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医師である二児の母 「介助犬を普及させたい」

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障害ある人の自立と社会参加を助ける「介助犬」の普及に尽くしてきた愛知県の高柳友子さん(51)は、人を診る医師でもあります。2人の姉妹を育て、「身体障害者補助犬法」の成立に奔走しました。医師としての人生と介助犬の活動について紹介します。

娘の朝食は味噌汁とおにぎり、出張は日帰りで

日本介助犬協会(訓練センター・愛知県長久手市、本部・横浜市)専務理事の高柳友子さん(51)は、全国を飛び回っています。

自宅は名古屋市内。朝は6時半に起床、シラスわかめやカツオ昆布などを入れて冷凍しておいたおにぎりと、前夜に作った味噌汁が家族の朝食。温めながら自分の支度を済ませ、次女のお弁当作り。

「お弁当を作るのは、罪滅ぼしで自己満足でもあります。無理しすぎず、冷凍食品も入れますよ。味噌汁には、ありあわせの野菜に豆腐でたんぱく質を加えるのがこだわりです」

次女を車で高校に送る間は、大事な会話の時間です。友子さんが長久手のセンターに出勤したら、お客さん対応や事務作業を。介助犬使用者の相談や寄付のお願いに出向くことも。介助犬の同伴を拒否された病院を訪ねて説明したり、電話でやりとりしたりします。

介助犬とは、手や足に障害のある方の手助けをするために特別な訓練を積んだ犬のことです。例えば、人が落としたものを拾ったり、指示したものを持って来たり、靴や靴下をぬがせたり、ドアの開閉などをしたりします。

介助犬の希望者は全国にいるので、出張も多いです。長女はこのたび、医学部に進んで家を出ましたが、次女のお弁当を作るため日帰りが中心。夏休みはお弁当はないけれど、電車のある時間に帰ります。

水曜日は、横浜市のリハビリテーションセンターに出勤。障害ある人たちの診療に当たっています。午後は、市内にある日本介助犬協会の本部で仕事。土日も、普及イベントや講演が入っています。「長期、家を空けるのは心地よくない。海外出張は年に2回ぐらいで、娘と一緒に行くことも。家族旅行も好きで、沖縄によく行きます」

ふだんの食材は、スーパーでまとめ買い。鶏肉や豚肉は下味を付け、キャベツやピーマンを切ったもの、刻みたけのこなども冷凍・冷蔵しておきます。炒めて味付けすればお弁当にも、夜のおかずにもなります。娘たちも成長し、9月の友子さんの誕生日には、長女が料理を用意し、次女がアイスケーキを買ってくるというサプライズに感激でした。

医師家系に生まれ動物に励まされた幼少期

友子さんは、愛知県で医師の両親の元に生まれました。母の泰世さんは江戸時代から続く医師の家系に生まれ、86歳の今も診療に当たります。友子さんが3歳の時、父の留学で米国へ。母は2年間、専業主婦となり、医師として活躍できないもどかしさを感じたと後に聞かされました。

帰国し、母は眼科を開業。日本語が上手に話せなくなっていた友子さんは保育園を嫌がり、電信柱にしがみついて泣きました。友子さんは小学校も好きになれず、「鍵っ子で暗い性格」だったそうです。

そんな友子さんの心の支えは、飼い犬でした。病気になっても、両親が諦めず助け、家族が交代で世話をしました。そして小学校5~6年生の担任の先生が、引っ込み思案だった性格を変えてくれました。競争心を引き出すのが上手で、乗せられて積極的になりました。その先生に憧れ、小学校の先生になりたいと思いました。

高校生のときに新たな出会いがありました。捨てられていた猫を拾い、獣医を探して受診。昼間は学校に連れていき、用務員や図書館司書が見てくれて、帰りは獣医に寄りました。獣医師は「君のネコになったら、治療費を払えばいい」と言ってくれました。ネコの目が悪かったので母に見せ、飼い主が見つかるまでの約束で世話しました。

家にはすでにペットがいて、もう飼えない。探しても飼い主は見つからず、ネコは成長できず死んでしまいました。「申し訳ない、治してあげられなくて」と言う優しい先生に憧れ、「私も獣医になりたい」と伝えると、「お母さんみたいに人間の医師になって、いろいろ教えてよ」と言われました。

