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パラアスリート 夢を追う

視力低下もプラスに転化 パラ競泳、全盲クラスで躍進 「違う競技のよう」 富田宇宙さん、新しい泳ぎを模索

2017/12/23 日本経済新聞 夕刊

富田選手はパラ競泳日本選手権の男子100メートルバタフライ「S11」クラスにおいて、大会新記録で2位に入った

2020年東京パラリンピックまで1000日を切った。パラ競泳でメダル候補として台頭してきたのが、視覚障害クラスの富田宇宙(日体大大学院、28)選手だ。障害が悪化し17年7月にクラスが変わってから出場大会で新記録を連発する。「変更は大きなチャンス。(障害が重くなった)状況もプラスに捉え、良い結果を出したい」と意気込む。

11月19日のパラ競泳日本選手権最終日。男子100メートルバタフライで富田選手はリオデジャネイロ・パラリンピック銀メダルの木村敬一選手(東京ガス)を相手にデッドヒートを繰り広げた。50メートル時点ではわずか0秒25差と互角。終盤に突き放され「悔いが残る」とこぼしたが、大会新となる1分03秒56で2位に食い込んだ。

パラ競泳日本選手権男子100メートル自由形で力泳する富田選手

3歳から水泳を始めた。網膜色素変性症により高校生の頃から視力が低下。一時は競技から離れたが、大学卒業後にパラ選手として練習を再開した。15年の日本選手権では同種目などでアジア新を樹立。だが、リオ大会選考会では日本身体障がい者水泳連盟などが定めた派遣標準記録を満たせず、代表入りを逃した。

転機は皮肉にも障害の悪化によるものだった。視力低下に伴い、17年7月の国際大会でこれまでの「S13」から、全盲の選手が競う「S11」に。日本代表の選考基準を突破し、一気にメダル候補にも躍り出た。「日常生活はつらくなったが、選手としてはプラス」。9月のジャパンパラでも400メートル自由形でアジア新で優勝と波に乗る。

新階級では光を遮るブラックゴーグルを装着するため「自分の位置が分からず、違う競技みたい」と富田選手は話す。コースロープを頼りに泳ぐため、腕には無数の擦り傷やあざ。スピードの出しやすいターンの方法も研究中だ。一方で利点もあるという。「以前は少し見えているがゆえに(ロープが近いと)減速していた。今は(接触を気にしないから)速く泳げる」

種目も障害クラスも同じ木村選手の存在も、富田選手にとって刺激になっているようだ。「意見交換をどんどんしたい。切磋琢磨(せっさたくま)して(東京では)一緒にメダルを取りたい」。環境の変化が、富田選手の心をいっそう奮い立たせている。

(堀部遥)

[日本経済新聞夕刊2017年11月30日付を再構成]

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