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「死海文書」に偽造の疑い? 話題の聖書博物館でも

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ナショナルジオグラフィック日本版

米ワシントンDCの「聖書博物館」の一般公開が2017年11月17日から始まった。5億ドルをかけて建設された、「世界で最も知られている書物」の記念館だ。なかでも聖書の恒久性を物語る特別な遺物が、最古の写本群とされる「死海文書」である。だからこそ、同博物館の創設者はそのうちの13点を収集するために数百万ドルを費やしたと噂されるのだろう。

ところが、調査によると、来館者が目にする断片のいくつかは現代の偽造品かもしれないという。

聖書博物館は非常に注目されている。創設者は手芸用品チェーン店ホビー・ロビーの経営者であるスティーブ・グリーン氏。同氏は、古代の遺物の購入・収集について、世間の厳しい監視の目にさらされてきた。たとえば、米国当局が密輸品だと主張する5500片の古い粘土板。ホビー・ロビー社は7月に司法省と和解し、この粘土板をイラクに返還している。(参考記事:「文化財の不正取引防止へ、米国とエジプトが協定」

学者の中には、同博物館の強引な収集の仕方を冷ややかな目で見る人もいる。しかし、グリーン氏と博物館の職員によると、たしかに収集を始めた初期には十分な助言を得られていなかったが、聖書博物館は学問的にベストなやり方に従っていると強調する。

現在は、著名な聖書学者のデイビッド・トロビッシュ氏が収集ディレクターを務めており、聖書博物館は死海文書研究の支援も行っている。

「巨大な博物館の中に疑わしい物がまったくないだろうと考えるのは、水の中にアメーバがいないと信じるようなものです」と言うのは、米ニューヨーク大学の聖書学者ローレンス・シフマン氏。同氏は、博物館での死海文書の展示について助言を行った。「聖書博物館は、すべきことはすべて行いました」

「2002年以降の断片」はほぼ偽造品?

70年ほど前、ヨルダン西部クムランの洞窟でベドウィンの羊飼いが見つけた死海文書は、数多くのヘブライ語聖書(旧約聖書)の文書の断片から成る。1800年前のものから2000年以上前のものまであり、これまでに発見されたなかで最古の聖書写本も含まれる。

ベドウィンからこの文書の多くを買い取ったのが、地元の商人「カンドー」ことハリル・イスカンダル・シャヒーン。1947年から1953年にかけて、買い集めた死海文書を収集家や学術機関に転売した。しかし、1970年にユネスコの文化財不法輸出入等禁止条約が採択され、不当な発掘や新たに発見された文書の売却は違法となった。

現在、合計で10万片に及ぶ死海文書の多くは、エルサレムにあるイスラエル博物館内の「死海写本館」に収蔵されている。したがって個人市場で売買されているのは、1970年以前に個人コレクションに加わった数多くの「切れ端」たちである。条約発効以前から存在したものについては適用が除外されるためだ。

21世紀に入って、条約が適用されない75の断片(そのほとんどがせいぜい高額硬貨ほどの大きさ)が、売りに出された。その多くはカンドーの親族が売り出したものだったが、そのうち少なくとも13の断片を、2009年から2014年の間にグリーン氏の家族が購入した。これら「2002年以降」の断片の多くは、学問的な発見とはならない。そこに書かれた文言はそれ以前の死海文書からわかっている内容の写しである。にもかかわらず、博物館や個人収集家は、貴重な古文書を物理的に所有できるチャンスに飛びついた。

「りっぱな聖書の博物館であるなら、死海文書はまず所有していなければなりません」と、聖書博物館の収集ディレクターであるトロビッシュ氏はCNNのインタビューに回答している。

聖書学者のシフマン氏によれば、これらを購入した時点では、2002年以降の断片は本物であると広く考えられていた。しかし、この見解は最近になって崩れつつある。2016年初めにベルギー、ルーヴェン大学の研究者エイバート・ティシュラー氏が、ノルウェーの収集家が所有する断片のいくつかに疑義を唱えたのを皮切りに、次々に偽物との疑いを広げていったのだ。

