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山一破綻から20年 元社員102人の再起と希望の物語 紀伊国屋書店大手町ビル店

2017/12/1

 ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。ナイキ創業者の自伝『SHOE DOG』が、ここでも好調な売れ行きを示している。その一方で、刊行が相次いでいる異次元緩和政策をめぐる本が、どれもよく動いているという。やはり大手町では金融関係の本への注目が高い。そんな中、高い注目を集めていたのは、20年前に自主廃業した山一証券社員のその後をルポした元新聞記者のノンフィクションだった。

■会社消滅、社員たちはどう生きたか?

 その本は清武英利『空あかり 山一證券"しんがり"百人の言葉』(講談社)。著者の清武氏は元読売新聞の記者。それよりも「清武の乱」で読売巨人軍の球団代表兼ゼネラルマネジャーを解任されたことで有名だろう。その後、ノンフィクション作家として活動し、山一の清算業務に当たった人々に焦点を当てた『しんがり 山一證券 最後の12人』で講談社ノンフィクション賞を受賞した。そこでは書き切れなかったことを、もう一度元山一社員やその家族を訪ね歩き、まとめたのがこの本だ。

 著者は山一破綻を「日本の終身雇用と年功序列の時代が終わったことを告げる悲劇」ととらえる。「そこから再出発せざるを得なかった人々のドラマは容易には描ききれない」という。だが、書き漏らしたことを探るべく取材メモを読み返し、改めて面談やメール、電話を重ね、アンケートを送りながら、多くの声を丹念に集めた。その中から102人の声とその後の人生を掲載している。

■「凜とした人生」書き留める

 転職した日本長期信用銀行も破綻し、「不運な人」と言われたり書かれたりした女性元社員が淡々とつづったメールに出てくる「私は幸運です。流浪者でもありません」という言葉。著者はそのメールを原文に沿って構成し、「要介護の母を抱えて働き、乳がんも乗り越えた、凜(りん)とした人生が浮かびあがってくる」と書き留める。

 支店で働いていた人もいれば、役員もいる。「大企業社員という幸運が尽きた後、彼らは何を支えに、その後の人生をどう生きているのか」。人によっては数行のスケッチで、あるときは10ページ近くの長文で、102人の人生が15の章に分けられてつづられていく。昨年来刊行が相次いでいるバブル期の回顧本とはずいぶんと味わいの違う、再起と希望の物語だ。「空あかり」というタイトルには、「人間というものは不条理な世界にあっても、窓の外に明けていく空あかりを頼りに生きていく」という著者の希望がこめられている。

■企業もので一番の売れ行き

 「ユニクロの潜入ルポや東芝問題の本などと並べて陳列しているが、昔の話なのにこの本の動きが一番いい」とビジネス書を担当する西山崇之さんは言う。大企業の揺らぎが目立つ昨今、ひとごとではないと感じる読者が多いようだ。経営問題そのものより会社員としての生き方に光を当てていることも共感が広がる理由だろう。

 それでは先週のベスト5を見ておこう。

(1)中国:市場経済と対外開放曽培炎著(日本経済新聞出版社)
(2)最新 組織改革の基本と実践がよ~くわかる本加藤丈博、荒川和久著(秀和システム)
(3)葛藤するコーポレートガバナンス改革日本総合研究所編著(きんざい)
(4)マネージャーは「人」を管理しないで下さい。田原祐子著(秀和システム)
(5)“お困り借地権"をトラブルゼロで優良資産に変える方法 マーキュリー編著(幻冬舎)

(紀伊国屋書店大手町ビル店、2017年11月20~26日)

 1位の本は日中韓賢人会議の中国側団長を務め、日本と深い関わりを持つ元国務院経済担当副総理の論述集。専門性の高い本だが、経団連からの大量注文でトップになった。2~5位までもまとめ買いによるランクイン。10位まで広げても店頭で動いている本は、2冊しか入っていないという。

(水柿武志)

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