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投資は75歳まで続けよ お勧めはバランス型投信 資産運用の達人に聞く(下)

日経マネー

2017/12/29

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日経マネー

 会社は退職しても資産運用からは引退しないのが重要だ。では、どうやって退職後の資産運用を考えればいいだろうか。日経マネー誌の連載でおなじみ、フィデリティ退職・投信教育研究所所長の野尻哲史さんに、どのように老後資金を作るべきか聞いた。

◇  ◇  ◇

野尻哲史さん フィデリティ退職・投資教育研究所所長。一橋大学商学部卒、2007年から現職。『脱老後難民 「英国流」資産形成アイデアに学ぶ』(日本経済新聞出版社)など著書多数。アンケートから資産運用の傾向を分析するのに定評

──老後資金をどれだけ作ればいいのか、悩む方は多いですね。

 フィデリティ退職・投資教育研究所のアンケートでは、退職金以外に3000万円ぐらいを老後資金として持っている必要があると答える人が一番目立ちました。しかし、これは「自分が用意できる金額」として答えた人が多いように思います。実際は、もっと多くの額が必要でしょう。

 というのも、平均寿命は年々長くなっているためです。退職された方の7割程度が、80代前半までの人生を想定していますが、そこからさらに長生きした時までは考えていない。仮に95歳まで生きる可能性を考えるなら、やはり老後資金は1億円近くは見ておいたほうがいいでしょう。

──老後資金1億円を貯めるのは大変なようにも思えますが。

 公的年金などもあてにできますから、実際に用意すべきなのはその半分ぐらいですね。それでも多額ですから、3つの方法を考える必要があります。

 まず老後の時間を短くする。定年後も少し働くことで実質的な老後を短くするのです。2つ目は退職後の生活費を現役時代に比べて引き下げること。例えば東京から地方の中核都市に引っ越すだけでもかなり生活費は落とせます。

 一番重要なのが、運用で老後に向けた資産を増やすこと。資産運用は老後資金の減少を抑えるのにも重要なことです。

──老後の資産運用をどう考えるべきでしょうか。

 資産運用は3つのステージに分けることができます。具体的に言うと、働きながら老後のための資金を積み立てていく60歳前後までのステージがまずあります。その後に退職後に運用しながら老後資金を取り崩していく60~75歳ぐらいのステージが来て、そして運用を安定的なものに切り替え、資産を使うことに専念するそれ以降のステージに入ります。

 もちろん、資産運用をずっと続けてもいいのですが、判断能力は年とともに衰えます。どこまで投資を続けるかは個人の判断ですが、まずは75歳くらいまでは想定しておきたいところです。

 その際に重要なのは、退職後から75歳までのステージでは「運用しながら資金を取り崩して生活する」ということです。大体年率3%のリターンで、残高の4%を取り崩して生活するイメージですね。

 大事なのは、老後資金を現役時代からさらに増やそうとしないことです。リスクの高い運用をして、その結果資産が大きく減ってしまっては意味がありません。退職後の資産は減るものと考え、運用はその減少ペースを緩やかにするためのものと考えるのが重要です。

──問題は第2のステージで何に投資するかですね。

 価格の変動率(ボラティリティ)が低く、かつ流動性が高い資産に投資するのが理想的です。特に流動性については、残高の一定比率を月々取り崩していかないといけないので重要です。

 現物株への投資は、価格変動の大きさや急落時に換金できないリスクを考えると慎重になった方がいいと考えています。リスクを分散するという観点からすれば、世界の株式と債券、そして日本の株式と債券のそれぞれに投資するバランス型の投資信託を保有するのがいいでしょう。もちろん、運用報酬などのコストが安い投信を選ぶ必要がありますが。投資先は、現役のステージも退職後のステージも大きく替える必要はないと考えています。

注:フィデリティ退職・投資教育研究所、「資産形成世代のお金との向き合い方」2017年版より

 投資信託を勧めるのは、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人向け確定拠出年金)、つみたてNISAといった非課税制度を利用しやすいという側面もあります。非課税制度がなかった昔に比べると、老後資金の運用方法は大きく便利になったといえるでしょう。そもそも非課税分だけ資金が浮くのですから、使わない手はありません。

──運用しながら資産の一定の比率を取り崩すのが重要ですね。

 毎月分配型投信などで一定の金額を引き落とすようにすると、仮に運用成績が悪化した際に必要以上に元本が毀損する危険性があります。この点には注意したいですね。

 退職者の3割が毎月分配型の投資信託に投資していますが、注意してほしいのは分配金の水準が下がりやすいかどうかです。毎月分配型投資信託の分配金は、本来は下がらなければならない局面でも引き下げないために定額になりがちです。そうなると想定以上に元本が毀損します。分配金を出すことや、その水準が問題なのではなく、環境に合わせて変化しないことが問題なのです。

 そこで価格の変動に合わせて引出額を変更する「定率引き出し」という考え方が重要になります。米国にはこうした投信がありますが、日本にはありません。少し計算に面倒なところがありますが、老後資金を確保するには必要なことですので、しっかり計算して引き出すのが望ましいですね。

──どう運用を終えるべきでしょうか。

 運用を終わらせる時期を事前に決めておくことが重要です。第2のステージが終わる一つのメドである、75歳以降も運用できるのならそれに越したことはありませんが、それでも定率での引き出しや運用そのものにもいつかは年齢的な限界が来ます。どこかで投信から現預金など保守的な運用に切り替えて、取り崩すステージに移る必要があります。

 保険を使って高齢者でも安定的に引き出せるような金融商品などもありますが、まだ使いやすいものではありません。自分の判断能力と相談しながら運用の「出口」を見つけるのが大事ですね。

(日経マネー 川路洋助)

[日経マネー2018年1月号の記事を再構成]

日経マネー 2018年2月号

著者 :日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 750円 (税込み)


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