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トヨタ「ジャパンタクシー」 22年ぶりの専用車は宝

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NIKKEI STYLE

日経トレンディネット

2017年10月半ばに発表され、すでに街中を走っているトヨタの「ジャパンタクシー」。小沢コージ氏が「ニッポンのニッポン人による環境にも人にも優しいニッポン向けタクシー」と呼ぶこのクルマ、国土交通省が推進する「UD(ユニバーサルデザイン)タクシー認定制度」がその開発には大きく関わってきたようだが、はたしてその中身や乗り心地は?

◇  ◇  ◇

単なるキュートタクシーじゃない!

久々に小沢、考えさせられる国産車に出合いました。「東京モーターショー2017」でも話題になった、トヨタ「ジャパンタクシー」です。ちまたじゃ「かわいい」とか「日本の『ロンドンタクシー』だ」といった肯定的な感想から「いまいちカッコよくない」などの声も上がっていますが、キモはやはりタクシー専用車であること。一応個人購入もできますが、車両価格は高め。なにしろ1.5L LPガスエンジン搭載の5人乗りミニバン風ボディーで安くて320万円台。そのぶん耐久性はケタ違いに高いのですが。

というのもこのクルマの主題は豊田章男社長が言うように「街の景観を変える」ことであり「日々の生活を豊かにする」こと。

粥川宏チーフエンジニアいわく「タクシーはドア・トゥ・ドアで使える公共交通機関の『最後の砦』」。健康な人にはピンとこないかもしれませんが、足腰が弱くなってしまった高齢者や、歩行に問題を抱える人にとって、玄関口ギリギリまで迎えに来てもらえて、目的地の入り口近くまで送り届けてくれる唯一の公共交通機関なわけです。電車やバスでは代替できない領域を担当しているのです、タクシーは。

1台で乗用車10台分町を走る

旅行者にとってタクシーはまさに街のシンボル。空港だけでなく駅前、ホテル前でもよく見かけます。

「2人のドライバーが2交代制で1台のタクシーで走るため、営業タクシーの稼働時間は1日平均20時間。それに比べると乗用車は毎日通勤に使う人でもせいぜい往復2時間。タクシーは1台で、乗用車の10台分町を走っていることになります」(粥川エンジニア)

そのうえジャパンタクシー誕生には2012年の新UD(ユニバーサルデザイン)タクシー認定制度が大きく関わっています。例えばタクシーでも増えているトヨタ「プリウス」は決してタクシー向きではありません。人気のハイブリッドカーで燃費は良いのですが、そのぶんリアシートが狭くて乗り降りしにくい。やはり時代に合わせて進化したタクシー専用車があるべきで、ニッポンのニッポン人によるニッポン向けタクシーは、官民ともに待たれていた存在であり、悲願でもあったわけです。

というわけで小沢による勝手なるリアシート試乗とチェックを!

なぜずんぐりむっくりスタイルなのか

まずは不思議なずんぐりむっくりスタイルに興味が湧きます。一見、ミニバン風ですが、古典的なフロントグリルと取って付けたようなリアトランクの張り出しがあり、まさに「ニッポン版ロンドンタクシー」であり、現代によみがえった「江戸時代の籠」!

このスタイルの理由は明白です。ユニバーサルデザインタクシーとは高齢者や子どもでも乗りやすく、クルマいすがそのまま入る、障壁のない使いやすいタクシーのこと。そのためにはミニバンスタイルが最適だったです。具体的にはこのジャパンタクシーはコンパクトミニバンの2代目「シエンタ」をベースに開発しています。

外板、足回りはすべて専用ですが、フロアはシエンタと共通で、LPガスを燃料に使えるハイブリッドシステムのモーターやインバーターなども基本共通。1.5L直列4気筒のLPガスエンジンも、シエンタ用のガソリンエンジンと一部骨格は共通。その理由はシンプルで、タクシー専用車として単独に開発するともうからないからです。

なぜ22年ぶりのタクシー専用車なのか

というのも日本における本格タクシー専用車は1995年に生まれたトヨタ・コンフォート、「クラウンコンフォート」「クラウンセダン」以来22年ぶり。かつてはトヨタと競って出していた日産も「クルー」を出して以降、商用車ベースの「NV200バネットタクシー」しか出していません。なぜかというと、タクシーは根本的に販売台数が少なく、単体では利益が出せないから。

