ミシュラン星付きレストランから飲茶、屋台料理まで、食の都・香港を彩る料理は数知れない。その中で、最近日本で出店が相次ぎ話題を集めている香港ならではの飲食店のスタイルがある。「茶餐廳(チャチャンテン)」、香港式カフェレストランだ。
2015年3月に先駆けとなる「香港 贊記茶餐廳(ホンコン チャンキ チャチャンテン)」が東京・飯田橋にオープン。今年に入ってからは、「香港 華記茶餐廳(ホンコンワーキーレストラン)」が東京・市ヶ谷、渋谷、大阪・心斎橋と立て続けに店をオープンした。
さっそく「香港 贊記茶餐廳」を訪れてみた。同店のオーナー、張旻偉(チャン・マンワイ)さんは「茶餐廳は香港のあらゆるところにあって、すぐ料理が出てくるから、30分もかからずさっとご飯を食べられるんです」と言い、香港に帰った際は1日何回も利用することもあるそう。相席は当たり前で、カフェレストランというより「食堂」というイメージの方が近いのだろう。

そんなスピード重視の食処である茶餐廳ならではの麺料理が日本のインスタントラーメン「出前一丁」を使った料理。1968年発売の日清食品の「出前一丁」は、ほどなく香港でも発売され大ヒット。現地では「ブランド麺」だが、「ゆでるのに時間がかからないしね」と張さん。回転の速い茶餐廳の食材にうってつけというわけだ。
店に「出前一丁」を使った麺料理は何種類かあったが、人気だという汁なし麺に香辛料を効かせた牛肉ソースをトッピングした「サテ ビーフ麺」を食べてみた。ソースの味がしっかり浸み込んだ肉が縮れ麺によく絡まって、B級の味わいがありながら、料理として満足感のある一品だ。ちなみにサテビーフ麺は汁麺タイプが香港ではなんと朝食メニューとしてポピュラー。オムレツなどと一緒に食べるんだとか。
この茶餐廳という業態は、第2次世界大戦後に登場した「冰室(ビンサ)」と呼ばれる喫茶店がその前身。紅茶、コーヒーといった飲み物のほか、サンドイッチ(香港のサンドイッチは具が温かいのが特徴)やトーストなどのパン類が冰室の定番メニューだ。香港の経済発展とともに、メニューが限られた冰室は独特の軽食メニューを残しつつ、ご飯や麺、肉、魚料理なども取りそろえた茶餐廳に発展していった。「茶」は文字通りお茶、「餐店」はレストランの意味だ。