医学部でくじけると母が活、介助犬に出会う

友子さんは、「動物に関わる仕事を」という夢を持ちつつ、愛知医科大へ進学。「迷って、考えて進んだ道なのに学生生活はすごく嫌でした。親に言われて入ったという同級生が多く、当時の私はなんてやる気がないのと思っていました。そういう私の考えは狭かった。今はみんな、いい医師になっている。親の背中を見て、患者さん第一の価値観が身に付いていたんでしょうね」

実家を出て一人暮らしをしていたものの、母の支えがあって乗り切れた医学部の生活。実験で、大好きな動物を解剖しなければなりません。くじけそうになると母に「夢をかなえるのは無理ってことね」「動物を助ける夢があるなら、医師として、他の人がやったことをやったうえでないと意見は聞いてもらえない。学位を取り、研修を全うして、一人前にならないとやりたいことはやれないよ」と活を入れられました。

4年生になり、動物の仕事をしたいという夢が具体的に。米国に短期留学した時、動物を介在して患者の精神的なケアをする療法や、体に障害がある人のサポートをする介助犬を知りました。研究者と出会い、「そんなことで論文が書けるの? 私も絶対にやりたい」と決意。まずはちゃんとした医師になろうと、研修先を探しました。

厳しい現場で修業したくて、全国の病院を見に行きました。その中で、「これを見ておきなさい」と教える空気に満ち、アグレッシブだった沖縄県立中部病院へ。「希望者が多くて5倍の難関。試験はすべて英語でしたが、どうしてもここに来たいと猛勉強しました」

2年間はとてもハードでした。夜勤も多く、平均の睡眠時間は3時間。「思考が止まり、聴診器を当てながら寝てしまった。地元の人は優しく、食事の心配もされました。夢を忘れるんじゃないかと思うぐらい、生きるのと研修するのに必死。十分に話が聞けない、患者さんが亡くなっていくことに無力感を感じました。そういう話をすると母には、『医学部の実験で犠牲になった動物のことは忘れたの?』とまた叱られました」

子育てしながら介助犬の普及活動

年に1回は、2週間の休みを使って、米国の動物介在療法の関連学会に行き、夢へのモチベーションを保っていました。沖縄の次は、地域密着の舞鶴市民病院に勤めました。

「熱が出た患者さんが、飼い犬の世話のためいったん自宅に戻りたいと言って、いいですよと許可したことがありました。院内に、動物との関わりに興味のあるスタッフがいて、動物介在活動の団体を立ち上げました」

博士課程に進むのに研究テーマを探し、「犬は汚いと言われるのはなぜ?」「動物を大事にしながら付き合おう」という観点から、「人畜共通感染症」を専門にすることに。「東京医科歯科大の藤田紘一郎先生と出会い、28歳の時ときに上京しました。夫も東京に職場を見つけ、一緒に移り住みました」

大学院で研究しつつ外来で診察し、介助犬の普及活動を始めます。1997年には米国から、介助犬と暮らすスーザンさんを呼んで講演会を開きました。「自分も介助犬を持ちたい」「トレーナーになりたい」という声が寄せられ、介助犬の情報機関を始めました。

翌年、32歳のときに長女を出産。大学院は育休を取っていたものの、情報機関の事務作業は1人でやっていました。パソコンに向かい、2時間おきに授乳。千葉の病院まで週に1回通い、動物介在療法のボランティアもしていました。

そのころ国会で、介助犬の法制化について質問がありました。高柳さんの活動が新聞で紹介されると、問い合わせがあり、国の科研費を得て介助犬について研究することになりました。「産後、復帰できるの? 医師より子育てのほうが大変」と思っていたものの、死に物狂いで大きなチャンスに取り組みました。5年かけ、各分野の専門家や当事者、介助犬トレーナーらと共に報告をまとめました。

「身体障害者補助犬議連が結成され、元首相の橋本龍太郎さんの後押しもありました。私たちの報告書をもとに、2002年、身体障害者補助犬法ができました」。公共機関や病院などで補助犬(介助犬、盲導犬、聴導犬)の受け入れを拒んではならないとされ、育成者や使用者の義務についても盛り込まれました。

障害者の自立と社会参加を促すもので、障害者の差別を禁止する初めての法律。成立は、画期的なできごとです。2000年には2歳違いで次女を出産。周りの人たちの協力で、博士号も取得し、目まぐるしい日々でした。

なかのかおり
 ジャーナリスト。記者として20年勤めた会社を退職し、フリーランスに。主な取材テーマは、医療・福祉・労働・教育・カルチャーなど。39歳で初産。産前産後の体験記・お出かけ情報についてのコラムや近況は「なかのBlog」で発信

[日経DUAL 2017年10月20日付記事を再構成]

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