新CPUや狭額縁 冬パソコン、6つの最新トレンド
特集 2017年冬、本当に使えるパソコンの選び方 第1回
大手PCメーカー各社から年末商戦に向けたパソコンの新製品が出そろった。2014年4月のWindows XPのサポート終了から3年半。「そろそろ新しいパソコンが欲しい」と思っている人も多いのではないか。そこで今回から4回に渡り、今、お薦めパソコンを紹介していく。初回はパソコンを買う場合に把握しておきたい、技術面、ソフト面のトレンドを解説する。
据え置き利用のノートPCが大変化
この秋冬は、Windows 10の大型アップデート「Fall Creators Update」がリリースされたり、インテルの新CPU「第8世代コアプロセッサー」が登場したりと、ソフト・ハードともに大きな変化が起きたシーズンだった。各社の新製品にもそれらの要素が盛り込まれている。さらに狭額縁デザイン、生体認証機能、静音化といった新トレンドも目立ってきた。
この秋冬、各社が力を入れているのが、15.6型のディスプレーを搭載し、重さは2.5kg前後の「スタンダードノート」(「A4ノート」とも呼ばれる)。主にオフィスや自宅に据え置きで使うタイプだ。NEC、富士通、東芝、デル、日本HP、VAIO、ファーウェイといったメーカーが販売している。
スタンダードノートは、販売台数は非常に多いが、保守的なデザインや機能のものが多く、新製品が登場してもあまり代わり映えしない状況が続いていた。ところが、冒頭で述べた新トレンドの影響もあり、状況は変わりつつある。
買い替えを検討している場合、こうした新トレンドを盛り込んだ製品を選べば、快適で長く使えるパソコンを手に入れることができる。
最新パソコンで覚えておきたいトレンドは6つある。
▼CPUは第8世代が登場
▼Windows MRを使うなら高性能機を
▼スタンダードノートもSSDに
▼生体認証対応機種が拡大
▼「静音」が静かなブーム
狭額縁でコンパクトなのに大画面
液晶ディスプレー周囲のフレーム部分の幅を狭くすることで、ディスプレーサイズは変えずに一回りコンパクトにしたパソコンが増えた。もともとはデルがモバイルノートで導入したデザインだが、今では各社の15.6型スタンダードノートにも波及している。
メリットは、コンパクトになるので狭い場所に置きやすくなることと、意識を画面に集中しやすくなることだ。このトレンドを取り入れた新モデルにはNEC「LAVIE Note NEXT」シリーズ、富士通「LIFEBOOK AH」シリーズ、デル「XPS」シリーズなどが挙げられる。
CPUは第8世代が登場
現在のパソコンのCPUは、上位機がインテルのCore iシリーズ、低価格機がCeleronやPentiumを搭載している。Core iシリーズは、登場したばかりの第8世代を採用するパソコンが増えてきた。
第8世代Core iシリーズの特徴は、コア数が増えたことだ。ノート向けの低電圧版は従来の2コア・4スレッドから4コア・8スレッドのCPUになった。コアはCPUの演算処理を行う中心部分、スレッドは同時に実行できる命令の数のことで、これらが倍増したことにより第7世代よりも処理性能が向上している。処理性能が単純に2倍になるわけではないが、インテルによるとパソコン全体で最大40%向上しているという。
世代の見分け方は、CPU名についている4桁の番号だ。「Intel Core i7 8700K」や「Core i5-8400」のように8から始まるものが第8世代、7から始まれば第7世代、6から始まれば第6世代となる。Core iの中でもCore i7が上位で、その下にi5、i3と続く。高速なパソコンが欲しいなら、Core i7かi5で、8から始まる番号が付いている第8世代を搭載したパソコンを選ぶのが正解だ。
Windows MRを使うなら高性能機を
Windows 10の大型アップデート「Fall Creators Update」の特徴は、VR・AR機能である「Windows Mixed Reality」(以下Windows MR)に対応したことだ。専用ヘッドセットを使ってゲームや動画などのVRコンテンツが楽しめるようになった。
