そのメールは必要だろうか

第三に、トップが解像度の高い明確な戦略を作ること。そして、その戦略が社員全員に腹落ちしていること。この2つができれば、調整やコミュニケーションは減り、社員一人ひとりが自分で業務を進められるようになる。

ガートン氏は、「無駄な時間を減らそうと、今ある組織から『引き算』して階層を減らしたり、移したりしても失敗する。組織の設計を1からやり直すしかない」と大なたを振るう覚悟を持て、と促す。

日本企業 大企業病で31%の時間失う

日本企業は特に、「時間」の無駄が諸外国にくらべ高い。ベインとプレジデント社の合同調査によると、日本企業は大企業病による影響で31%の時間が失われている。ベインのパートナー、石川順也氏は、「個人の生産性が低いわけではない。全員のコンセンサスを取ろうとする組織文化が、時間の無駄を生んでいる」と指摘する。

日本企業は大企業病により31%の時間が奪われている(出所:ベイン・アンド・カンパニー)

この「全員一致」が「先送り」や「ものを決めない」につながると、やりとりや調整が増えていく。「日本人の現場社員は真面目で、諸外国に劣るわけではない。問題は組織の運営方法にある」と話す。

ガートン氏は、「ほとんどの上長はヒエラルキー組織に慣れているので、下から情報があがってきて意思決定をする、という形に慣れている。しかし、これからのリーダーは現場のチームが決めたものに任せる権限委譲が必要だ。そこで最も重要なのが、チームへの信頼だ」という。

リーダー自身も、任せることができれば自身の時間を取り戻すことができる。メールの「Cc共有」、「とりあえず」の会議の同席。これらはすべて、リーダーの「不安」が招いた、ヒエラルキー型組織の産物だ。メールを増やしてしまう環境にするのも、マネジメント次第。同じツールを使いながら飛び抜けて悪化している日本の労働環境の背景には、根深い組織文化が横たわっているようだ。

(松本千恵)