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葬式も墓もコンパクト化 家族葬、都市部で主流に 終活のいま(上)

2017/12/3

「終活」ブームを反映して各地でセミナーが開かれている

 ある夜の筧家のダイニングテーブル。帰宅した良男に満が「はい、これ」とこの日届いた郵便物を手渡しました。喪中はがきで、その年に近親者を亡くした人からの年賀欠礼の挨拶状です。それを眺めて良男は「今年は結構多いな」とつぶやきました。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中) 筧満(かけい・みつる、15) 

筧良男 喪中はがきを見てつくづく感じるのは、亡くなる人の年齢が上がっていることだな。大半が80歳を大きく超え、90代も珍しくなくなった。

筧満 お隣のおばあちゃんも「100歳まで頑張る」って。

良男 最近は長生きして亡くなっても、家族だけで見送るお葬式が多いと聞いたよ。

筧幸子 「家族葬」のことね。周囲に告知する従来型の葬儀を「一般葬」というのに対して、家族など親しい人に限定した葬儀をこう呼ぶの。お通夜と告別式をして火葬するのは一緒よ。違うのは参列者の人数で、家族葬は10~30人程度、一般葬は60~70人が主流のようね。お通夜や告別式をしないで火葬する「直葬」もあり、立ち会う人数はもっと少なくなるわ。

 お葬式のスタイルもいろいろあるんだね。

幸子 葬儀関連のサイトを運営する鎌倉新書の調査では、全体に占める割合は一般葬が53%とまだ半分以上で、家族葬が38%、直葬が5%なの。でも東京など都市部では家族葬が最も多く、全体の5割以上を占めると聞いたことがあるわ。都市部では一般葬よりも家族葬が主流になっているようね。

良男 最近の「終活」ブームで、自分のお葬式やお墓について元気なうちから考える人が増えているらしいね。一般葬や家族葬も亡くなった本人の希望が反映されているのかな?

幸子 もちろん本人の希望もあるでしょう。一方で見逃せないのが死亡年齢の上昇。喪中はがきでも分かるけど、年間の死亡数のうち90歳以上は今や4人に1人よ。女性では4割近くに上るの。年齢が上がれば友人は減るし、いても要介護の場合もあるわ。喪主を務める子もすでにリタイアしてビジネス上の人間関係も薄れていて、一般葬をしても参加者が少ないことが見込まれるから、家族葬や直葬を選ぶケースもあるの。

 ところでお葬式の費用はいくらぐらいかかるの?

良男 祭壇やひつぎといったお葬式自体にかかるお金だけでなく、僧侶に渡すお布施もある。ほかにも飲食の費用もかかる。こうしたお金もお葬式のスタイルで変わるんだろうけど、盛大にやれば数百万円かかるし、安く済ますなら10万円台でできると聞いたことがあるな。

幸子 実際にお葬式をした人に聞いたところ、費用は平均で195万7000円だったという調査があるわ。葬儀業者が対象の調査では、葬儀1件当たりの売上高は約142万円よ。お葬式のコンパクト化を映していずれも一時期より減っているわ。形態別だと一般葬が150万~200万円、家族葬は30万~80万円、直葬は20万~30万円が目安といわれているの。

 お葬式のあとは遺骨をお墓に入れるわけだよね。お墓も変わってきているの?

幸子 そうね。まずお墓を建てる墓地は経営主体別に3つあるの。お寺の敷地内にある「寺院墓地」、自治体が運営する「公営墓地」、そしてもうひとつが「民間霊園」。一般に地方では寺院墓地を選ぶ人が多く、都市部では民間霊園が多いといわれているわ。

良男 霊園に行って気付くのは、横長の墓石やおしゃれなお墓が増えていることだな。

幸子 一般に縦長の墓石を「和型」、横長を「洋型」と呼ぶけど、確かに洋型が増えた気がするわ。それだけじゃなく、お墓の形式も変わっているの。「○○家の墓」と彫られた従来型の一般墓に加え、最近では「永代供養墓」と呼ばれる共同墓や、納骨した場所に墓石代わりに木を植えたり周囲に木や花をたくさん植えたりする「樹木葬」のお墓が増えているわ。遺骨を専用のロッカーなどに安置する「納骨堂」も目立つわね。

 「散骨」というのも聞いたことがあるね。

幸子 多様化の背景には継承問題があるとされるわ。一般墓は家族や親族が代々管理して法要やお彼岸、お盆の供養などをするの。ただ、少子化や核家族化で後を継ぐ子がいない人や、子がいても負担をかけたくないという人が増え、従来とは異なるお墓が増えてきたわ。永代供養墓は使用料を払えばお寺や墓地の管理者が供養してくれるし、樹木葬や納骨堂も供養や管理の手間が少なくて済むの。

 お墓を建てるにはいくらぐらいかかるの?

幸子 場所や大きさによるけど、一般墓は新しく建てると100万~300万円といわれるわ。鎌倉新書の調査では平均で181.5万円よ。

良男 すると、普通のお葬式をして新しくお墓をつくるとそれぞれ200万円近く、計400万円ぐらいは必要ということか。結構かかるもんだな。

幸子 永代供養墓や樹木葬は、石や工事が少ないのでその分安くなるの。納骨堂は100万円未満が多いけど、骨つぼが自動搬送で出てくるハイテク型だと一般墓並みの金額がかかることがあると聞くわ。こうしたお墓は遺骨の納め方も様々。最初から他人と混ざるものもあれば一定期間個別安置した後で合葬するものもあるの。本人の希望もあるけど、条件を確認し、現地見学して選ぶのが重要ね。

■費用、基本は本人が用意
終活カウンセラー協会代表理事 武藤頼胡さん
 お葬式に関する問い合わせで多いのは「いくらかかるか」。内容を決めずに費用だけを聞くのに違和感を覚えます。例えば旅行なら、どこに行きたいか、どんなプランがあって何が含まれるか見比べて検討するはずです。まとまった金額がかかるのはお葬式も一緒で、事前に考えておくのが望ましいでしょう。一方のお墓は「どう守っていくか」。新しくつくるにしても既存のお墓を利用するにしても、継承に悩む人が多いことの表れです。
 家族に迷惑をかけたくないという人が多いですが、どうしたいか後を託す人に伝えることが重要です。費用に関しては亡くなる本人が用意しておくのが望ましいです。家族だと負担割合でもめることがあります。家族が集まる年末年始は終活について話すよい機会。子から親に聞くのもよいでしょう。
(聞き手は土井誠司)

[日本経済新聞夕刊2017年11月29日付]

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