これからパソコンを購入するなら、Windows MRを使いたいかで購入するパソコンのスペックが決まる。使いたいなら、第7世代Core i5以上など、必要なスペックを満たすパソコンを選ぼう。Windows MRが不要という人でも、デジカメの画像編集や映像編集をする人は、ハイスペックなパソコンを選んだほうがいい。逆に、ネットやオフィスソフトの利用がメインなら、Celeron搭載の低価格モデルでも間に合う。
スタンダードノートもSSDに
パソコンのデータを保存するストレージ機器は、大きくHDDとSSDの2種類に分けられる。HDDは内部で高速回転しているディスクにデータを記録するもので、大容量で安価なのが特徴。最近のノートパソコンには、容量1TB(約1000GB)以上のものが広く搭載されている。ただし衝撃や振動に弱い。
SSDはフラッシュメモリーにデータを記録するものだ。HDDより小型で、データを読み書きするスピードが速く、衝撃や振動に強いのがメリット。ただし価格が高く、128GBや256GBなど容量の小さいものが多い。
SSDはこれまで主にモバイルノートで使われてきたが、これが15.6型のスタンダードノートにも搭載されるようになってきた。HDDとSSDの両方を搭載する製品もある。HDDはデータの保存用に使い、SSDにWindowsをインストールすることで、起動時間の短縮やWindowsのレスポンスの高速化といったメリットがあるからだ。自作パソコンでは以前から行われていた手法だが、これがメーカー製パソコンの世界にも普及してきた。
生体認証対応機種が拡大
Windows 10には「Windows Hello」という生体認証機能がある。指紋センサーを使った指紋認証、カメラを使った顔認証などがあり、Windowsにサインインをするときなどに、パスワードを入力する代わりに使える。生体認証には「パスワード入力の手間がかからない」「本人でないと認証できないので安全性が高い」などのメリットがある。
これまで主にモバイルノートや高級モデルに搭載されていたが、新モデルでは15.6型のスタンダードノートにも広く搭載されるようになってきた。指紋認証機能はスマートフォンで使っていて便利さを実感している人もいるだろう。そうした使い勝手のよさがWindowsパソコンでも一般化してきたわけだ。
「静音」が静かなブーム
テレビで記者会見のときなどに、会場に並ぶ記者たちが一斉にパソコンのキーボードをバタバタと叩きだすのを見たことがある人も多いだろう。あの音はかなり耳ざわりだ。
そうした音の不快感を改善するために、キーボードの打鍵音や、タッチパッドのクリック音を抑えた機種が登場してきた。オフィスでは周囲に気兼ねなく使えるようになるし、自宅なら家族が寝静まった夜間でも使いやすい。図書館のような静かな場所で使うのにも向いている。ちなみに、静音が特徴のマウスは以前から販売されているので、併せて使うと快適性が増す。
モバイルノートは買いやすく
以上、6つのトレンドを紹介した。
ジャンル別にみると、スタンダードノートが新たな展開を見せる一方で、モバイルノートは、春・夏モデルの継続販売や、従来モデルのマイナーチェンジにとどめるメーカーが多く、目立った変化はなかった。
継続販売されているものは価格が落ち着いているので、モバイルノートが欲しい人にとってはむしろ「買いどき」とも言える。処理性能だけでなく、拡張性や、持ち歩いて使いやすいかどうかといった点が選ぶポイントだ。
特集第2回では、各メーカーから意欲的な新機種が登場しているスタンダードノートのお薦め機種を紹介する。
第1回 新CPUや狭額縁 冬パソコン、6つの最新トレンド
第2回 例年にない盛り上がり スタンダードノートお薦め5種
第3回 チェックポイントは6項目 お薦めモバイルノート5選
第4回 快適な操作性 大画面デスクトップ&ゲーミングノート
(IT・家電ライター 湯浅英夫)
[日経トレンディネット 2017年10月30日付の記事を再構成]
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