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日本に行くなら「吉田さん」 観光案内、台湾で大人気 インバウンド消費はコト+ヒト、だれが紹介したかが重要に

2017/12/5 日経MJ

吉田さんに一目会おうと居酒屋ツアーに参加した台湾や香港の旅行者(東京都内の「鮨だり半」)

 「台湾で最も有名な日本人」と呼ばれる男がいる。台湾向け観光情報サイトのジーリーメディアグループ(東京・渋谷)の吉田皓一社長だ。地元テレビに出演し、フェイスブックのフォロワーは60万人以上に上る。一体、何者? 吉田さんの人気を探るべく、11月下旬に開いた「居酒屋体験ツアー」に記者(23)が同行した。

 会場はJR代々木駅から徒歩1分の「鮨だり半」。吉田さんが東京滞在中は3日に1度は通うという行きつけの店だ。ツアーといっても訪れるのはこの店だけで吉田さんを囲んで歓談する。開始の午後8時少し前に行き話を聞いてみた。

 吉田さんは高校卒業後に防衛大学校に入学。慶応大学に入り直し、卒業後は朝日放送に入社した異色の経歴を持つ。大学在学中、中国語を学び始めたのが最初の接点だった。初めは上海市に興味があり、「台湾は消極的な選択だった」。

 だが起業を模索する中、台湾に特化したメディアを思いついた。親日国だが、当時は日本旅行に特化した情報サイトがなかったという。2013年に日本での遊び方を紹介するウェブサイト「楽吃購(ラーチーゴー)!日本」を立ち上げた。

 台湾出身のライターが日本の地域をすみずみまで取材し、台湾の人の目線で魅力を引き出す。月100万人以上が利用する台湾・香港最大の日本観光情報メディアになるのに、そう時間はかからなかった。

 ほどなくして台湾や香港の旅行者ら8人が来店した。みな吉田さんに会いたくて参加した。「你好! 歓迎!」。吉田さんが台湾なまりの中国語で出迎える。中国語教師の萬錚さん(49)が香港の手土産を差し出す。

 吉田さんは「まずはビールで」と注文しながら日本文化を紹介する。「無理はしないでね」とお酒が苦手な人にも気を配る。「ぶりの刺し身」や「カツオのわら焼き」などオススメの料理を頼んだ。すし屋だが「すしはシメで注文します」と注文の仕方まで紹介する。

 銀行員の郭純安さん(49)と夫の施耀福さん(50)は日本酒をうれしそうに飲む。2人は旅先に酒蔵を選ぶほどの日本酒好き。吉田さんがフェイスブックで発信する日本酒の情報にひかれ、「一緒に飲みたい」と参加した。

 「台湾の人から見てパーフェクトな顔だよね」。どうやら甘いマスクで爽やかな容姿も人気の理由のようだ。日本で働く張琬茹さん(34)は「実際に会ったら写真よりもイケメンだった」と興奮気味に話す。

 ツアーは終了予定時間を過ぎて午後11時まで続いた。最後、吉田さんがネクタイを頭に巻いてモノまねを披露。女性の参加者らは「黙っていれば格好いいのに」と半ばあきれ顔だが、テレビスターでありながら、気取らない親しみやすさで参加者の心をがっちりつかむ。中国語が話せても、とてもまねできない。

 最近は訪日外国人客(インバウンド)消費で「誰が紹介するか」が重要な要素になっている。民泊の仲介大手の米エアビーアンドビーは個人による体験プランの仲介を始めた。体験の中身だけでなく「この人がガイド役なので」という動機で申し込む人が増えている。

 SNS(交流サイト)時代にはあらゆる分野で個人が影響力を持つ。インバウンド消費でも「コト+ヒト」がフォーカスされる段階に入ってきたようだ。

(清水孝輔)

[日経MJ2017年11月29日付]

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