演劇とVRを融合、外国人を忍者の世界へ 都内に劇場ITベンチャーのワン・トゥー・テン、夜遊び消費狙う

人が演じる演劇と仮想現実(VR)を組み合わせたショー事業を、IT(情報技術)ベンチャーのワン・トゥー・テン・ホールディングス(HD、京都市)が始める。訪日外国人を主な対象に、言葉が分からなくても楽しめるセリフのないSF時代劇を企画。観客はゴーグル型端末をつけることで、360度の視界で物語の世界に入り込める。東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年をメドに、東京の沿岸部に専用の劇場を設けることを目指す。

 客は「ヘッドマウントディスプレー」を着けたうえ、ステージで実際に人が動く現代風の時代劇と、VRのエフェクト(映像効果)を組み合わせた仮想的な空間を楽しむことができる。

 ショーはSF風にアレンジした時代劇で、外国人でも分かるようにセリフを使わない。VRを取り入れることで舞台を360度の視界で世界観を表現でき、建物の中でも実際の時代劇の世界に入り込んだような没入感を得られるという。

 忍者や盗賊、侍などの役者の動きに合わせて光や音を出してゲームのような派手なアクションを取り入れる。すでに国内の著名な演出家に協力を依頼しており、今後コンテンツの詳細を詰める。

 ショーは1回2時間程度ですしなどの食事とセットにして3万~4万円程度で提供する。ワン・トゥー・テンHDの沢辺芳明社長は「外国人は夜に遊ぶところがない」と指摘する。訪日外国人や大人の夜の過ごし方の一つとして売り込む。

 まず東京の沿岸部に専用の劇場を設け、事業を始める予定だ。投資額は約20億円で、資金調達には協業スポンサーを募る。その後、京都でも展開し、将来的にはビジネスモデルをパッケージ化してアジアに販売することも視野に入れている。

 政府は20年に訪日外国人を15年比2倍の年間4千万人とする目標を掲げる一方で、消費額の目標は15年の2.3倍の8兆円とハードルが高い。外国人の集客を増やす一方で消費喚起が欠かせない。

 ショーなど夜のレジャー市場は年4千億円に達するとの予測もあり、潜在ニーズは大きい。夜観光は治安悪化や騒音対策などの課題もあるものの、最近では自民党が時間市場創出(ナイトタイムエコノミー)推進議員連盟を発足させるなど、機運が高まっている。

 すでにスタジオアルタが訪日外国人向けの劇場「オルタナティブシアター」を東京・有楽町のマリオン内に開業し、戦国武将が20年にタイムスリップする「ALATA(アラタ)」を上演している。京都でも老舗ディスコの「マハラジャ祇園」が復活したほか、セリフがなくマジックやダンスなどで演じる「ギア―GEAR―」が京都市中京区三条の劇場で活況を呈している。

 ワン・トゥー・テン・ホールディングスは1997年創業のスタートアップ企業。16年9月期の売上高は20億円、営業利益は2億円弱だった。従業員数は約150人。受託開発に加え、新事業の育成で東証マザーズ上場を目指している。

 これまでにソフトバンクグループのペッパーの会話機能の開発、京都水族館で開いたイベントでセンサーを使ったデジタル投影の演出を手掛けたほか、日本IBMのプロモーション用VRゲーム開発や大手自動車会社のドライビング体験コンテンツを受託開発してきた。独自にボッチャなどパラリンピック競技をゲーム感覚で楽しめる装置も開発している。

(渡辺直樹)

[日本経済新聞朝刊2017年11月29日付を再構成]

ワン・トゥー・テン・ホールディングスについて、もっと知りたい方はこちらの記事(「パラスポーツを『ゲーム機』に 障害持つ起業家が開発」)もご覧ください。

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