「失敗の分だけ成長できる」 野田由美子さん
ヴェオリア・ジャパン社長(折れないキャリア)
金融や行政など幅広い分野でキャリアを積み、10月から水処理世界大手、仏ヴェオリア日本法人のトップに就いた。「グローバルのノウハウを日本の技術や経験と組み合わせ、持続可能なインフラの実現に貢献したい」と抱負を語る。
キャリアの起点は1982年。女性が活躍できる場として、外資系金融を選んだ。にもかかわらず融資担当は男性だけ。さらに重要なポストは本国の米国採用の社員。「同じ立場で働くパスポートを得よう」と28歳で米ハーバード大学に留学。MBAを取得した。
新たな職場に選んだのは長銀。日本の男性社会の中で挑戦してみたかった。本店勤務を経て、ニューヨーク、ロンドンで活躍した。
ロンドン時代、キャリアの中核となる仕事と出合う。プライベート・ファイナンス・イニシアチブ(PFI)。民間のノウハウを活用し、良質な公共サービスを低コストで実現する手法だ。「民間の知恵を生かせば、日本はもっと元気になる」と感じた。
順調にキャリアを積んでいたが、98年に長銀は破綻した。日本が世界の中で存在感を失い、自分の選んだ銀行がなくなる様を見ながら、何をすべきか悩み抜いた。出した結論は「PFI手法を日本に持ち込み、日本再生に貢献する」。PFIで実績のあるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)に転職した。2000年にパートナーに就き、日本法人に移る。PFI普及のため全国を奔走。ゼロからチームをつくり、3年で国の大型PFI事業を受注するまでに育てた。
07年、再び転機が訪れる。有識者委員を務めていた地元・横浜の当時の市長から、副市長就任を頼まれた。「ふるさとに貢献できるなら」と受け、慣れない環境の中で悪戦苦闘しながら、官民連携の強化や都市力向上に力を尽くした。
その後、PwCに戻りアジアのインフラ事業を統括。16年、長年付き合いのあるヴェオリア・ジャパンの前社長から後任を打診される。同社が掲げるビジョンには共感していた。半年考えた末に決意し社員4000人超の大組織を率いる。
「平たんな道と困難な道があれば、難しいほうを選んできた」と振り返る。たくさん失敗もしたが、「苦労や辛い経験こそが、自分を成長させてくれた」。挑戦が人生を開くと信じている。
[日本経済新聞朝刊2017年11月27日付]
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