ちょい悪男性に憧れます
作家、石田衣良さん
「ちょい悪」な男性に憧れます。物心ついたころから不良にときめいたり、悪い雰囲気の男性ばかり好きになったりしています。家族や友人も真面目な人間ばかりなのに不思議です。将来を考えて、この憧れは心に抑え込むべきでしょうか?(兵庫県・女性・20代)
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あなたはきっと周囲にいる真面目一本やりの家族や友人に、もの足りない気もちを抱いているんですね。たぶんあなたのほうが物事を計る基準がすこしばかりゆるいのです。逆にいうと心の容量がおおきいんです。
きっと本や映画、それに音楽なんかにも幅広くふれているのではないかな。友人のあいだでは、皮肉で気が利いたおもしろい批評をする人だと見なされていることでしょう。
さて、今回は人生相談ではなく、予言としてきいてください。間違いなくそうなるはずですから。あなたがいくら危険だから、将来の安定に響くからといっても、生まれついての心の在りかたや好きなタイプの異性というのは、決して変えられません。人生を生き抜くうえで、恋愛や危険から決して逃げることはできません。どこにいってもついてくるのです。おばあちゃんになってもね。
あなたはまだ20代。これからちょい悪の魅力的な男性たちと出会い、数々の恋をすることでしょう。そのうえでうまくいったりいかなかったり、傷ついたりを繰り返すことになる。
でもね、それでも決してあなたは後悔しないと思うのです。後悔は自分が望まなかった選択によって失敗したときに生まれるものです。危険を自覚したうえで、「自分はこの人がいい」と選んだ場合、たとえ恋に破れても女性は強くて、後悔なんてしないのです。それこそ女の心意気というもの。
あなたの場合、なによりもったいないのは、こっちの人のほうが安全だからという理由で、自分の冒険心を押し殺してしまうこと。その先に待っている平凡で真面目な人生は、あなたには耐えがたいんじゃないかな。
不幸よりもっとつらいのは退屈です。ぼくは人生なんて棒に振ってもかまわないと、新卒採用を蹴って作家の道を選びました。きっとあなたと似たタイプです。あなたは恐れずに危険な恋に飛びこんでください。
ただし条件がひとつ。いつでもちょい悪男から自由になれるように、経済的な自立だけは手放さないこと。あとはお好きなように。自分の本性を欺いて生きるなんて無理な相談です。いい仕事をして、心臓が焦げつくような恋をして、真面目な人生なんて笑い飛ばしてください。
[NIKKEIプラス1 2017年12月2日付]
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