのは、香港に長期在住経験があり、『香港 無問題 モゥマンタイ 香港ローカルなりきり旅』(JTBパブリッシング)などの著書を持つ池上千恵さんだ。

「卵とコンビーフのサンドイッチをオーダーしたら、広東語の発音が悪かったのか、メニューにないコンビーフとポークランチョンミートのサンドイッチが出てきたこともあって。脂っぽくて参りました」と池上さんは苦笑いする。

朝早くからオープンし、繁華街などでは夜遅くまで店を開けている茶餐廳は、1日中人の波が絶えない。メニューは時間帯によって変わり、「朝食時の定番メニューは、ハムなどをトッピングしたクタクタのマカロニのスープです」と池上さんは目を輝かせて話してくれる。

香港人も多い「香港 贊記茶餐廳」では、店内メニューはまるで現地の雰囲気

マカロニスープはマクドナルドの朝食メニューにもあるほどポピュラーで、「香港人の朝食の定番はお粥だと思われていますが、マカロニスープを食べる人の方が多いんじゃないかと思うぐらい」(池上さん)。人気店には遠方からも人が訪れるらしい。

一方、「ポーローパオ」というメロンパンに似た菓子パンやフレンチトーストは、茶餐廳の代表的喫茶メニュー。「ポーロー」というのはパイナップルという意味で、上にサクサクとしたクッキー生地がのった丸いパンだ。これを上下2つに切って、間に厚く切ったバターをはさむのが最もポピュラーなポーローパオの食べ方だという。

「香港 贊記茶餐廳」でも、店頭にポーローパオや茶餐廳の定番菓子、エッグタルトが並んだケースが置かれていた。ポーローパオは各店で手作りするものらしく、ここでも毎日店で焼いている。テイクアウトする人も多いといい、1日に150~200個は出るそうだ。

ほんのり甘いメロンパンに似た「ポーローパオ」 写真はバターをはさんだもの

店内を見回すと、麺やご飯料理をオーダーしながら、テーブルにポーローパオの皿も並べている人がちらほら。ランチョンミートに卵、コンビーフなど様々な具のチョイスがあったが、池上さんに聞いた「ポーローヤオ」(ヤオは漢字では油と書き、バターを指す)と呼ばれるバター入りポーローパオを食べてみた。パンは温めてあり、サックリとしたクッキー生地とふかふか軟らかいパン生地の食感の違いも楽しく、案外さっぱりとした味わい。初めて食べるのにどこか懐かしさの漂う味だ。

他方、香港式フレンチトーストは2枚の食パンの間にカヤジャム(ココナツ、卵などを使ったジャム)やピーナツバターなどを塗り、卵液に浸して揚げたもの。これにバターやシロップをかけて食べる。いずれも恐ろしくカロリーが高そうだ。「香港では『熱気(イッヘイ)』といって、体に熱をため込むものを食べるなと言うんです。でも、言うこととやっていることが違いますよね」と池上さんは笑う。