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失われた「すてき」を求めて 首都圏の歴史建築3選 水津陽子のちょっとディープ旅

2017/11/30

華やかな明治の記憶をとどめる旧岩崎邸庭園洋館

 年々、時間が過ぎ去るのが早くなる……。年末が見えてくるこの時期になると、ひときわそう感じませんか。心があわただしくなっているなと思ったら、歳月を重ねた建物とアートを訪ねてみては。一歩足を踏み入れると、ゆっくり時間が流れているかのような別空間。もう今はつくられることのない数々のものの中から「すてき!」と直感できる存在を探しに、時をさかのぼる短い旅に出ませんか。首都圏から3カ所をご紹介します。

■華麗な洋館と優美な和館 旧岩崎邸庭園

 東京都台東区池之端、不忍池の近くにある「旧岩崎邸庭園」は1896年(明治29年)、三菱の創始者である岩崎弥太郎の長男、久弥氏が岩崎家の本邸としてつくったものです。戦後はGHQに接収され、返還後は国有財産となり、2001年より都立庭園として一般に公開されています。

 かつては約1万5000坪の敷地に20もの建物がありましたが現在では敷地は3分の1ほどになり、現存する建物は3棟のみ。洋館と撞球室(ビリヤード室)は英国生まれの建築家ジョサイア・コンドルの設計。書院造りを基調とする和館を併置する建築は明治時代の富豪の邸宅にみられましたが、現存するものは極めて少数です。

洋館1階、正面玄関を入ったところ
(左)1階ホールから2階へ上がる大階段。列柱の迫力に圧倒される(右)大階段の前には大きな鏡を配した重厚な暖炉

 洋館は、17世紀英国ジャコビアン様式の華麗な装飾があちこちに見られます。一歩足を踏み入れるとまず目を奪われるのが、玄関のステンドグラスや床のタイルの美しさ。その奥に連なるホールなどの建物の壁や天井、柱などには英国ルネサンス様式やイスラム風のモチーフなどが見られます。

 1階のベランダには英国ミントン製のタイル、2階には貴重な金唐革紙の壁紙などぜいたくをきわめた装飾は、外国人や賓客を招いて華やかなパーティーが開かれた岩崎家の迎賓館の姿を残しています。

 洋館1階にある婦人客室の天井は、日本刺しゅうを施したシルクの布張り。明るい陽光が差し込むサンルームの向こうに芝庭が広がる優美な空間です。2階の客室やベランダも、趣が異なる優雅な空間になっています。

(左)1階の婦人客室。天井はシルクの布張り(右)2階の婦人客室。壁や天井のピンクと扉のミントグリーンの対比が美しい

 洋館を巡った後は和館へ。大広間には、橋本雅邦が下絵を描いたと伝えられる障壁画や、現在では入手困難な木材が使われた箇所もあります。和館には休憩所があり、お茶席やお土産ものが用意されています。抹茶やアフォガード、ケーキセットなどでひと休み。

(左)1階「和館」の床の間やふすまには美しい障壁画(右)広間へ向かう畳敷きの入側(いりがわ)。雪見障子から芝庭が見える

 和館から庭園に出ると、庭石やモッコクの大木の先に芝庭が広がり、スイスの山小屋風の撞球室、庭園を眺めてくつろげる椅子やテーブルも置かれています。時には近くの保育園の子どもたちがやってきて遊ぶ姿も見られます。

■アール・デコの粋と現代アート 東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)

 東京都港区白金台に立つ「東京都庭園美術館」は、1933年(昭和8年)に建設されたアール・デコ様式の邸宅「旧朝香宮邸」の魅力を生かし、歴史的建造物と美術作品、庭園が一体となったミュージアムとして1983年に開館しました。

東京都庭園美術館本館(旧朝香宮邸) 南面外観(写真:東京都庭園美術館)

 1947年に皇室を離脱されるまで朝香宮家の住まいだった邸宅は、内装設計にフランス人装飾美術家のアンリ・ラパン、建物のガラスレリーフやシャンデリアのデザインにルネ・ラリックを起用。世界的にも貴重なアール・デコ様式の建築として知られています。

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