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「解約制限付き信託」登場 親族同意で詐欺を防げ 最低預入額は500万円以上など高め

NIKKEIプラス1

2017/12/7

大手信託銀行が相次ぎ専用商品を出した

 年間1万件を超える「振り込め詐欺」の被害。これを防ぐために、お金を簡単には払い出せない「解約制限付き信託」という新しい金融商品が出てきた。どんな仕組みなのだろうか。

 普通預金の口座にまとまったお金を預けておくと、キャッシュカードで簡単に払い出せて利便性が高い一方、振り込め詐欺の高額被害につながりかねない面がある。日常生活に当面必要のないお金なら、簡単に払い出せないほうが本人も家族も安心できるのではないか。こんな発想で商品開発されたのが大手信託銀行の解約制限付き信託だ。

 最大の特徴はお金をいったん預けると、原則として本人だけでは払い出せないこと。三井住友信託銀行「セキュリティ型信託」は、あらかじめ指定した3親等以内の親族の同意が要る。三菱UFJ信託銀行「みらいのまもり」、みずほ信託銀行「選べる安心信託」も必ず3親等以内の成人の親族か、弁護士、司法書士の同意がなければならない。

 こうした解約制限の機能は、以前は顧客から要望があればオーダーメードで扱っていたが、振り込め詐欺など高齢者がお金をだまし取られる被害が社会問題になる中で、各行が相次いで専用商品を出した経緯がある。

 警察庁によると、16年の振り込め詐欺の被害件数は1万3605件だったが、17年は9月までですでに1万2964件に達している。高齢者の被害が毎日のように報じられ、「高齢の親が振り込め詐欺の被害に遭うのではないかと心配した子どもからの問い合わせが増えてきた」(三井住友信託銀行)という。

 解約制限付き信託は、原則として本人だけで払い出せないのはどの商品も共通だ。ただ、解約制限の厳しさや払い出したお金の使途の制限、預けられる最低金額などにそれぞれ特徴がある。

 セキュリティ型信託は、定期的に一定額を払い出す「定時定額払い」に同意が要らないのが特徴だ。まとまったお金を預けておいて、毎月の生活費だけを払い出すような使い方ができる。具体的には毎月1回か2カ月に1回、本人名義の同行の普通預金口座に1万円以上20万円以下の一定額が入金される。

 選べる安心信託も、解約制限のほかに「ご自分用受取」の機能を選べば定時定額払いができる。このため、海外旅行や医療費などでまとまったお金を払い出したい場合だけ親族が同意すればいい。高齢の親が詐欺や悪質商法に引っかからないよう見守りたい子どものニーズに応えている。

 みらいのまもりは払い出したお金の使途に厳しい制限がある。親族の同意があっても、有料老人ホームの入居一時金か、請求書1件当たり10万円以上の医療費に充てる場合しか払い出しはできない。しかも現金で払い出すことはできず、ホームや病院の口座に直接、振り込まれる。

 預けられる最低金額はセキュリティ型信託が500万円以上、みらいのまもりが1000万円以上なのに対し、選べる安心信託は3000万円以上になっている。これは解約制限のほか、定時定額払い、子どもや孫への暦年贈与といった複数の機能を含む商品全体の金額だからだ。

 選べる安心信託は老人ホームや家事代行の相談に乗ったり、割引料金で利用できる業者を紹介したりする電話相談窓口を設け、高齢者の生活をトータルで支援する。契約時に預け入れ金額の2.16%の信託報酬、その後は月1万800円の管理報酬がかかる。

 解約制限付き信託は預金保険制度によって1000万円までの元本が保護される。ただし、金利に相当する「収益金」は確定利回りではなく、普通預金や定期預金と異なり保護の対象にならない。収益金の目安である「予定配当率」は定期預金とほぼ同水準でお金はほとんど殖えないが、数百万円、数千万円といった詐欺被害を確実に防止したいなら選択肢の一つになりそうだ。

(後藤直久)

[NIKKEIプラス1 2017年12月2日付]

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