東京だけを見ても法人タクシー約3万台で個人タクシー約2万台の計5万台(2014年)。月販1000台がいいほう。なぜなら1台をトコトン乗りつぶすからです。

「タクシーの走行距離は平均40万~50万km。なかには90万kmという方もいらっしゃるし、私は香港で200万km走っているコンフォートを見ました」(粥川)だそうで、まさに骨までしゃぶられるクルマ。

ぶっちゃけ年間1万台チョイしか売れないモデルを、完全に新規で作れるほど現代の自動車ビジネスは甘くなく、だからシエンタ・ベースなのです。価格も旧型クラウンセダンの場合270万円くらいしたそうですが実は「長期生産で価格が変えられず、赤字はトヨタがかぶっていた」とか。

いわば社会貢献として作られるクルマであり、メーカーが進んで作りたがらない商品。だから22年間も放置されていたのです。

足回りは完全新作、リアサスはリジッド

はたしてジャパンタクシーはどれだけタクシーとしてすごいのか。まずは足回りですがサスペンションは前後ともにスプリング、ダンパーはもちろんアームからベアリングまですべて専用でみんな太くてゴツい。スプリングなんて一般のクルマの倍ぐらいはありそうです。リアサスはいわゆる左右直結のリジッド型式で完全に耐久性優先。

「普通のクルマは乗っても10万kmちょっとでしょう。比べるとタクシーは最低でも50万kmは走りますから性能が全く違います」(粥川)

エンジンもブロックこそ共通ですが、ヘッドは専用でバルブも専用、バルブスプリングも強くして、耐久性を上げただけでなく、汚れを潰せるようにできているとか。それでいてバルブ回りにローラーロッカーを入れて摩擦を減らすなど、効率も上げています。

結果、ハイブリッドとしてのシステム最高出力は100psとガソリン版のシエンタと同じで、モード燃費は19.4km/L。シエンタよりは落ちますが、LPガスの値段はガソリンの約半分なので、「5年で30万km走れば(コンフォート比で)150万円は浮く」とか。それくらい実燃費が良いわけです。

肝心のリアシートの乗り心地ですが、クラウンほどの重厚感はありませんでしたが、シエンタよりしっかり感があって快適。シートは長距離乗ってみないと分からないですがたしかに座り心地はまあまあ。

なにより頭上と足元があり得ないほど広く、手すりも使いやすい位置にあってリアシート専用のエアコンサーキュレーター付き。

ついでにいまどきの先進安全装備、トヨタセーフティセンスCも標準装備しています。

セダン風でないと認知されない!

そのほかタクシーならではというノウハウの投入は数限りなくありました。なぜジャパンタクシーがシエンタと見た目が違うかって、個性化もありますが、なにより「普通のミニバンデザインだとタクシーとして認められない」から。

例えばすでに「アルファード」ベースのミニバンタクシーなどがありますが、あれは客が「タクシーっぽくない」「料金高そう」などと思うらしくあまり人気がありません。「タクシーと言えばセダン」というイメージがユーザーには浸透していて、だからジャパンタクシーはあえてミニバンにセダンディテールを加えたデザインになったのです。

さらに言うとミニバンはベテランのタクシードライバーが運転したがらないとか。「あんなのタクシーじゃない!」と直感的に思うらしく、意外な抵抗勢力があったものです。

もう一つはボディーサイズでジャパンタクシーはロンドンタクシーほど大きくはできません。シエンタより微妙に大きい全長4.4m×全幅1.7m弱×全高1.75mですが、これくらいでないと「京都の小道や鎌倉の山道が走れない」のです。まさにジャパンのタクシーなのです。

ついでに外板は前後バンパー4隅が独立して外せて「傷付いてもそこだけ安く交換が可能」だし、ヘッドライトもユニット全体ではなく、バルブやアウターレンズの単独交換が可能。「骨までしゃぶるクルマ」には持ってこいのきめ細やかな配慮です。

全長4.4mのコンパクトカーとは思えない

内装ですがこれまたノウハウの塊で、リアシートのクッションは分厚く乗り心地優先で、表皮も傷や汚れの付きにくい合成皮革仕様。前列も特別で運転席シートは左後ろを振り向きやすいようにクッションを左側のみ減らしているそうです。

運転席は巨大なハザードスイッチがステアリング内に付いていたり、エアコン操作パネルがステアリングコラムの右サイドに付いているのも印象的。使う頻度が多いのと、エアコンを客に操作させないための工夫です。

