2017/11/30

マネートレンド

一般に物件所有者の個人の側からサブリース契約を途中で解除するのは難しい。所有者は貸し手にあたり、サブリース会社は借り手。日本の住宅法制は借り手保護の立場で組み立てられている。「賃料減額の要請を受けても途中で解約できず、債務返済が行き詰まる人が増えてきた」(不動産コンサルタントの平野雅之氏)

トラブルの急増を受けて国土交通省は昨秋、サブリース会社に対し、家賃の減額のリスクを十分、物件所有者に説明するように求めた。不動産会社やサブリース会社は「家賃収入が減らない場合の収支計画」として好条件がそろった「ベストシナリオ」を示すケースが多く、「実際の収支悪化に直面してから慌てる個人投資家も多い」(青山財産ネットワークスの高田吉孝執行役員)。バラ色のシナリオをうのみにせず、空室が続いた場合や免責条項、家賃を減額せざるを得ない「ストレスシナリオ」など複数案を検討し、算定根拠の明示も求めることが重要だ。

注意点(3)多額の借り入れ、危険増す

不動産投資に個人を引き込む住宅関連企業や金融機関の誘い文句の一つが「相続時の節税対策になりますよ」というささやきだ。現金で相続するより投資用不動産とした方が、土地や建築物の評価額が下がるという制度の存在が背景にある。

だが、多額の借り入れに頼った不動産投資は危険だ。甘い想定で投資を始め、満足に借り手を見つけられない状態になれば、ローン返済に必要な収入が手当てできず、たちまち資金繰りに窮してしまう。武蔵コーポレーション(さいたま市)の大谷義武社長は「物件価格は全般に上昇から踊り場に入っており、今後は下落傾向が鮮明になる」と指摘する。駅に近い立地と郊外の物件の価格差も開いている。都心から30キロほどの距離にある千葉県柏市では駅周辺の17年の路線価は底堅いのに対し、郊外の団地周辺は下落幅が広がっている。借り手を集められず資金が回らなくなれば、最悪の場合、物件の売却を迫られる可能性がある。

不動産投資、成功の秘訣は 識者に聞く

業者頼みやめ、「経営する」気で
不動産コンサルタント 平野雅之氏

会社員が不動産投資で成功するには(1)いかに競争力ある立地を確保するか(2)どの程度の家賃が得られ、修繕や設備更新などの費用にどのくらい必要なのかを把握し、主体的に計画して実行していく必要がある。

最初が肝心なのはもちろんのこと。投資を始めてからも近隣に競合物件が現れれば、いかにリノベーションなどで魅力を高めて入居者を確保するかといった戦術を練る必要がある。会社の仕事に追われる忙しいサラリーマンでもいったん不動産投資を始めたら「経営する」という覚悟が要る。サブリースや管理会社などに任せきりではいけない。

人口減、需要減の時代を前に、不動産投資は簡単でない。ただし自分で不動産の勉強をして知識を深め、「将来の需要が着実に上がる」という物件を選別して投資できる利点はある。例えば全国の自治体で策定が進む「立地適正化計画」で、住民が市の中心部に集まるなら、郊外よりも中心部にある土地の方が有望だ。町の発展の見通しと入居ニーズを踏まえ、どのような物件で投資収益を上げていくのかを熟慮すべきだ。

売却損に備え、頭金50%以上に
青山財産ネットワークス執行役員 高田吉孝さん

国内の世帯数が減る以上、不動産の需要も先細りになる。アベノミクスが始まってから5年間は株式相場の上昇なども追い風になり、首都圏のタワーマンションへの投資で値上がり益を得る人もいた。ただ向こう5年間は20~49歳の住宅取得層の人口が減り、需要は減少するとみている。物件価格は総じて下がる方向とみていい。「家賃は下がる」という前提で収支計画を立てた方が無難であり、売却時に損失が出るのがむしろ自然と心得ておいてほしい。

金融機関は個人の不動産投資に関連するローンを厳しくしようとしている。低所得者層を中心により多くの頭金を求めるようになっており、融資姿勢は厳しくなっている。頭金の比率が低いまま不動産を購入すると、家賃の減額や売却損が生じたときに、当初計画に比べて収支が大きく下振れする懸念もある。個人は頭金をおおむね50%以上用意して不動産に投資する姿勢が大切だ。借り入れに家計の多くを依存すれば、手元の現預金が減り、資金繰りに窮する事態に陥りかねない。相続税の節税効果どころではなくなるだろう。

(マネー報道部 南毅)

[日経ヴェリタス2017年11月19日付]

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