「大事なのは、いろいろな企業の力をお借りしながら、タニタの考え方を広く知ってもらうことです。私たちのミッションは「『はかる』を通して、世界の人々の健康づくりに貢献する」こと。一つの大きな目標として『日本の医療費の適正化』を掲げています。そのために、いまタニタの中核サービスとして提供しているのが、企業や自治体向けの健康プログラムです」

赤字解消しようとしたら、新ビジネスに

――健康経営がいまブームになっていますが、もともとその健康プログラムはタニタの社員向けに作ったものなのですか。

谷田氏は、健康プログラムのヒットについて「赤字部門をどうしようかと考えた」結果と明かす

「そう思うでしょ? でも違うんです。もともとは父が社長だった時代に開発した大赤字の商品と子会社があって、それをなんとかせねばという切羽詰まった理由で始まりました。歩数計や血圧計、体組成計などで取ったデータをUSBを介して専用サイトに転送し、パソコンやケータイで健康管理をしましょうという、いまの(あらゆるものがネットにつながる)IoTやビッグデータ時代の先駆けのようなものだったんですが、03~04年当時まったく売れませんでした」

「私が社長になって、この赤字部門をどうしようかと考えたときに、製品のコンセプトや事業の方向性自体は時代にきっと受け入れられるだろうと。そこで使い勝手を改善しようと思い、全社員に『業務命令だ』と言って無理やり使わせたんです。文句があるなら、全部それを担当者に意見してやれと。さすがに業務命令ですからみな頑張ってやりますよね。すると以前より歩くようになり、平均体重が3.6キログラム減って、体脂肪率も1.6%下がったというのがデータとして出てきました」

「そこでピンときたんです。もしかして医療費が下がるんじゃないかと。実際にタニタが所属する健康保険組合に頼み込んでデータを出してもらったら、プログラム導入前の08年度に比べて導入後の10年度は約9%医療費が下がっていました。そこでビジネスモデルも転換して、はかる→わかる→気づく→変わるという(計画・実行・評価・改善の)PDCAサイクルをパッケージ化し、B to CではなくB to Bで販売することにしたんです。13年には厚生労働省の『健康寿命をのばそう!アワード』で最優秀賞を受賞し、現在までに全国で延べ100を超えるプログラムが稼働しています」

――赤字部門の解消のつもりが、新たなビジネスチャンスにつながったのですね。

「これも、一粒で2度、3度美味しい実例です。社員が健康になり、新たなビジネスが生まれた。さらに、最初はあまり意見を言わなかった社員たちが積極的に意見を言うようになり、社内の雰囲気も変わりました」

谷田千里
1972年大阪府生まれ。調理師専門学校卒業後、佐賀大学理工学部に進学。船井総合研究所を経て、2001年タニタ入社。05年タニタアメリカ取締役、08年より社長

(石臥薫子)

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