健康・医療

from 日経Gooday

手足の冷え防ぐ6つのコツ カギ握るは「AVA血管」

日経Gooday

2017/12/1

実験によると、最初は手袋だけしていても手の血流はそれほど変わらないが、マフラーを加えると手のひら側で急激に血流量が増えることが分かった(図4)。

(平田さんの未発表実験データより)

(2)襟元の開口部は閉じる

襟元と下部を開けていると、下から入った空気が上に抜ける「煙突効果」で冷えやすい。下部を閉じていても、上から入って温まった空気がまた抜けてしまい胸や背中などの温度も下がる。そのため、襟元のボタンは閉じる、タートルネックの服を着る、手首や足首も覆って空気の出入り口(開口部)を塞ぐほうが効率的に温まる。Vネックなど開口部が広い衣服の場合はマフラーなど首に巻くものでおしゃれと保温を両立させたい。

(3)広い面積の温度を上げる

前述したように襟元を閉じるなどすれば胸やおなか、背中など広い面積で皮膚の温度が高くなる。「たとえ0.1度でも広い面積で温度が上がれば、脳の体温調節中枢に『もう十分温まった』という情報が伝わり、AVAが開き始める」(平田さん)

(4)手はカイロよりも手袋

手を温める場合は、カイロなどで局所的に温めるよりも手袋で手全体を覆うほうが、全体の表面積の5%に相当するので効果的だ。

(5)手袋・靴下こそ吸湿発熱素材

手のひら、足の裏は不感蒸散(私たちが感じることなく皮膚から蒸散する水分量)が他の皮膚よりずっと多いので、吸湿発熱素材(吸湿量に比例して発熱量が多くなる素材)でできた手袋や靴下がより有効。手袋や靴下だけでなく吸湿発熱素材のシャツも有効だが、暖房のきいた室内などでは人によっては汗をかいてシャツが湿り、その汗が乾いて蒸発するときに体温を奪われて冷え過ぎることがあるので注意が必要だ(詳しくは第2回にお伝えする)。

(6)重ね着をして空気の層をまとう

衣服の保温性は、繊維と繊維の間にどれだけ温まった空気があるかによっても左右される。どんなに薄い繊維でも空気より熱の伝導度は高いため、1枚、2枚と重ね着するほど、間の空気層も厚くなり、より温かい。

(イラスト:平井さくら)

効率的に皮膚温を上げ、皮膚周辺の熱を逃がさないことが冷え対策のポイントだ。自分の体形やライフスタイルではAVAがどのように働くかを意識して、うまく衣服を調節し、この冬の寒さを乗り切ろう。

【冷水浴びをすると冷えに強くなるのは本当だった】

冬場に冷水で洗い物などをしていると、最初は冷たくて痛いと感じるが、そのうちに感じなくなって逆にポカポカしてきた経験はないだろうか。10度以下で痛みを伴うほどの厳しい冷たさになると、凍傷になるのを防ぎつつ、体温も維持するために、AVA血管はあるレベルで開閉をくり返す。これが「寒冷血管拡張反応」だ。

この反応には民族による違いもあり、日常で厳しい寒冷刺激にさらされているイヌイットの人々は反応性が高く、痛いと感じる前にこの反応が起こるという。逆に熱帯育ちで寒さをほとんど体験しない民族は同じ条件でテストしても数十分間ずっと痛いままで、この反応が起こらない。人間の体は環境に適応するのだ。

「子どもの頃から寒冷刺激にさらされている人は、寒さに強くなることも十分に考えられます」(平田さん)

ただし、人によっては寒冷刺激を避けたほうがいい場合もあるので、無理は禁物。「首を温める」「開口部を塞ぐ」といった上に挙げたような方法で寒さを防ごう。
平田耕造さん
神戸女子大学家政学部教授。医学博士。東京学芸大学大学院修了後、金沢大学医学部生理学第一講座助手、講師を経て1989年4月から神戸女子大学家政学部助教授、93年から教授、2013年4月から副学長。専門は環境生理学。気象条件の急変や室温差に対し、衣服はポータブルな快適環境を作るもの。衣服内や皮膚の温湿度・皮膚血流や発汗等を指標として、特に皮膚の動静脈吻合(AVA)血流に注目して研究に取り組む。

(ライター 塚越小枝子)

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