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若手リーダーに贈る教科書

93歳現役コンサルタントに学ぶ 後悔しない生き方 梅島みよ著 「頭がいい人をおやめなさい」

2017/12/2

 国内で1日に刊行される新刊書籍は約300冊にのぼる。書籍の洪水の中で、「読む価値がある本」は何か。書籍づくりの第一線に立つ日本経済新聞出版社の若手編集者が、同世代の20代リーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介するコラム「若手リーダーに贈る教科書」。今回の書籍は「頭がいい人をおやめなさい」。93歳の今も現役でコンサルタントとして活躍する著者が、自由に生き、働くためのコツを伝授する。

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梅島みよ氏

 著者の梅島みよさんは1924年生まれで、44年に津田英学塾(現津田塾大学)を卒業。在日米陸軍人事訓練部コンサルタントなどを経て、66年にマネジメントサービスセンターを設立して社長などを務め、現在は顧問となっています。著書に「日本の課長の能力」(日経プレミアシリーズ)などがあります。

■60年以上「働く」ということ

 厚生労働省によると、2016年の日本人の平均寿命は、女性が87.14歳、男性は80.98歳でした。企業の多くが定年を60歳としていますが、その後も20~30年は生きることになります。平均寿命は、なお延びると予想されており、最近では「人生100年時代」という言葉まで耳にするようになっています。

 著者は太平洋戦争のさなか、19歳のときに海軍技術研究所に勤め、終戦後に結婚します。子育てなどでいっときは仕事を離れたものの、子供が幼稚園、小学校に通うようになった28歳のころに再び、働きたいと思うようになります。それから今日に至るまで働き続けています。まさに「100年人生」の先駆者です。

 「働く母親」は、今では当たり前ですが、当時は近所にも否定的な人が多かったそうです。そんな口うるさい人たちを、著者の母親は「近所姑(しゅうと)」と呼び、著者をこう励ましました。

 「自分がやりたいと思い、それがいいことだと思ったら、周りの人がごちゃごちゃ言うことは、気にしなくてもいい。そういう近所姑はどこにでもいる。無責任にいろいろ言うが、『おっしゃる通りにして勤めるのをやめました』と相手の言うことを聞いても、誰も褒めてくれるわけじゃない。自分のやりたいことは、他人がとやかく言っても、間違ったことでなければやりなさい」
(第一章 頭だけいい人より、勘のいい人 42ページ)

 著者は、この言葉を受けて「周囲から『変人』とあだ名がつけられるようになれば、かえってやりやすい」と考えるようになります。現在、有料老人ホームに暮らしながら、仕事を続ける著者は「体力の衰えを見計らいながらでも、少しはムリをして、やりたいことはやりたい」と述べます。

■「やりたいこと」をやるために

 「やりたいこと」は定年後にと考える人もいるでしょう。ただ、著者は失敗して後悔するよりも、失敗を恐れてやりたいことから目を背けるほうが後悔は強くなると説きます。たとえば、組織の中で「やりたいこと」を実現しやすくするよう著者は20代から40代にかけての過ごし方を提案します。

 二〇代では、好きなように存分に活躍する。三〇代は、大人の分別で隠忍自重する。四〇代以降は、自分に合うキャリアを創る。
(第四章 論争は大いに結構、でも最後は相手の言葉で収めよう 153ページ)

 入社後の若いうちは、エネルギーを充分に活用し、活発に動く人がいいようです。しかし、29歳から30歳を超えると、細かい動きはあえて抑え、困難な状況でも落ち着いて行動する習慣を身につけ、チームを率いる力を身につけていきます。40歳代にもなれば、管理職として会社の行く末や戦略を考えます。会社人生はそろそろ終盤に近づいていきますが、そこから先もまだまだ長い人生が待っているのです。

 各章のサブタイトルに「人を動かす仕事の極意」「組織で生きるということ」などとあることからもわかるように、会社人生に役立つ処方箋も盛りだくさんです。上手なコミュニケーションの方法やリーダーの心構えなど、長いコンサルタントの経験に裏打ちされた方法論も読みどころです。

■仕事も暮らしも楽しむコツ

 著者が「やりたいこと」を軸に人生を考えるようになった背景には、戦後の経験が影響しています。当時の日立製作所で、著者は日本に駐在するエジプト国鉄幹部と仕事をしていました。当時のエジプトは豊かで、幹部たちは午前10時に出勤して、午後2時には宿舎に帰って昼寝していました。夜は夜で、7時ごろから2時間以上かけて夕食をとった後、ベランダで歓談をするのが日課だったそうです。

 著者は、ベランダでの会話によく加わり、コーヒーを飲みながら星を眺めて天文学の話をしたり、占いをしたりするエジプト人たちとの時間を楽しんだそうです。学問だけでなく、遊びの経験も豊富な人たちの間では、世界各地の話題が出て、とても刺激的だったそうです。

 終戦後、日本人は食べていくために必死で働きました。著者は、仕事漬けの自分の毎日と、優雅なエジプト人の日常を比べるにつけ、人生の意味を考えるようになったのです。

 人が生きていくには仕事も大切だが、広い世界で、多くのことを見聞きし、さまざまな経験を積んで人生を豊かに楽しむことが必要だと感じるようになった。
(第五章 人生は長く短い。仕事も暮らしも楽しむ 169ページ)

 その後、日本は先進国になりましたが、「豊かさ」の前提になる国力は時代とともに移り変わります。その中で、どのように自分の人生を設計し、つくっていくかが大切だ、と著者は説きます。人生の大先輩から、「どう生きるか」を教えてもらえる一冊です。

(雨宮百子)

◆編集者からひとこと 野沢靖宏

 この本の編集にあたっては、文字通り長年にわたって蓄積された「梅島語録」から、読者の方々に元気になってもらえる言葉を選ぼうと作業を進めました。本書に収録できなかったお話にも、心に響くメッセージがたくさんありました。

 梅島さんご本人も、とても魅力的で、バイタリティーにあふれる方ですが、それと同じように、この本の言葉にも力があります。

 仕事で、私生活で悩んでいるとき、この本を少しひもとくだけで、「せっかくの人生、やりたいことを、とことんやろう!」と大きなパワーが得られます。本書を読んで、みんなで面白く生きましょう。

「若手リーダーに贈る教科書」は原則隔週土曜日に掲載します。

頭がいい人をおやめなさい

著者 : 梅島 みよ
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,188円 (税込み)

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