KANA-BOON 制作過程を見直し、王道ロック追求
2013年にデビューしたロックバンドKANA-BOON。疾走感のあるキャッチーなメロディーを武器に、16年は幕張メッセで観客1万人を超えるライブを開催するなど、若手バンドシーンの先頭を走っている。制作過程を見直したニューアルバムで「王道ロック」を追求する。
9月に発売したニューアルバム「NAMiDA」は転機作となった。それは重厚なラウドサウンドに挑戦した、16年2月発売のアルバム「Origin」のセールスで悔しい思いをしたことがきっかけだ。作詞作曲を手掛けるギター&ボーカルの谷口鮪(まぐろ)は「サウンドと世界観ともにファンとの距離が離れてしまっていたことを痛感した」と振り返る。
16年10月に次のアルバムの方向性を話し合うためにメンバー全員で出かけたキャンプが、バンドの絆を深めることとなった。
ギターの古賀隼斗は、「最終的にはそれぞれの演奏スキルに対する本気のダメ出しが始まっちゃって(笑)。みんなその後は、指摘したからには自分もしっかりしなければと責任感が生まれ、改めて音楽と向き合うようになりました。僕は今、ギターのフレーズを増やすためにジャズの理論を学んでいます。毎月4人で定期的にミーティングをするようにもなりました」とバンドの変化を口にする。
新作はメンバー同士の意見をぶつけた上で、制作過程を大きく見直した。ベースの飯田祐馬は、「これまでは4人全員のセッションを経て曲を完成させることが多かったのですが、最近はみんな自分のパートを主張することばかりを考えていた結果、曲のまとまりがなくなっていた」と語る。
そこで今回は、谷口が責任を持って1人自宅でデモ曲を作り上げるスタイルに変更した。「まずはボーカルが中心になることを意識して、それから曲のパートごとに楽器の主役をハッキリさせました」(谷口)
こうして作られた、すべての過去を肯定する希望の歌「それでも僕らは願っているよ」は、ラストに向けてギター、ベース、ドラムが絶妙な掛け合いを見せていく。ドラムの小泉貴裕は、「歌詞がより効果的に届くようになりました。サビの『明日は笑っていられますように』は、谷口がリスナーだけでなく、きっとメンバーにも向けたもので、今後の僕たちを支えてくれる大切な曲になる」と言う。
またスピード感のあるメロディーに乗せた失恋ソング「涙」はデビュー当時を思わせる1曲。「最近は歌うテーマも人生論など、あえて大きくしていました。でも原点に立ち返り、失恋の痛みだけをつづった歌詞の曲も、リスナーは求めていると思ったんです」(谷口)
今後目指すところは、「王道ロックでバンド界のトップに立つこと」(古賀)と、デビュー時から変わっていない。自分たちを見つめ直したことで、絆もサウンドもより一層深まった彼らは、そのゴールに向け大きな一歩を踏み出した。
(「日経エンタテインメント!」11月号の記事を再構成 文/中桐基善)
[日経MJ2017年11月24日付]
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