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失われた「すてき」を求めて 首都圏の歴史建築3選 水津陽子のちょっとディープ旅

2017/11/30

 建築にとりかかった頃は、不景気の影響で各地の材木屋には在庫が充満し、人件費も低迷していました。そのため総工費(60万円)に比べて相当な高品質の材料と優れた職人を調達できたといいます。中でも大工と左官職人の技術は特筆もので、現在でも全国から職人の方々による見学が絶えないそうです。築80年を超えても狂いのない構造、時間の経過につれて変色することを計算に入れた壁、石と見間違うほど滑らかに磨かれた内玄関のたたきなど、現代の職人が「どうやってつくったのか分からない」と首をひねる技が至るところに投入されています。

 遠山邸が完成した翌年には日中戦争が開戦。ほどなく第2次世界大戦と、国全体が戦争に向けて突き進みました。建築にかかわった職人の多くが戦争で命を落としたことによって、いくつもの技術が伝承されないまま途絶えてしまったのです。

中棟の18畳の大広間。ワイン色の壁はガーネットの粉末を混ぜて塗ったもの
(左)中棟大広間の大きなガラスは米国に特注した当時のもの。水平方向に渡した桁の吉野杉の長さにも驚く(右)東棟と中棟をつなぐ渡り廊下は船底天井。建物の様式に合わせて廊下の意匠も細かく変化させている
(左)東棟の内玄関の、亀甲形のたたき。石ではなく左官技術で仕上げる人造石研ぎ出しの妙技(右)洗面所の壁は紅殻を入れて光沢が出るまで磨いた大津壁
洋室ドアの中央の彫刻。後から取り付けたものではなく、大きな一枚板からドアと一体化した装飾として同時に彫り出されたもの

 建物ごとに変化する雰囲気を堪能しつつ、意匠の細部に隠された匠(たくみ)の技や、現在は入手不可能な貴重な素材を探し出してみるのも楽しいでしょう。

 別棟に、遠山元一氏が収集した美術工芸品などのコレクションを収蔵する美術館があります(2018年3月まで改修のため休館中)。

水津陽子
 合同会社フォーティR&C代表。経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究などを行う。

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