加えてメーターは見やすい種類ミニマムのデジタル表示で、センターにはオーディオ、タクシーメーター、無線機、領収書プリンターなどがところ狭しと並びタクシードライバーのタスクの多さを思い出させます。

そのほか助手席前はグローブボックスを排して乗降性と広さに気を使ってるし、なによりリアシートが広く、座面を跳ね上げ、助手席を前に倒すとクルマいすが載せられます。これは本当にすごい。

ついでにリアシートのシートベルトを留めるアンカーが夜目に付きやすいよう光ったり、ラゲッジにはゴルフバッグ4個、もしくは77サイズのトランクを2個も収納可能。

最後に賛否両論ありそうなのが右側のリアドアで、あえてスライドドアではなく、スイングドアにしているのと窓ガラスはなんとハメ殺し。右リアに座っていて、気持ち悪くなっても窓から顔はもちろん手も出せない構造になっていて「吐きたくなったらどうするんだ!」という声が出そう。

でもそれは意識的にした設計でなぜなら「右リアをスライドドアにすると飛び出しやすくて危険だし、子どもがよく窓から手を出すから」。あくまでも安全第一をモットーに作られたのです。

総じてとても全長4.4mのコンパクトカーとは思えないジャパンタクシー。価格は300万円を超えますが、このまま最低限のランニングコストで50万kmは走れることを考えると、かなり魅力的。大きすぎない荷物を運ぶために長距離を走るプロドライバー向けなら、これもアリかもしれません。

ロンドンタクシー的なレトロ風味こそありませんが

たしかに「ロンドンタクシー」的なレトロ風味やサイズの迫力はないものの、今までになかった存在感を放つジャパンタクシー。コンパクトなサイズからは計り知れない内部の広さと使い勝手、ランニングコストのかからないLPガスハイブリッドシステムを考えると実にユニーク。独特のかわいさと使い勝手でこのまま輸出できないか、と考えるほどです。

耐久性には特に気を使い、数年前には売る予定のないタイでテスト走行し、現地でスクープもされましたが、それも「真夏の耐久性、性能を確かめる」ため。ここまで使う人、乗る人のことをとことん考え抜いたクルマもありません。

粥川エンジニアは言います。「トヨタは黎明(れいめい)期からタクシーを作り、その使い勝手、信頼性、耐久性に磨きをかけてきた」と。1台50万kmは乗るタクシーだからこそ鍛えられる技術があるということなのです。たとえあまりビジネスにならなくとも。

最新AI技術も搭載し、ボディーカラーにも配慮!!

それからジャパンタクシーにイメージカラーがあるのを知っていますか? それは濃いブルー、日本独特の「濃藍」です。ロンドンタクシーがブラックキャブ、NYタクシーがイエローキャブといわれるように、ジャパンタクシーも「ブルータクシー」と呼ばれたいのです。もしくは「インディゴタクシー」でしょうか。

香港に行ってあの赤・水色・緑のボディーカラーを覚えている人もいるでしょう。その点日本のタクシー業界はボディーカラーを100種以上も用意した結果、統一感のあるイメージを持たせることに失敗しました。

その反省を受け、ジャパンタクシーを使って「日本のタクシーは藍色!」というイメージを根付かせようとしているのです。ちなみにこの藍は平安時代から受け継がれた高貴な色なんだとか。なかなか目立ちにくい色かもしれませんが。

さらにジャパンタクシーは最新AI技術の投入も考えられていて、渋滞情報の共有をはじめ、車内外のカメラを利用した交通犯罪の防止や発見に役立てようともしているとか。タクシーは、公共交通機関であると同時に街の動くインフラ。使い用はまだまだあるのです。

そうでなくともタクシー専用車を持つ国はほとんどありません。有名どころでは前述イギリスのロンドンタクシーですが、かつてのイエローキャブは普通乗用車のフォード「クラウン・ヴィクトリア」であり、ジャパンタクシーは日本自動車界の技術力であり、深さの証明でもあるのです。

その意味で、独自LPガスハイブリッドシステムを持つ深い藍色のジャパンタクシーは、プリウスや燃料電池車「MIRAI」に続く新たな日本の顔になりうるのかもしれません。はたして本当に日本に根付き、世界に広まるのか。そこに小沢は注目しているのです。

小沢コージ
 自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、『ベストカー』『時計Begin』『MonoMax』『夕刊フジ』『週刊プレイボーイ』、不定期で『carview!』『VividCar』などに寄稿。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)など。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

[日経トレンディネット 2017年11月15日付の記事を再構成]

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