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住宅ローンの団信保険、上乗せ保障広がる 全疾病型も 住宅ローンの選び方(下)

2017/11/26

 平日の夜遅く。筧家のダイニングテーブルでは満が難しい顔で本を読んでいます。これまで住宅ローンの金利タイプや借り換えについて学んできた満ですが、まだまだ学び足りない様子です。同僚と食事を終えて帰宅した良男がその熱心さに驚き、声をかけました。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中) 筧満(かけい・みつる、15) 

筧良男 満、秋の夜長に読書とは本当に感心だな。今度はいったい何を読んでいるんだ?

筧幸子 満ったら、私の持ってる住宅ローン関連の実用書を読んでいるのよ。

筧満 尊敬する米国の著名投資家は1日に何時間も本や資料を読むんだって。だから見習おうと思って。それにこの前、団体信用生命保険(団信)の費用の話をしてたでしょ。そもそも団信って何か知らなかったから勉強しようと思ったんだ。いざとなったらローンを返さなくてすむなんて便利だよね。

幸子 正確には、加入している保険から残高と同額の保険金が支払われてローンを完済するしくみなの。ローンの契約者が亡くなったり、高度障害を負ったりして収入が途絶えて返済できないと、その家には住み続けられないでしょう? 残された家族が困らないようにするのが団信よ。金融機関にとっても残債が返ってくるからリスクを回避できるわ。ローンを組む際には加入が条件で、保険料は金融機関が負担するのが一般的よ。

良男 あれ? 私がローンを組んだときには病気の保障が付いてなかったかな?

幸子 パパの言うとおり、保障の範囲は広がっているわ。団信に上乗せする形で、様々な病気を保障する商品が増えていて、「疾病保障付き住宅ローン」という名称で知られているの。住宅ローンの獲得競争が厳しくなって金利の引き下げが限界に近づく中、それぞれの金融機関が力を入れている分野よ。

 どんな病気が対象の保障があるの?

幸子 まずはがん団信ね。2001年にカーディフ生命保険が開発したの。がん(上皮内がんなど一部を除く)と医師に診断されると、通常の団信のようにローン残高がゼロになるのが一般的よ。その後は、がんに急性心筋梗塞と脳卒中を加えた3大疾病保障、3大疾病に糖尿病など5つの生活習慣病を対象に加えた8大疾病保障が登場し、インフルエンザやノロウイルスなど8大疾病以外の病気やケガを保障する全疾病保障へと広がっているわ。通常の団信とは異なり、保険料はローン金利に上乗せするほか、毎月の支払いが必要なタイプもあるの。

 ママに借りた本には、病気やケガ以外を保障する商品もあるって書いてあるよ。

幸子 勤務先の倒産などで失業した際に保障する失業保障、入院した場合の入院保障もあるわ。最近は共働きでローンを返す夫婦も増えているので、連帯債務として借りている夫婦のどちらか一方が亡くなったり高度障害を負ったりするとローン残高がゼロになる商品も出てきたの。

良男 ということは、保障が広い方がお得なのかな?

幸子 そうとも限らないわ。同じ金融機関では保障対象が増えるほど、金利の上乗せ幅も大きくなるのが一般的なのよ。ただ金融機関ごとに方針が違うこともあり、保障対象が増えても金利への上乗せがないところもあるし、金融機関で上乗せ幅が異なる例も珍しくないわ。

 難しくなってきたぞ。

幸子 保障のしかたも主に3通りあるの。まず通常の団信やがん団信、3大疾病保障などのようにローン残高がゼロになるタイプ。次に就業不能が一定期間続いたり、ローンの返済日に入院や失業したりしていると毎月のローン返済額を保障してもらえるタイプ。期間は1年など限度があって、就業不能が一定期間を超えると保険金で残高が完済されることが多いわ。3つ目は特定のがんや病気と診断されたり、先進医療を受けたりすると一時金などが受け取れるタイプね。

 じゃあ、保障対象になる病気の範囲と保障のしかたで決めればいいんだね。

幸子 注意したいのは金融機関ごとに保障を受けるための条件が異なることがある点ね。例えば同じ8大疾病保障でも、就業不能状態が何日続けば保障を受けられるかは金融機関によって違うの。3大疾病保障では、急性心筋梗塞か脳卒中の際に入院すれば保障を受けられる金融機関もあれば、後遺症などの所定の状態が一定期間を経過したり手術を受けたりすることが条件のところもあるのよ。

良男 ややこしいなあ。

幸子 さらに、同じ病気でも商品や金融機関によっては保障を受けられる条件が違う場合もあるわ。例えばがん。がん団信や3大疾病保障なら診断を受ければ残高がゼロになったりするけど、8大疾病保障や全疾病保障では就業不能が一定期間続かないと保障が受けられない例があるわ。団信の上乗せ保障を比較するのは難しいのよ。

良男 病気やケガに備えるなら、医療保険やがん保険でいいんじゃないかな。

幸子 ファイナンシャルプランナーの高田晶子さんは「医療保険やがん保険は主に病気やケガの治療費、団信の上乗せ保障は住宅ローンの返済で、保障の目的が違う。どちらか一方に加入すればいいわけではない」と指摘しているわ。もちろん、一時金を支払われるタイプなどで保障が重ならないようにする必要はあるけどね。

■借り換えの場合、継続できず
 ファイナンシャルプランナー 高田晶子さん
 団体信用生命保険の上乗せ保障を利用すると、住宅ローン金利に0.2~0.4%程度を上乗せされるのが一般的です。上乗せ保障を利用するかどうかは、収入に占めるローン返済額の割合や、病気やケガの際に収入だけで対処できるかどうかで判断すべきです。例えば家計の担い手が1人なら、手厚い保障が必要です。返済額の割合が高ければ、万一の際に返済負担に耐えられなくなるリスクも高まるので、上乗せ保障を検討すべきでしょう。
 住宅ローンの金利を比較する際は、利用したい保障の上乗せ金利をあらかじめ考慮することも必要です。保険料を別途支払うタイプを除くと、上乗せ保障は中途解約したり後から追加したりできないからです。なお、他の金融機関に借り換えた場合、上乗せ保障は継続できないので注意が必要です。
(聞き手は藤井良憲)

[日本経済新聞夕刊2017年11月22日付]

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