「そのいくつかはおそらく偽物だろうと確信を得られるまでに、長い時間がかかりました」と言うのは、カナダ、トリニティ・ウェスタン大学のキップ・デイビス氏だ。死海文書の専門家で、2002年以降の断片について詳しい研究を行っている。

ただし、本物もあるとの声もある。シフマン氏は、2002年以降の断片の少なくともいくつかは、本物の死海文書とパズルのピースのようにはまるため、本物に間違いないと述べている。死海文書研究の第一人者のひとり、エマニュエル・トーヴ氏は、それらの断片が偽造品だとは思わないと述べている。「聖書博物館に本物でない断片はない、と言っているのではなく、偽物である証拠を見ていないということです」

しかし他の学者らは、偽造については慎重すぎるぐらい慎重になるべきだと考える。「2002年以降の断片の90%以上は、ほぼ確実に現代の偽造品だと思います」と、ノルウェー、アグデル大学の研究者オースタイン・ユスネス氏は言う。同氏が率いる21世紀の偽造写本に関する研究プロジェクト「ライイング・ペン・オブ・スクライブズ(Lying Pen of Scribes)」は、2002年以降の断片を監視している。

インクを鑑定

聖書博物館にある死海文書の断片のいくつかが本当に偽造品だとしたら、どのようにして作られたのだろうか。

たとえば、死海文書の専門家であるデイビス氏は、別のコレクションに含まれる2002年以降に出てきた羊皮紙の断片について、放射性炭素による年代測定を行った。すると、インクが現代になって載せられたものであることを示唆していた(近年、死海文書が見つかった洞窟の1つで、何も書かれていない羊皮紙が考古学者らによって発見されている)。(参考記事:「死海文書「第12の洞窟」を発見、50年ぶり」

ノルウェーの収集家のコレクションの中からデイビス氏が検査したいくつかの断片では、インクが羊皮紙の古びた色味や風合いの上に重なっていたり、ぼろぼろになった部分に載っていたりする。何百年、何千年もたってから書かれたようだ。別の写本では、現代の食卓塩にまみれたものまで見つかっている。どうやら偽造者が、塩気を帯びた本物の死海文書に似せるために使ったと見られる。

今回の聖書博物館に収蔵された断片では、調査が継続中である。専門家がこの作業に手をつけたのは2016年からで、すでにデイビス氏を含む、同博物館の支援を受けた研究者らが、収蔵品のいくつかについて偽造の兆候を特定している。その1つは現在展示されている。

その断片はヨナ書の一節であるが、ヘブライ文字の1字が、羊皮紙が完全だったときにはなかったであろう隅に無理やり押し込むように書かれている。文字列も、断片の破れた端の輪郭に沿っているように見える。「これら(の文字列)は、おそらく本物ではないでしょう」とデイビス氏。「すでに傷んでいたものに文字が書かれた可能性が高いと思われます」

進行中の調査を考慮して、同博物館は現在展示中の各断片の下に次のような注意書きを添えた。

「2002年に、それまで知られていた何十もの死海文書の断片が、古器物商に並び始めた。大学や博物館、個人収集家は、このような『新たな』断片を入手した。学者らがその研究を始めると、不可解な特徴に気づき、偽造品であるとする者も現れた。(聖書博物館は)収集した断片に関する最初の研究結果を2016年に発表したが、それらが本物かどうかについては未だに学者の意見が分かれている。これらの断片のインクおよび筆跡については、科学的分析が続けられている」

この文章を書いたシフマン氏は、博物館としては来館者に対して透明性を確保する任務を果たしたと考えている。後は断片の本当の起源について明らかにするだけだ。

(文 Michael Greshko、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年11月22日付]

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