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カリスマの直言

バブルは姿を変える 「今回は違う」のワナ(藤田勉) 一橋大学大学院特任教授

2017/12/4

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「世界のバブルの歴史は長い。幾多のバブルを経て、足元でもバブルの懸念が生じつつある」

 世界経済におけるバブルの歴史は長い。古くは17世紀のオランダのチューリップバブル、その後も幾多のバブルを経て、足元でもバブルの懸念が生じつつある。

 例えば、米国株(S&P500種)は2009年の安値を底に8年8カ月の上昇局面にあり、上昇率は3.8倍に達する(17年11月24日時点)。日本株(日経平均株価)の上昇も8年7カ月に及び、上昇率は3.2倍となっている。

 前回のコラム「バブルは10年に1度 歴史が語る崩壊の予兆」では歴史の教訓から、2020年前後にバブルのピークがくるとの予想を示したが、コラムを読んだ方から筆者に質問があった。

■バブルは崩壊して初めて分かる

 「バブルになるとわかっているのであれば、事前に対策を打って、バブルを起こさないようにすればいいのではないか」という趣旨だ。筆者も全く同感である。

 しかし、前回も述べたように、バブルの最中にそれを認識するのはほぼ不可能に近い。18年以上も米連邦準備理事会(FRB)議長の座にあったアラン・グリーンスパン氏は金融政策の運営について「マエストロ(巨匠)」と称され、卓越した手腕が高く評価された。

 IT(情報技術)バブル崩壊後の02年に同氏は「バブルは崩壊して、初めてバブルと分かる」という言葉を残した。そして、08年のリーマン・ショック後の議会証言で「これほどまでの大きな危機になるとはとても想像できなかった」と述べた。

 米経済学者のカーメン・ラインハート氏とケネス・ロゴフ氏の世界的なベストセラー『国家は破綻する―金融危機の800年』は、過去8世紀の歴史を振り返ると、リーマン・ショックは決して特別なものではないと指摘している。

 この本は、日本では「国家は破綻する」という題だが、原書は「今回は違う」(This Time is Different)である。その意味は以下の通りだ。

 危機後、人々は過去の失敗に学んだ。しかも、現在は金融システムが整備されている。だから、今回は違う(金融危機は起きない)――。

 しかし、現実には世界は大型の金融危機を繰り返している。この法則は21世紀の今も生きており、我々は00年にITバブル崩壊、08年にリーマン・ショックを経験した。

■変わるバブルの主役たち

 バブルを認識できない理由は数多いが、最大の要因は「バブルが姿を変えてやってくる」からである。歴史的に、一つとして同じパターンのバブルはない。バブルの主役は1980年代は日本の不動産と金融、90年代はIT、2000年代は米国の住宅――と、すべて異なる。

 それらは、その後二度と主役になっていない。いったん、バブルが崩壊するとその傷跡は大きく、容易には復活できない。毎回のパターンが大きく異なるので、バブルの繰り返しに気づきにくいのだ。

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