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「どうなってるの!」 目を疑う、非現実な空間展

2017/11/22

地下深くまで続く「エレベーター」が目の前に突如現れる。迷路のような「試着室」では他者と自分の境界が曖昧になる。その不可思議な世界に思わず「どうなってるの」と驚きの声を連発してしまう。アルゼンチン出身の現代美術家レアンドロ・エルリッヒさんは、作品を通じて鑑賞者が当たり前として持っている現実感覚を揺さぶり、疑問を投げかける。

東京・六本木の森美術館で2018年4月1日まで開催中の「レアンドロ・エルリッヒ展 見ることのリアル」は、約25年のキャリアの中で最大規模となる個展だ。新作や初期作品を含む44点のうち約8割が日本初公開で、創作の全貌に迫る好機となっている。

石造りの壁に人がぶら下がっているように見える「建物」。45度に傾けた巨大な鏡に映り込んだ姿が作品の一部となる=湯沢華織撮影

鏡などの視覚効果を使って、見る人の思い込みを巧みに操るのが真骨頂。常に外に向けて開かれた参加・体験型の作品で、鑑賞者は見るだけにとどまらない。石造りの壁に人がぶら下がっているようにみえる「建物」は、地面に造った実物大の模型を、45度に傾けた巨大な鏡に映り込ませた作品だ。思わず模型の上に寝転んで、現実とは違う鏡の中の自分の姿にカメラを向ける。「作品に参加し楽しんでもらうことを常に考えている」とエルリッヒさん。種も仕掛けも目に見える展示方法で、あっという間に現実世界に引き戻されそうだが、そう簡単にいかないのが不思議だ。頭で分かっていても、一体何が現実なのか区別がつかなくなってしまう。

美術館の中に突如現れた「エレベーター」。扉の窓から中をのぞくと、現実にはあり得ない風景が広がる=湯沢華織撮影

彼を一躍有名にしたのは、金沢21世紀美術館(金沢市)の恒久展示作品「スイミング・プール」だ。下から見上げると水面越しに人の姿が見え、まるでプールの中にいるような感覚になる。美術館のシンボルとして、今も多くの人に愛されている。創作のインスピレーションは身近な日常生活から。「建物も社会も、今ある現実は自分たちが作り出したもの。作品を通じて、当たり前に持つ認識や既成概念によってコントロールされている現実に気づき、再考するきっかけになればいい」と語る。

作品に関わることで生まれる見知らぬ人との自然なコミュニケーション、初めて気づく現実とは別の物語。エルリッヒの世界は体験して初めて楽しめるものばかり。だが、その親しみやすさとは裏腹に、見る人に新たな問題意識を芽生えさせる。「現在も未来も、物事のあり方は常に私たちの想像にかかっている」。これからも常に人々の日常を揺さぶり、「リアルとは何か」を問い続ける。

(映像報道部 湯沢華織)

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